「聞いて! ルーナ。私、『姿現わし』の試験に合格したわ! 私、まだ信じられないの」
夕食の時間にノエルは嬉しそうに言った。
「すごいね。私も早く習得していろんな生物の探検にいきたいなぁ」
ルーナが言った。
「あれ、ハリーが居ない。ロンとハーマイオニーはいるのに」
ルーナがグリフィンドールのテーブルを指差して言った。
「本当だわ。あら、ロンはもうラベンダーとは座っていないようね。噂通り、別れたのかしら。--それに、ダンブルドアも居ないわ」
「ダンブルドアは最近よく居なくなってるよ。ハリーが居なくなることもたまにあるし、例えば今年の最初とか」
ルーナは夢見心地の声で言った。
「じゃあ、また何か問題でも起きたのかしら? それとも罰則なのかしら……」
二人は夕食を終え、寮に戻った。
***
ハリーは弱ったダンブルドアを連れて城に戻ってきた。スネイプの処置のお陰でダンブルドアは話せるようになった。ダンブルドアはマクゴナガルを呼んで、
「ハリーを寮まで送り届けてほしい。そして、レイブンクローからミス・ガーネットを呼んでくるのじゃ。ミネルバなら、あの寮に容易く入れるじゃろう」
と言った。マクゴナガルは言われた通りハリーを寮まで送り、レイブンクローの寮に簡単に入り、ノエルの肩を叩いた。
「まだ、真っ暗よ……。パドマ……? マクゴナガル先生!?」
ノエルはベッドから飛び起きた。
「静かになさい。他の生徒が起きてしまいます」
「そんなこと言われてもこんな時間に起こされるからですよ……。どうしたんですか?」
ノエルは目を擦りながら言った。
「ダンブルドア先生があなたのことをお呼びになっています」
「私、ですか?」
「ええ、あなたです。支度をしておいでなさい」
ノエルは適当にワンピースを来て、マクゴナガル先生と一緒に校長室まで向かった。
「タフィー・エクレア」
マクゴナガル先生が合言葉を言って、校長室に入った。ノエルも着いていった。校長室にはぐったりとしたダンブルドアとスネイプがいた。
「セブルス、ミネルバ。席を外してくれんかの?」
ダンブルドアは弱々しく言った。
「もしものことがあれば、しかるべき時に……」
スネイプが言った。
「わしはまだ大丈夫じゃ」
二人は校長室から出ていった。
「新学期のことじゃ。何があってもホグワーツに戻って来てほしいのじゃ。たとえ、ホグワーツが死喰い人の支配におかれてもじゃ」
「何があってもって……。まさか、ダンブルドア先生がいる限り、そんなことなんて……」
「儂はただの老いぼれじゃ。ヴォルデモートが復活した今、何が起こるのかわからぬ。それに、あの三人は新学期からはきっとホグワーツには戻らない」
「あの三人? 誰ですか?」
ノエルは首をかしげた。
「まさか、ハリー、ロン、ハーマイオニーですか?」
ダンブルドアは頷いた。そして、沈黙が訪れた。先に口を開いたのはノエルだった。
「わかりました。私は絶対に新学期からもホグワーツに戻ります。約束します。でも、なぜ……?」
ノエルが聞いた。
「分霊箱を知っているかのう? もちろん、知っていたら大問題じゃ。分霊箱は殺人を行うことで魂を引き裂き、その断片を器に納め保存するものじゃ。分霊箱があるかぎりヴォルデモートは死ぬことはない。そして、ヴォルデモートには七つの分霊箱があるはずじゃ」
「七つ……」
ノエルは顔をひきつらせた。
「そのうちの一つは儂が破壊した。そして、もう一つはハリーが破壊した」
ダンブルドアは指輪と日記帳をテーブルに置いた。
「残りの五つのうち三つはホグワーツの創設者の品のはずじゃ。ヘルガ・ハッフルパフのカップ、ロウェナ・レイブンクローの髪飾り、サラザール・スリザリンのロケットじゃ。レイブンクローの髪飾りはレイブンクローの寮にあるロウェナ・レイブンクローの像がつけているじゃろう」
「あの髪飾りがそれだったんですね。聞いたことがあります。着けた者に知恵を与えるとか……。でも、髪飾りは例のあの人が生まれる何百年も前から行方不明なんですよ?」
「その通りじゃ。しかし、ヴォルデモートがそれを発見したという可能性は大いにある」
「そうですね。では、他は? ハッフルパフのカップとスリザリンのロケットは?」
ノエルが勢いよく聞いた。
「ハッフルパフのカップは彼が若いうちにすでに手にしておる。そして、今夜、ハリーと儂で探しに行ったのがサラザール・スリザリンのロケットじゃ」
ダンブルドアはテーブルにロケットを置いた。
「しかし、これは偽物じゃ。ハリーが持っているが、このロケットには手紙が入っておった。死喰い人が残していったものじゃ。彼、あるいは彼女は分霊箱を破壊しようとしていた」
「死喰い人が? 一体誰ですか?」
「わからぬ。ただ、R.A.Bという署名が残されておった。しかし、スリザリンのロケットがすでに破壊されているのかはわからぬままじゃ」
ダンブルドアが残念そうに言った。
「そこで、本題じゃ。このロケットには、何か呪いのようなものがかかっておる。それを解いてほしいのじゃ」
「私が、ですか? あの、よかったら私の成績をご覧になっていただきたいんですけど……」
ノエルは驚いて言った。
「それに、死喰い人のかけた呪いですよ? 最悪、私、死にますよ」
「大丈夫じゃ。きっと出来るじゃろう。しかし、何が起こるのかはわからぬ。新学期になってから『必要の部屋』でやるとよいじゃろう」
「そんなこと言われても私に出来るとは……」
ノエルは自信なさげに言った。しかし、ダンブルドアはノエルにロケットを渡した。
「必要なのは自信じゃ。自信を持つのじゃ。さあ、もうそろそろで日が登り始めるのう。ルームメート達が心配する前に帰るのじゃ」
ダンブルドアはノエルを帰るように促した。ノエルも不満そうな顔をしながら、しぶしぶ校長室から出ようとした。
「良いか? 必ずホグワーツに戻ってくるのじゃ」
ノエルがドアに手をかけたときにダンブルドアが言った。
「わかりました。ロケットはわかりませんが、ホグワーツには絶対に戻ってきます」
そう言ってノエルは校長室を出た。もう、空には日がのぼっていた。