ハリー・ポッターと鷲寮の少女   作:有栖川八重

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スラグホーンの記憶

 ある日、ノエルは偶然ハリーと廊下で出会った。どうやら考え事をしているようだった。

 

「ハリー。荷物が落ちているわ。考え事でもしているの?」

 

 ノエルが尋ねた。

 

「あぁ、うん。ほら、スラグホーンに聞きたいこと……あ!」

 

 ハリーが突然声をあげた。

 

「そうだ! あの時君が言っていたようにフェリックス・フェリシスを使えばいいんだ!」

 

「悩み事は解決したのかしら?」

 

「あぁ、今日の夕方に試してみるよ」

 

 ハリーは颯爽と廊下を歩いていった。

 

***

「それじゃあ、あなたはこれを使うのね?」

 

 談話室の外でハーマイオニーが言った。

 

「うん。十二時間分もいらないから一口だけ飲むよ。いくよ」

 

 ハリーは慎重に飲んだ。

 

「よし、最高の気分だ。これからハグリッドの所に行こうかな」

 

 ハリーはニッコリ笑っていった。

 

「え、違うわ。あなたはスラグホーンの所に行くのよ」

 

「どうしたんだい? 確かに最近はあまりハグリッドの所に言っていないけど……」

 

 二人は唖然として言った。

 

「いや、ハグリッドの所に行くべきなんだ。行ってくるよ」

 

 ハリーは寮から出ていった。

 

***

「やあ、ハグリッド。なにをしているの?」

 

 ハリーがハグリッドに聞いた。

 

「おお、ハリー。アラゴグの看病をしとるんだ。もう歳で弱っちまって、全く良くならねえんだ。薬に詳しい誰かに一度見てもらいてぇな」

 

 ハグリッドは少し落ち込んだ様子だった。

 

「それなら、スラグホーン先生に頼むといいよ。僕が呼んでくる」

 

 ハリーはスラグホーンの部屋に向かった。スラグホーンの部屋のドアをノックすると、スラグホーンは動揺した様子で出てきた。

 

「こんばんは、ハリー。何の用かな?」

 

「先生。お願いがあるんです。ハグリッドの友達のアクロマンチュラを見てやってください」

 

「アクロマンチュラだって? イギリスでは未確認だと、ニュート・スキャマンダーの本には……。噂では聞いたことがあるが……」

 

「蜘蛛の名前はアラゴグでハグリッドの友達なんです。ハグリッドは、アラゴグの調子が良くなくて落ち込んでいます」

 

「わかった。出来ることはやってみよう。案内しておくれ」

 

 スラグホーンは小さなトランクを持った。

 

***

 ハグリッドの小屋に行くと、その中にはハグリッドは居らず、その代わりに小屋の裏にハグリッドと眠った巨大蜘蛛がいた。

 

「今は眠っちょる。見てやってくれねえか?」

 

 ハグリッドが言った。

 

「もちろんだ。なんと美しいアクロマンチュラだ……。それに大きい。素晴らしい量の毒を持ってるだろう……」

 

 スラグホーンがアラゴグに近づきながら言った。

 

「ホラス、あんたアラゴグの毒が欲しいのか? 元気になったらもらっておこうか?」

 

 ハグリッドが聞いた。スラグホーンは嬉しそうな顔をした。

 

「ぜひお願いしたいものだ。さあ、元気になってもらわなければ。

 --これは病気ではなく、老弱だ。この薬を飲ませておけばたちまち元気になるだろう。あと少し遅かったら助からなかったかもしれない」

 

 スラグホーンはアラゴグを一通り見たあと、ハグリッドに大きな瓶を渡した。

 

「ありがてえ、スラグホーン先生。お礼をさせてくれねえか? ハリーと一緒に小屋で待ってくれ」

 

 ハグリッドは瓶を持って、アラゴグの方に向かった。

 

 ハグリッドは、飲み物の瓶を大量に抱えて戻ってきた。

 

「これがお礼だ。たくさん飲んでくれ。もちろん毒味はされちょる」

 

 ハグリッドは大きな音をたてて瓶をテーブルに置いた。それから、ハグリッドとスラグホーンは飲み続けた。

 

「今回、アラゴグは無事だったが、ひどいもんで、いいやつは早死する」

 

 ハグリッドが言った。

 

「そうだな。ジェームズもリリーもそうだ。素晴らしい魔法使いだった。君はあの時のことは覚えていないのかね?」

 

 スラグホーンが言った。

 

「えぇ、まだ一歳でしたから。でも--」

 

 ハリーは言葉を続けた。

 

「どうやら父が最初に殺されたそうです。ヴォルデモートは僕に、母は死ぬ必要はなかった、逃げれば死ぬことはなかったと言いました」

 

「なんと……むごい……」

 

 スラグホーンがひっそりと言った。

 

「でも、母は動かなかった。母はヴォルデモートに哀願しました。--でも、ヴォルデモートは……」

 

「もういい! 十分だ!」

 

 スラグホーンは震えながら言った。

 

「先生は、母が好きだったんですか?」

 

 ハリーが聞いた。

 

「あぁ、そうだ。彼女を好きにならない者はいない。きっと、君も好きになっていただろう」

 

 スラグホーンの目には涙が溢れていた。

 

「それなのに、先生はその息子を助けてくれない。母は僕に命をくれたのに、先生は記憶をくれない」

 

 ハリーは静かに言った。

 

「しかし、そんな老人の記憶など役に……」

 

「役に立ちます。奴を殺すためには記憶が必要なんです」

 

 ハリーはスラグホーンの言葉を遮った。

 

「リリー・エバンズを殺したヴォルデモートを退治したくないのですか?」

 

「もちろん、退治したい。しかし、自慢の出来る記憶ではない。恥ずかしいのだ。私はもしかしたらとんでもないことを引き起こしてしまったかもしれない……」

 

「僕にその記憶を渡せば先生のやったことは帳消しになります。それはとても勇敢で気高い行為です。僕を命をかけた守った母--リリー・エバンズのように」

 

 スラグホーンは黙った。そして、ゆっくり杖と小さな瓶を取り出すと、杖をこめかみに当て、引いた。記憶の糸か杖先について出てきた。スラグホーンはそれを瓶に入れてハリーに渡した。

 

「ありがとう。先生」

 

「君の目はリリーと同じだ。お願いだ、私を恨まないでくれ……」

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