「うわ。最悪だわ……」
朝食の時間に配達された『日刊予言者新聞』を見て呟いた。
「どうしたの?」
ルーナが新聞を覗きこんだ。新聞には九人の魔法使いと一人の魔女の写真が載っていた。
「アズカバンで集団脱獄ですって。きっとシリウス・ブラックの手引きよ」
それを聞いたレイブンクローのテーブルの何人かがノエルの方を向いた。
「アントニン・ドロホフ……。ギデオン・プルウェットとファビアン・プルウェット……ロンのお母様の兄弟よ。を虐殺したの。ベラトリックス・レストレンジはネビルのご両親を拷問して廃人にしたの。
彼らは本当に闇祓いを手こずらせたらしいわ。パパはまだ訓練期間だったというのにデスイーター達の捜索に駆り出されたらしいわ」
グリフィンドールの机でもハーマイオニーが『日刊予言者新聞』を見て悲鳴をあげていた。
「これってさ、もしかして、ポッターとかダンブルドアの言っている通り『例のあの人』が帰ってきたってことなのかな……」
「やだなぁ。シリウス・ブラックの時みたいにホグワーツに入ってきちゃったら」
レイブンクローの生徒達が口々に呟いた。
***
次の朝、寮の掲示板には新しい教育令が貼り出されていた。
「自分がお給料をもらって教えていること以外は教えてはいけないのですって」
ノエルがルーナに言った。
「へぇ。じゃあ、授業中に雑誌を読んでも怒られないね。だって、雑誌について教えている先生はいないもン」
「そうね。まあ、強いて言えばマダム・ピンズね」
ルーナと同じことを考える生徒は珍しく多かったらしく、グリフィンドールのリー・ジョーダンは、『闇の魔術に対する防衛術』の時間にフレッドとジョージが『爆発スナップ』カードゲームをやっているのを注意しようとしたアンブリッジに
「先生、『爆発スナップ』は『闇の魔術に対する防衛術』と関係ありません! 先生は注意することは出来ません!」
と指摘したらしい。
***
「ネビル! すごいわ! 『盾の呪文』も成功させるなんて。まだ、ハーマイオニーしか成功させてないのよ」
呪いを跳ね返されたノエルが言った。最近のネビルは一番に『必要の部屋』に来て練習を始めていて、誰よりも練習を頑張って、すごく上達している。
「あー、うん。ありがとう。
あのさ、ノエルはお父さんが闇祓いだから、そのさ、僕のパパとママについて知ってるでしょ? アズカバンで集団脱獄があって、なんか僕……」
「闇祓いは寝ずに探し回っているみたい。でも見つからないってことは、やっぱり『例のあの人』は復活していてその庇護下に脱獄犯はいるのだと思うわ……。
さあ、練習に戻りましょう。もう一度『盾の呪文』をやってもらえるかしら? 私、全然コツを掴めないの」
***
ある月曜日の朝、ハリーとルーナの元に同じふくろうから配達が来た。
「パパからだ。ハリーを『ザ・クィブラー』でインタビューしたんだぁ」
「そういえば言ってたわね。バレンタインのホグズミード行きの時でしょう? 見せてくれる?」
ノエルが言うと、ルーナは、雑誌を一冊渡して
「あげるよ」
と言った。
「マルフォイの父親ってやっぱりデスイーターだったのね。ホグワーツに四人もデスイーターの子どもがいるじゃない。やだわぁ、一応マルフォイ家とも親戚なのよね」
ノエルが言った。ルーナは
「ハリーの所に行かない?」
と言いフラフラとグリフィンドールのテーブルに歩いていった。
「昨日出たんだよ。ほら、読者からの手紙だよ」
グリフィンドールのテーブルでルーナは言った。
「ハリー、開けてみてもかまわないかしら?」
ハーマイオニーが聞いた。
「いいよ。自由に開けて」
「男性からだ。君がいかれてるってさ」
ロンが言った。
「こっちは女性ね。聖マンゴを受信しなさいって」
ハーマイオニーが言った。
「どっちつかずの人もいるみたいね。ハリーの言ってることは嘘だとは思えないけど、信じたくないって。まあ、気持ちはわかるわ」
ノエルが言った。
「でも、説得された人もいるわ!」
ハーマイオニーが興奮して言った。
「あぁ、この人は、君が頭が変だって。でも、こっちは君に説得してる。君が真の英雄だってさ。……うわー!」
ロンがいきなり大声をあげた。ロンの後ろを見るとアンブリッジがニタニタしながら立っていた。ガマガエルのような目は、テーブルの上の手紙を眺め回していた。
「この中にはハエはいないよ。先生」
ルーナが言った。
「ルーナ! 何を言っているの!? 朝食の途中よ。戻りましょう」
ノエルはルーナを引っ張ってレイブンクローのテーブルに戻っていった。アンブリッジがグリフィンドールを減点し、ハリーに罰則を言い渡した声がレイブンクローのテーブルまで聞こえた。
***
その日の昼には学校中に新しい教育令が掲示された。
「『ザ・クィブラー』を持っていたら退学ですって。ルーナのお父様に対する営業妨害ね」
ノエルが言った。
「そんなことないよ。ハーマイオニーが言ってたよ。禁止にされたってことは、みんな気になって読みたくなるんだもン。パパに他の雑誌に偽造して配達できるように頼んでおこうかな」
その通りに、たちまちホグワーツの全員が『ザ・クィブラー』を読み、増刷が決定した。