ハリー・ポッターと鷲寮の少女   作:有栖川八重

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セクタムセンプラ2

 二人はスネイプに教科書を渡した。スネイプは入念に--特にハリーの教科書を調べた。

 

「ポッター、これは君の教科書か?」

 

「はい」

 

「我輩の記憶がおかしくなければ、君の名前は『ローニル・ワズリブ』ではないはずだが」

 

「これはロンがふざけて僕の教科書に書きました」

 

 スネイプは瞬きもせずにハリーの目を見つめた。

 

(『開心術』だわ……)

 

「先生。生徒相手にそれはプライバシー的にまずいのでは? 誰にだって見られたくない個人的な悩みとか秘密はあるんですよ。先生だってありますよね?」

 

 スネイプは苦い顔をした。

 

「しかし、ポッターは隠し事をしているはずだ」

 

「理事に手紙を出しますよ。そうですね--生徒の個人的な情報を、自分の一方的な考えだけを根拠に無理やり聞き出そうとする教員がいるとか……」

 

 ノエルがすました顔で言った。

 

「もし、『開心術』を使えないのならば、ポッターが本当に嘘をついているのかが分からない。それこそ、一方的な考えで罰則を決めなければならない」

 

 スネイプが言った。

 

「僕、『開心術』よりも、罰則の方がいいです」

 

「ふむ、では土曜日の朝、十時から罰則だ」

 

(土曜日って、クィディッチの試合じゃないの! 分かっていて言っているのかしら)

 

「でも、土曜日は……」

 

 ハリーが絶望的な顔で言った。

 

「ポッター、君が望んだことだ」

 

 スネイプは去ろうとした。

 

「待ってください。先生」

 

 ノエルが言った。

 

「先生は最初から思い違いをしていると思います」

 

 スネイプは立ち止まった。

 

「思い違いとは?」

 

「だって、私ですもの。マルフォイに呪文をかけたのは」

 

 ノエルが言った。ハリーは驚いた顔をしたが、すぐに元の顔に戻した。

 

「そもそも、おかしくないですか? なんで男子二人がわざわざ女子トイレで?」

 

「その通りだな。説明するのだ」

 

「ええ、もちろんです。私、ルーナを探している途中にトイレに寄ったんです。もちろん本当ですよ。フリットウィック先生に頼まれたんです。そこで、男子が居ることに気づいて……。そしたら、いきなり彼は『磔の呪文』を唱えようとしました」

 

「『磔の呪文』だと?」

 

「はい。そこで、動揺した私はとりあえず、浮かんできた呪文を唱えました。いきなり、許されざる呪文を唱えられたら、そりゃあ動揺しますよね」

 

「それが『セクタムセンプラ』か」

 

 スネイプが即座に言った。

 

「はい。騒ぎに気づいたハリーが駆けつけてくれました。そこに、先生がやって来たんです」

 

 ノエルは口を閉じた。

 

「どこで、その呪文を知ったのだ?」

 

 スネイプが聞いた。

 

「二年くらい前に魔法薬学の教室に置いてある教科書で見つけました。調べても全くわからない呪文だったので、ずっと覚えていたんです」

 

「今はその教科書はどこに?」

 

 スネイプは二つ目の質問をした。

 

「わかりません。今年になって私も自分の教科書を買ったので」

 

 ノエルが言った。

 

「結構だ。罰則はなしだ」

 

 スネイプが言った。

 

「なんで。僕は罰則にしようとしたのに」

 

 ハリーは不満そうに言った。

 

「彼女は何があったのかを、君と違い話した。我輩も暇ではない」

 

 スネイプはトイレから出ていった。

 

「スネイプが女子トイレから出ていくところを誰かが見たら、どう思われるのかしらね。あんなキッパリ言うのって本当に緊張するわね」

 

 ノエルは楽しそうに言った。

 

「ごめん、ノエル。君が罰則になるかもしれなかったのに。君、一回も罰則受けてないんだろ?」

 

「そうよ。でも、一回くらい、いいじゃない」

 

「それに、僕が試合に出れなければレイブンクローは優勝できる可能性が高くなる」

 

「でも、私、あんまりクィディッチに興味はないのよ。レイブンクローのチームもあなたが居なくて勝ってもそんなに嬉しくないと思うはずよ」

 

「少なくとも私なら、そう思うわ。カンニングしてテストで良い点をとっても楽しくないもの」

 

 ノエルが付け足した。すると、ハリーは何かを思い出し、青ざめた顔をした。

 

「どうしたの? ハリー?」

 

「マルフォイを忘れていた。あいつがスネイプに本当のことを言ったら……」

 

「完全に忘れてたわ……。ハーマイオニーに頼んで『忘却術』でも……」

 

 ノエルは頭を抱えた。

 

「そんな簡単に医務室に入って、病人に何か出来ると思うのかい?」

 

「無理だと思うわ……。--でも、問題はないはずよ」

 

 ノエルはいきなりニッコリ笑った。

 

「何が? 問題だらけだよ!」

 

 ハリーは怒ったように言った。

 

「だって、私とハリーがやったことが逆なだけで、あとは全然嘘をついていないわ。私は無罪になったのだからあなただって無罪よ」

 

「でも、嘘をついたってことに変わりは……」

 

「スネイプはきっと気づいているわ。あなたが真犯人だって。でも、あなたを犯人とする証拠も、私が犯人ではないという証拠もないのよ。--さあ、早く帰りましょう。もしこのトイレに誰かが入ってきたら相当まずいわよ」

 

 二人はトイレから出た。

 

「じゃあ、お休み。ノエル」

 

 ハリーはグリフィンドールの寮の方に向かった。

 

「お休み。ハリー」

 

 ノエルもレイブンクローの寮に向かった。

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