「あぁ、私たち、帰ってきたのね」
ノエルは深呼吸をした。
「うん。君がシリウスを救ってくれたんだよね。あのままじゃあシリウスはそのままアーチに突っ込んでいたよ」
「私、やっと役に立てたわ。ところで、あなたとシリウス・ブラックってどういった関係なの? シリウス・ブラックが無実っていったいどういうことなの?」
ノエルが聞いた。
「僕の名付け親なんだ。僕の父さんの親友だったんだ。そして、真犯人はピーター・ペテグリューなんだよ」
ハリーが答えた。
「あの、マーリン勲章を与えられた!? 知らなかったわ……。でも、大丈夫よ。きっとシリウス・ブラックは『真実薬』を飲まされるわ。それで無実が証明されるわ」
ノエルが笑った。すると、火の気のない暖炉にエメラルドの炎があがった。そして、ダンブルドアが暖炉から姿を表した。
「二人とも、よく無事じゃった。他の生徒もいつまでも残るような障害を受けた者は誰もおらん。全員、医務室で眠っておる。じきに目を覚ますじゃろう」
「よかった」
「よかったわ」
二人は同時に安堵の声をあげた。
「ミス・ガーネット。君は寮に戻って休むのじゃ。わしは少し、ハリーに話をしなければならない。もし、体の不調があればすぐに医務室に行くのじゃ」
「わかりました」
ノエルは校長室を出た。そして、寮に戻った。当たり前だがもう、誰もいなかった。そして、ソファに座って自分が埃まみれだということに気づいた。シャワーを浴びるべきだが、体は鉛のように重くて動けなかった。しかし、色々なことが起こりすぎたのか眠ることもできずに日が高く上るまでずっとソファに腰かけたままボーっとしていた。
***
朝食が始まる少し前にルーナが医務室から帰ってきた。もう元気な様子だった。
「ルーナ! 無事なのね。よかったわ!」
ノエルはルーナに抱きついた。
「うん。他のみんなも大丈夫だよ。ロンとハーマイオニーはまだ入院が必要みたいだけど」
ルーナが言った。
「じゃあ、あとでお見舞いに行きましょう。さあ、朝食よ」
ノエルとルーナは大広間に降りていった。その途中でフリットウィック先生がフレッドとジョージの沼を消しているのを見た。そして、一ヶ所だけ残して、ロープで囲んでいた。
「これはとってもよい魔法ですからね」
フリットウィック先生はいつも通りのキーキー声で言った。
「やっぱり出来るじゃないの。ところで、アンブリッジはどうしたのかしら? ハーマイオニーとハリーと一緒にどこかに行ってから見ていないわ」
「アンブリッジはあの時、ケンタウルスに捕まったの。でも、ダンブルドアが連れて帰ってきたよ。今は医務室にいるよ」
ルーナが答えた。
「そう。……ところで、あなたは何を持っているの?」
ノエルはルーナの持つたくさんの紙に目を止めた。
「そろそろ今年度は最後だから、なくしちゃったのを返してもらいたいんだ。だから、掲示板に貼るんだ」
ルーナはノエルに紙を見せた。紙には本や洋服のリストが書いてあった。中にはルーナがお気に入りだと言っていた物まで入っていた。
「毎年、四年間ずっとやっているの?」
「うん。でも最後の日にはちゃんと寮に戻ってくるから」
「寮に戻ってくるって……。と言うことは、犯人はレイブンクローの人じゃないの」
ノエルが言うと、ルーナは肩をすくめた。
「うーん。そうかもね。だから、一応、寮の掲示板にはよく見える場所に貼るようにしてるんだ。どうしたの? ノエル」
ノエルはショックを受けたような表情をしていた。
「私、気づいていなかったわ。自分のことばっかりで、他のことを考えていなかった……。おかしいと思うべきだったわ。一人の人間があんなにたくさんの物をなくすわけがないもの」
「ありがとう。早く朝食に行こう。終わっちゃうから」
ルーナが言った。そして、二人は大広間に入っていった。
***
「ハーマイオニー、ロン、具合はどう? ジニーの踵もネビルの鼻もすっかり治ったのね!」
ノエルが医務室のドアを開けて言った。
「あら、ノエル。来てくれたのね」
ハーマイオニーが『予言者新聞』から顔を出して言った。
「ルーナも一緒なのね? ほら、この記事を見て。『ザ・クィブラー』で載せた記事が載っているわ」
