ハリー・ポッターと鷲寮の少女   作:有栖川八重

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半純血のプリンス

 次の日は食事のあとに、時間割を確認する作業があった。ノエルは全ての授業の継続が許されたため、『変身術』をとるかは悩んだが、結局『呪文学』、『闇の魔術に対する防衛術』、『変身術』、『薬草学』、『数占い』、『古代ルーン文字』、『魔法薬学』をとることにした。一時間目の『古代ルーン文字』でハーマイオニーと会ったときに、全教科、同じだとわかった。

 

***

「「何よ! この量は!」」

 

 ノエルとハーマイオニーの声が教室中に響いた。宿題の量に関しては文句を言わず完璧に成し遂げてきた二人が騒ぐほど、大量の宿題だ。他の生徒は、もう言葉も出ない様子だった。

 

「次の時間はスネイプだわ。もっと宿題を出すに違いないわ」

 

 ハーマイオニーは嫌そうに言った。

 

***

 午後の授業は『魔法薬学』で、継続した生徒はノエルを含む十三人しかいなかった。教室には三つのテーブルが用意してあり、一つのテーブルに椅子が四脚か五脚置いてあったので、ノエル、ハリー、ロン、ハーマイオニー、アーニーの五人で席につくことになった。一番近くにある大鍋からは甘いベリーの臭いや、ハーブの匂いを思い起こさせた。

 

「二人は教科書をまだ持っていないね。届くまではこれを使いなさい。材料は貯蔵庫の物を使うといい」

 

 スラグホーンはハリーとロンに古い教科書を渡した。

 

「さーてと、今日は面白い魔法薬をいくつか煎じておいた。これが何かわかる者はおるかね?」

 

 スラグホーンはスリザリン生が座っているテーブルに一番近い大鍋を指差した。ノエルとハーマイオニーの手が同時にあがった。スラグホーンはハーマイオニーをさした。

 

「『真実薬』です。無味無臭で飲んだものに無理やり真実を話させるものです」

 

 ハーマイオニーが答えた。

 

「大変よろしい!」

 

 スラグホーンは嬉しそうに言った。

 

「さて、これはかなりよく知られている。誰か--」

 

 手をあげたのはまた、ノエルとハーマイオニーだった。次は、ノエルがさされた。

 

「『ポリジュース薬』です。変身したい人物の一部を入れると変色します。そして、飲んでから一時間、その人物と全く同じ外見になります。魔法省が注意を喚起するパンフレットを出していましたよね」

 

 ノエルが答えた。

 

「よろしい。次はこっちだが……」

 

 また、ノエルとハーマイオニーが手をあげた。さされたのはハーマイオニーだった。

 

「『魅惑万能薬』です。世界一強力な愛の妙薬です。何に惹かれるかによって、一人ひとり違った匂いがします。私は刈ったばかりの芝生や新しい羊皮紙やr……」

 

 ハーマイオニーは頬を染めた。

 

「最後は何よ……」

 

 ノエルは小声で呟いた。

 

「君のお名前を聞いてもいいかね?」

 

 スラグホーンが尋ねた。

 

「ハーマイオニー・グレンジャーです」

 

「グレンジャー? ヘクター・ダグワース・グレンジャーと関係はあるかね?」

 

「いいえ。私はマグル生まれですから」

 

 ハーマイオニーが答えた。すると、スラグホーンはにっこり笑ってハーマイオニーを見た。

 

「そうか。私の昔のお気に入りの一人にもマグル生まれだったが優秀な魔女がいた! 『魔法薬学』の天才だった。

 さあ、最後だ。そうだね。ミス・ガーネット。ご存じかな?」

 

 最後に、小さな黒い鍋をさしてスラグホーンは言った。

 

「はい。フェリックス・フェリシス--幸運の液体ですね。人を幸運をもたらすものです」

 

 ノエルが答えた。

 

「そうだ! 素晴らしい。レイブンクロー、グリフィンドールにニ十点をあげよう。

 これは、調合が恐ろしく面倒で間違えるとさんざんな目にあう。

 そして、これを今日の授業で一番上手に煎じた者に与えよう。--もちろん、これは競技や試験、選挙には禁止されている」

 

 全員が興味深そうに鍋を見つめた。

 

