その日のうちに談話室は魔法省令は貼られていた。アンブリッジを校長にするという内容だった。ダンブルドアは逃亡し、その時にダンブルドアは闇祓いを二人、高等尋問官、魔法大臣、その補佐官を倒したという話が一夜にして広まった。
「やあ、ノエル」
次の日の朝、マルフォイがノエルに声をかけた。彼とノエルは親同士が友人で幼い頃からよく会っていたのだ。マルフォイの胸の監督生バッチの下には『I』の形をした銀色のバッチがついていた。
「おはよう。ドラコ。あら? そのバッチはどうしたの?」
「これは『尋問官親衛隊』のバッチなんだ。魔法省を支持する学生をアンブリッジ先生が選び任命してくれたんだ。監督生を減点する力もあるんだ」
マルフォイは気取りながら言った。
「それはすごいわね。おめでとう、ドラコ」
「ありがとう。それで、アンブリッジ先生は君も『尋問官親衛隊』に任命したいとお考えなんだ」
「まあ、嬉しいわ。でも、みんなスリザリンじゃないの? 私なんかが入っていいのかしら?」
ノエルが尋ねた。
「君のお父様は魔法省に協力的だ。それに、君もアンブリッジ先生の授業で素晴らしい成績を修めている。アンブリッジ先生はノエルのことを非常に評価しているんだ。寮は関係ないよ」
マルフォイが言った。今日の彼は妙に饒舌だった。
「さあ、アンブリッジ先生の所に行こう。アンブリッジ先生がお待ちだ」
マルフォイは歩き始めたのでノエルは仕方がなくその後を着いていった。ノエルはあまり彼のことが得意ではない。むしろ、少し苦手だ。けれど、父がマルフォイとは仲良くするように、と言うので仕方がなく仲良くしているのだ。ノエルはマルフォイの後を着いて、校長室まで着いた。
「おはよう。ミス・ガーネット」
アンブリッジは甘ったるい少女のような声で言った。
「おはようございます。アンブリッジ先生」
「ミス・ガーネット、お話はミスター・マルフォイから聞いたかしら?」
「えぇ、聞きました」
「なら、あなたを『尋問官親衛隊』に任命しますわ」
アンブリッジはノエルのローブにマルフォイと同じバッチを着けた。
--え! いきなり!? 私、承諾していないんだけどな……
「光栄ですわ。アンブリッジ先生」
「ミスター・マルフォイから聞いていると思いますが、あなたには減点する力が与えられるわ。監督生もね。私のために働いてくださることを望むわ」
アンブリッジはノエルの肩を叩いた。
「さあ、戻ってもいいわよ。ミスター・マルフォイもありがとう」
「失礼します。アンブリッジ先生」
ノエルとマルフォイは校長室から出ていった。
「ねえ、ノエル」
「どうしたの?」
ノエルが聞いた。
「あのさ、うん、君とこうやって二人で話すのって小さい時ぶりだって思って」
「そうね。ホグワーツに来てからは二人でいることなんてなかったもの。……あ、私、行かなきゃ。バイバイ」
ノエルはさっと駆け出していった。
「待って……」
マルフォイの声はノエルには届かなかった。
***
「--バカなばばぁね。権力に取りつかれた……」
「おーや、最後まで言うつもりかい? グレンジャー?」
マルフォイがクラップとゴイルを従えて、話していたハリー、ロン、ハーマイオニー、そして、アーニー・マクミランの前に現れた。
「あれ? マルフォイ、君、機嫌悪い? 女の子にでもフラれたのかい?」
アーニーが言った。
「うるさい! まだ決まっていない! ハッフルパフから十点減点だ」
「監督生同士は減点出来ないのよ。ご存じないのかしら?」
「アーニーの顔を覚えていないんじゃないかい? 記憶力が悪いんだよ。記憶力お化けのノエルが鼻で笑うぜ」
ロンが笑った。
「グリフィンドール、十点減点」
「一体なんなんだよ……。とにかく、僕も監督生だぜ。減点は出来な--。ハーマイオニー? 何を見ているんだい?」
ロンがハーマイオニーに聞いた。ハーマイオニーは寮。点数を記録した砂時計を見ていた。ハリーとロンとアーニーも同じ方を見た。
「さっき見た時よりも減ってないかい?」
ハリーが言った。
「うん。ビリを独走していたハッフルパフも減っている気がするよ。多分、誰も気にしないだろうけどね」
「今朝までグリフィンドールとレイブンクローが接戦だったのよ」
ハーマイオニーが言った。
「やっと気づいたようだね。たしかに監督生同士は減点できない。それに、君たちが監督生という事ぐらい覚えている。でも、『尋問官親衛隊』なら……」
「なんだい? それは?」
ロンが即座に聞いた。
「魔法省を支持する少数の学生グループさ。アンブリッジ先生の選り抜きだよ。そして、僕たちは減点する力を持っているんだ。