ハーマイオニーがルーナを手招きした。
「しわしわ角スノーカック……? じゃないみたいだね。その記事はパパが売ったんだぁ。だから、そのお金で夏休みはスウェーデンに探検にいくんだ」
ルーナが言った。ハーマイオニーは一瞬微妙な顔をしたが結局、
「素敵ね」
とだけ言った。
「君たちはもう、お昼じゃないかい? 僕たちは夜には合流できると思うから行ってこいよ」
時計を見て、ロンが言った。ハリー、ノエル、ルーナ、ジニー、ネビルは医務室から出ていった。そして、玄関ホールでマルフォイ、クラッブ、ゴイルと鉢合わせた。
「ポッター、お前のせいで父上は……。でも、吸魂鬼はアズカバンを捨てた。父上たちはすぐ出てくるだろう」
マルフォイが言った。
「そうね。でも、ちゃんとここに誰がいるのかを確認してからそういうことを言った方がいいと思うわ」
ノエルがにっこり笑って前に進み出た。
「闇祓いの娘の前で、死喰い人たちの脱獄の話をしてはいけないと思うわ。もう、吸魂鬼がいないなら、闇祓いが捕まえるしかないもの」
「ノエル!」
マルフォイが言った。
「軽々しく名前を呼ばないでちょうだい。マルフォイ。こんな人たちに構っていても無駄。みんな、行きましょう」
マルフォイは声がでない様子だった。
「あぁ、そうだね。脱獄したとしても、少なくとも連中がどんなワルかってことは知れわたった--」
ハリーが言った。マルフォイの手は杖の入っているポケットに飛んだ。しかし、ハリーの方が速く、ハリーはマルフォイに杖を向けていた。
「ポッター!」
玄関ホールに声が響いた。そして、スネイプが現れた。
「何をしているのだ。ポッター?」
「マルフォイにどんな呪いをかけようか考えているところです。先生」
ハリーが答えた。
「グリフィンドール十点減……」
スネイプは壁の砂時計を見て言うのをやめた。
「どうやらグリフィンドールには点が残っていない。それならば、ポッター、やむを得ず……」
「点を増やしましょうか?」
マクゴナガル先生が石段を上ってやって来た。
「マクゴナガル先生。これはこれは、聖マンゴをご退院で」
スネイプが言った。
「ええ。さあ、クラッブ、ゴイル。これを私の部屋まで持って行ってください」
マクゴナガル先生は二人に荷物を押し付けた。
「さて、そうですね。ポッターたちが世間に対し『例のあの人』の復活を警告したことで、それぞれ五十点! いかがですか? スネイプ先生?」
スネイプの返事も待たずにマクゴナガル先生はそれぞれに加点していった。
「それでは、グリフィンドールはポッター、ウィーズリー兄妹、ロングボトム、ミス・グレンジャーに五十点。--それに、レイブンクローはミス・ガーネットとミス・ラブグッドに五十点ですね」
グリフィンドールの全くなかった砂時計の下半分にたくさんのルビーが降り注いだ。レイブンクローにも、グリフィンドール程ではないがサファイアが降った。
「さて、ポッターから十点減点でしたね」
グリフィンドールから少しだけルビーが減った。
「みなさん。今日は素晴らしいお天気なのですから、外に出るべきだと思いますよ」
マクゴナガル先生が言い、去っていった。
***
翌日のホグワーツ特急では、魔法省まで行った七人で同じコンパートメントに座った。途中でチョウ・チャンがマリエッタ・エッジコムと一緒に通りすぎた。マリエッタの顔は良くなってきていた。
「あら? マリエッタ・エッジコムの顔はもう治ってきているのね。あの呪いも治してしまうなんて、さすがマダム・ポンプリーだわ」
ハーマイオニーが言った。
「私が治療薬を作ったのよ。私、二年生の時にニキビがすごくて、自分で治療薬を作ったのだけど、それを少しアレンジして作ってみたのよ。ハンドメイドよ!」
ノエルが言った。
「あなた、それ、売り出すべきだわ」
ハーマイオニーが呟いた。
「で、ハリー。君と彼女はどうなったんだ?」
ロンが聞いた。
「どうもなってないさ」
「私、彼女は今、別の人と付き合っているわ」
ハーマイオニーが遠慮がちに言った。
「そうだったわね。レイブンクローのマイケル・コーナーよ」
ノエルが言った。すると、ロンはジニーを見た。
