ノエルが夕食を早めに切り終えて、図書館で勉強をしていると玄関ホールの方から甲高い悲鳴が聞こえた。
--私ったら勉強のしすぎでついに幻聴まで聞こえるようになったのかしら……。
ノエルは勉強を再開しようとした。しかし、それはノエルの幻聴ではなかったということに気づいた。図書館の中がざわついて、あのマダム・ピンズでさえも悲鳴が気になったらしく、誰も注意をしようとしなかった。ノエルは勉強道具を急いで鞄に詰めて、玄関ホールへ向かって走った。
***
玄関ホールは満員の状態だった。そして、ホールの真ん中にはトレローニー先生が立っていた。ノエルは『占い学』をとっていなかったし、トレローニー先生が大広間に来ることはなかったので見るのは始めてだったが、ルーナから聞いた通りの姿をしていたのですぐにわかった。しかし、始めて見るノエルから見ても完全に様子がおかしかった。彼女は怯えた表情で濃いピンクの服を着てニタニタ笑うアンブリッジを見ていた。
「ここは……私の家です! 出ていくことなんて出来ませんわ」
トレローニー先生が泣きわめいた。
「教育令第二十三号をご覧になったのかしら? ここは、家だったのよ。一時間前に魔法大臣が『解雇辞令』に署名なさりました。出て行ってちょうだい」
アンブリッジは少女のように甲高いが、冷たい声で言った。そして、トレローニー先生が泣いている姿を舌なめずりして眺めていた。
「ハエでも見つけたのかなぁ? 自分の頭の上にいつも乗っているのに」
気づいたらルーナが隣に立っていた。ルーナはアンブリッジの頭の上に乗っている黒いリボンを指差した。
「シビル。落ち着いて。あなたはホグワーツを出ることにはなりませんよ」
マクゴナガル先生がトレローニー先生に歩み寄ってハンカチを手渡した。
「マクゴナガル先生? あなたにそのような権限がおありで?」
アンブリッジが毒々しい声で言った。
「それがわしの権限じゃ」
正面玄関のドアが大きく開き、そこからダンブルドアが現れた。
「あなたは教師達を解雇する権限をお持ちじゃ。しかしのう、この城から追い出す権利はまだわしが持っているのじゃよ。さあ、マクゴナガル先生。シビルを上まで連れていってくれるかの?」
マクゴナガルは頷いて、トレローニー先生の片腕を支えた。すると、スプラウト先生がトレローニー先生のもう片方の腕を支え、フリットウィック先生が杖を上げ、トランクを宙に浮かせた。アンブリッジは悔しそうな表情でその様子を見ていた。
「さすがダンブルドアね。あのゲコゲコうるさいガマガエルを黙らせるなんて」
ノエルが言った。その後、ダンブルドアは新しい『占い学』の教師として、ケンタウルスのフィレンツェを任命したのだった。