ある日のことだった。レイブンクロー対グリフィンドール戦の数日前に、ケイティ・ベルは回復し、ホグワーツに戻ってきた。彼女は、ホグズミードの『三本の箒』でトイレに入ったことまでしか覚えていなかったと言う話はケイティが帰ってきた日の間に伝わった。もし、グリフィンドールが勝ったとしても、差を三〇〇点未満に抑えることが出来ればレイブンクローが優勝だ。グリフィンドールが三〇〇点以上の点差をつけて勝つことはとても難しいが、ロンもケイティも帰ってくる。レイブンクローは油断は出来ないだろう。
***
「ミス・ガーネット! ちょうどよかった。ミス・ラブグッドを知りませんか?」
夕食前に、フリットウィック先生がノエルにキーキー声で話しかけた。
「知らないです。私が探してきますよ。自由時間ですし」
ノエルが答えた。
「それは嬉しい。明日の朝にお菓子を何か送りましょう」
フリットウィック先生は忙しそうにしながらどこかへ向かっていった。
--ルーナってどこにいるのかしら? 全く検討もつかないわね。私、夕食にありつけるかしら……
ノエルはルーナが見つからないまま全く人気のない八階まで来た。
「クルー--」
「セクタムセンプラ!」
女子トイレから声が聞こえた。どちらも男子生徒のものだった。最初の声はきっと『磔の呪文』だろう。二つ目は、全く知らない呪文だった。そして、二つとも、ノエルに聞き覚えのある声だった。
「何をやっているの!?」
ノエルは女子トイレに入った。トイレは水浸しで、血まみれだった。そして、そこに居る二人の男子生徒はハリーとマルフォイだった。マルフォイは大量に出血をしていた。ハリーはがっくりと両膝を床についていた。
「と、とりあえず、止血をしないと。このままじゃ……」
ノエルは震えた手で自分のハンカチに杖を向け、大きくした。それを、出血部分にきつく巻き付けた。マルフォイは苦しんだままだった。血も、止血の意味が無いのかどんどんあふれでていた。ノエルもハリーもマルフォイも血だらけだった。
「そんなことあるの? まさか、闇の魔術じゃ……。私、聞いたことないもの。ああ! どうすればいいの。しっかりしてよ……。ドラコ……」
そこに、いきなりドアが開いた。入ってきたのはスネイプだった。スネイプはマルフォイの傷口を杖でなぞり、呪文を唱えた。傷口は塞がってきたようだった。スネイプはマルフォイを抱えあげながら立たせた。そして、ノエルとハリーに、
「ここで我輩を待つのだ」
と言い、マルフォイと一緒にドアから出ていった。
「ハリー。ここで一体何が……。あの呪文は何? どの本で見つけたの?」
ノエルが聞いた。ハリーは少し黙っていたが、ゆっくり口を開いた。
「マルフォイが女子トイレに居るのを見つけて、僕は無言で呪いをかけようよした。もちろん、闇の魔術じゃないよ。そしたら、マルフォイが気づいて……」
「『磔の呪文』を唱えかけたのね。それで、あなたはあの呪文を」
「そうだ。プリンスの教科書で知ったんだ。どんな魔法かは知らない」
ハリーが言った。
「プリンス? あの魔法薬学の教科書? なんで呪文まで書き込んでいるのよ? せめて、呪文学とかの教科書に書けばいいのに……」
スネイプが帰ってきた。
「あの呪文はどこで知った? あの闇の魔術を。今すぐ、学用品の鞄の中身を全部持ってこい」
スネイプが言った。
「でも、僕……」
「今すぐだ」
スネイプはハリーの言葉を遮った。
「私は……?」
ノエルが聞いた。
「--君もだ」
スネイプは少し間を開けて答えた。
「男性教員が女子生徒の持ち物を見るのって大丈夫なんですか? アズカバン行きます?」
ノエルが言った。
「教科書--『魔法薬学』の教科書だけで結構だ」