「『上級魔法薬』の十ページを開き、『生ける屍の水薬』に取り組んでいただこう。さあ、始め!」

 

 それぞれが『上級魔法薬』をめくって、取り組み始めた。

 

(『生ける屍の水薬』! 大丈夫。ちゃんと作り方は知っているわ)

 

 ノエルは落ち着いて取り組み始めた。

 

***

 教科書通りの淡いピンクになっているのはノエルとハリーだけだった。ハーマイオニーに薬はまだ紫色だった。

 

「ちょっと、ハリー! 何をしているの? 教科書には時計と半時計回りって書いてあるわ! ノエルも言ってあげて……ってあなたまで何をやっているの!?」

 

 ハーマイオニーが言った。

 

「確かに教科書にはそう書いてあるけど、違う本では七回撹拌するごとに一度時計回りを加えるって書いてあったし、前の学期でやった薬で似たような過程の薬は教科書にそう書いてあるのよ。

 みんなが同じ薬を作ってもつまらないじゃない」

 

 ノエルは楽しそうに言った。

 

「でも、ハリーみたいに綺麗な淡いピンクにはならないわ……。どうしてかしら?」

 

「『催眠豆』を小刀の平らな面で砕いたんだ。汁がたくさん出てきた」

 

 それを聞いたハーマイオニーが眉をつり上げた。

 

「その手があったのね。確かに、汁が少なすぎると思って豆をもう一つ増やそうか悩んだのよ」

 

 ノエルが納得した表情で言った。そんな話をしている向かい側でロンは鍋に悪態をついていた。ロンの薬は液状の甘草飴のようだった。

 

「さあ、時間終了。やめ!」

 

 スラグホーンはそう言って、ゆっくりとテーブルを回っていった。

 

「ミス・グレンジャーにミス・ガーネット。非常に良い出来だ。ミス・グレンジャーのはもう少し淡い色になるといいだろうね。しかし、初めてにしては上出来だ」

 

 ノエルとハーマイオニーの鍋を見てスラグホーンは満足げに頷いた。そして、最後にハリーのを見たとたん、信じられないという喜びの表情がスラグホーンの顔にうかんだ。

 

「素晴らしい! 何て素晴らしいんだ。君はリリーの才能を受け継いでいる! さあ、これが約束のフェリックス・フェリシスだ。上手に使いなさい」

 

 スラグホーンはハリーに金色の液体が入った小さな瓶をハリーに手渡した。ハーマイオニーは残念そうな顔をしていた。

 

***

「おめでとう。ハリー! あんなのが思い浮かぶなんて流石だわ」

 

 授業後、ノエルはハリーに言った。

 

「正確にはあなたの成果だとは言えないけれどね」

 

 ハーマイオニーは固い表情で言った。

 

「教科書と違う方法でやったことを怒っているの?」

 

 ノエルが聞いた。

 

「いいえ。ハリーの教科書を少し覗かせてもらったのだけど、そこに書き込みがあって、ハリーはそれにしたがってやっているように見えたわ」

 

 ハーマイオニーが答えた。

 

「じゃあ、僕がその教科書を使っていたかもしれないのになぁ。僕の教科書にはゲロしてあった」

 

 ロンが残念そうに言った。

 

「ちょっと待ってちょうだい」

 

 後ろから声がした。振り返るとジニーがいた。

 

「聞き間違えじゃないでしょうね? 誰かが書き込んだ本の命令に従っているなんて」

 

「でも、違うんだ。危険なものじゃない」

 

 ハリーは安心させるように言った。

 

「ジニーの言う通りだわ。おかしなところがないか調べる必要があると思うわ。『スペシアリス・レベリオ!』」

 

 ハーマイオニーか教科書の表紙をコツコツ叩きながら唱えた。しかし、何も起こる様子はなかった。

 

「ほら、何もないだろう?」

 

 ハリーはハーマイオニーから教科書をひったくった。その拍子に教科書は落ちてしまった。

 

「あー、落ちちゃったわ」

 

 ノエルはしゃがんで教科書を拾った。

 

「『半純血のプリンス蔵書』? 自分のことをプリンスって言うなんて、なかなか自信があったのねえ」

 

 ノエルは笑いながらハリーに教科書を渡した。

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