--グレンジャー、アンブリッジ先生に対する無礼な態度で五点減点。マクミランは癪に障ることを言ったから五点減点。ウィーズリーもだ。あと、シャツもはみ出しているからもう五点減点だ。ポッターはなんだか気に食わないから五点減点。そうだ、グレンジャーは穢れた血だ。だから、五点減点」
ロンは杖を抜いた。ハーマイオニーはロンから杖を奪い取り、止めた。
「賢明な判断だな。グレンジャー。クラップ、ゴイル、行くぞ」
三人は笑いながら去っていった。
「マルフォイの野郎……。あんなこと言いやがって。次こそとっちめてやる」
ロンが言った。
「別にいいわよ。一年の辛抱よ。そんなことよりもマルフォイの面白い弱みを握った気がするわ」
ハーマイオニーは満足そうな表情で言った。
「それは、なんだい?」
ハリーが聞いた。
「そうね。考えてみるといいわ。アーニーが最初に言ったことに対するマルフォイの返事は『まだ』って言ってたわよね?」
「あいつ、好きな女子がいるんだ!」
アーニーが言った。
「誰なのか分かれば最高なんだけどな」
ロンが言った。
「あら? わからなかったかしら? あなた、ノエルに恋愛小説を借りたほうがいいわよ。--あのね、きっとマルフォイはノエルのことが好きなのよ。お父様同士が親しくて昔から知り合いだって、ノエルが言っていたわ」
「そういえば、ロンがノエルのことを話した途端に減点したっけ。さっき何かあったんじゃないかな?」
ハリーが言った。
「面白いことを聞いたな。相棒」
「ああ、そうだな。マルフォイ坊っちゃんの初恋か。いや、初恋はママかな?」
上から声が聞こえてきた。その声の主はフレッドとジョージだった。二人は階段から降りてきた。
「僕たち、さっきあいつに五十点位減点されたんだ」
ハリーが怒りながら言った。
「僕たちもさっきモンタギューのやつに減点されそうになった」
ジョージが言った。
「『しようとした』?」
ロンが聞いた。
「最後まで言い終わらなかったのさ。俺たちが『姿をくらます飾り棚』に突っ込んでやったんだ」
フレッドが言った。ハーマイオニーはショックを受けた顔をした。
「それ、相当まずいわよ」
「モンタギューが現れるまで大丈夫さ。
--とにかくだ、俺たちは問題に巻き込まれることをもう気にしないのさ」
フレッドが言った。
「確実に問題を引き起こしている方だと思うけどね」
ロンが言った。
「でも、一度も退学になっていないだろ?」
ジョージが言った。
「僕たちは常に本当の大混乱を引き起こす前に踏みとどまったんだ。
だけど、ダンブルドアはもういない」
フレッドが言った。
「ちょっとした大混乱こそ」
ジョージが言った。
「まさに、親愛なる校長にふさわしい」
フレッドが言った。
「君たちは昼食を早めに食べた方がいいぜ。そうすれば疑われずに済むからな」
ジョージが言った。そして、その後にノエルがやって来た。
「あぁ、探したわ。私、よくわからないけれどアンブリッジに『尋問官親衛隊』に選ばれちゃったのよ」
ノエルはポケットからマルフォイが着けていたのと同じバッチを取り出した。
「あんなババアの親衛隊なんて信じられないわ! きっと何かが起こる度に呼び出されるのよ!」
「君は今すぐに仮病を使って医務室に籠るべきだな」
フレッドが言った。
「どうして?」
「あのね、これからフレッドとジョージが騒ぎを起こす予定なのよ。きっと処理に駆り出されるわ」
ハーマイオニーが言った。
「でも、私、仮病なんて出来るかしら……?」
ノエルが言うと二人はお菓子の箱をノエルに渡した。
「真面目な君は知らないだろうけどこれは『ずる休みスナックボックス』だ」
ジョージが言った。
「これを食べるといろいろな症状が--これなら高熱だな--が現れるんだ。まあ、使い方は箱に書いてある」
フレッドが言った。
「ありがとう。でも、もらってもいいのかしら? あなたたちが作ったのでしょう?」
ノエルが聞いた。
「ああ、『尋問官親衛隊』の任命祝いだ」
ジョージが言った。二人は大広間の人混みに消えていった。
「じゃあ、私も医務室に行ってくるわ。二人にもう一回お礼、言っといてもらえるかしら?」
ノエルは医務室に向かっていった
「じゃあ、僕も『変身術』の宿題を終わらせてくるよ」
アーニーは図書館に向かった。すると、アーニーと入れ替わりにフィルチがやって来た。
「ポッター、校長がお呼びだ」
「僕がやったんじゃない」
ロンがハリーの足を蹴っ飛ばした。ハリーは大人しくフィルチの後を着いていった。