「あいつ、お前と付き合ってたじゃないか!」
「捨ててやったわ。クィディッチで、グリフィンドールがレイブンクローを破ったのが気にくわなかったらしいのよ」
それを聞くと、ロンは満足げな顔をして、
「捨てて正解だな。次はもっといいのを選べよ」
と言った。
「そうね、ディーン・トーマスなんかどうかしら?」
ジニーが言った。すると、ロンは、
「なんだって!?」
と大声をだし、立ち上がった。
***
キングズ・クロス駅にはたくさんの保護者たちが迎えにやって来ていた。しかし、いつも通りノエルの父と母はいなかった。代わりに兄のルイスが来ていた。
「うわ、なんでよりによってお兄ちゃんだけなのよ……」
ノエルは不満そうに言った。
「いいじゃないの。優秀なお兄さんなんでしょう? それに、とてもハンサムじゃない」
ハーマイオニーはうっとりした顔でルイスを見つめた。
「えー、そりゃ中身も伴っている分、ロックハートよりもよっぽどいいかもしれないけど……」
ロンがつまらなそうに言った。
「いいかもしれないけど、なによ? ロン、あなたには彼の欠点がお見えになるの?」
ハーマイオニーがロンを睨みながら言った。
「いや、別にそういうわけではないけどさ」
「残念ながら、大きな欠点があるわ。パパとママがいないから歯止めが効かないと思うのよ」
ノエルは苦笑いしながら言った。ルイスは周りのお母さんたちや、女子生徒たちから憧れの目で見られていた。しかし、次の瞬間でその目は、憧れの目から不審者を見る目に変わったのだ。特急から金髪を二つに結った女の子--ノエルの妹のシャロンが出てきたらすぐに、シャロンに抱きつき始めたのだ。
「あぁ、シャロン。無事に帰ってきてくれてありがとう。シャロンもノエルも居なくてお兄ちゃんはなんて寂しい思いをしたか。この一年で五キロは痩せたんだよ……」
「あー、なんか、すごいね。君のお兄さん」
ハリーが言った。
「本当よね。黙っていればどこに出しても恥ずかしくない兄なのよねぇ」
「でも、良いと思う。家族って感じがして。僕のところは、ほら。あの人たちだからさ」
ハリーはダーズリー親子の方を見た。
「あら? 私にはもっと素敵なあなたの家族が来ているように見えるけれど?」
ノエルが言った。ハリーはノエルが見ているのと同じ方向を見た。そこには、ムーディにトンクスにルーピン、ウィーズリー夫妻とフレッドとジョージ。そして、シリウスが立っていた。
「パパに、今日の朝のうちに無罪を証明出来るようにお願いしたのよ。彼の担当はパパだから。『聞かなかったらお兄ちゃんとシャロンを引き連れて家出する』って言ってね」
ノエルは微笑みながら言った。
「ノエル。ありがとう。本当に嬉しいよ」
ハリーはノエルの手を握った。
「いろいろ教えてくれたお礼、でいいのかな? あ、お兄ちゃんに見つかったわ。そろそろ行かなきゃ。みんな、良い休暇をね! お手紙送ってね!」
ノエルはハリーと握手をして、みんなに手を振りながら、兄の元へ走っていった。
「お帰り。ノエル。どうして、ここに僕がいるって気づいていたのに来てくれなかったの? 寂しいよ。お兄ちゃんは」
ルイスは若干涙目になっていた。
「あー、ごめんなさいね。今日は、パパもママも来れないのね」
ノエルが言った。
「そうだね。父さんはノエルの脅迫状のおかげで朝から仕事をしているよ。母さんはノエルたちが暴れまわってくれたおかげで後片付けに追われている」
「あー、それはごめんなさいね。とりあえず、帰りましょう。お腹が空いたわ。シャロンは何食べたい?」
ノエルがシャロンに尋ねた。
「イタリア料理がいい! ピザとかスパゲッティー!」
シャロンが元気に言った。
「いいかもね。ホグワーツはイギリス料理しか出ないもの。私もそろそろイギリス料理じゃないものを食べたいわ」
「そうかー。じゃあ、マグルの五つ星レストランにしよっか。お兄ちゃんの奢りだ!」
三人は仲良く九と四分の三番線から出ていった。
『不死鳥の騎士団』は終了です。たくさんの方に読んでいただき、とても嬉しかったです。もちろん、ここで終わりません! 次回からは『謎のプリンス』です。ぜひ、読んでください!