承女救済セイヴァーズ   作:B・R

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書き上がれば即投稿しないと、今年中の一期完結は不可能ッ!(叶わぬ願い)


第六話 影

翌日の放課後、コウは早速司令部へと赴いていた。

昨日、あの後、診断によりどういうわけか登校許可が出た為、コウは通常通りに登校した。リンゼや忠尚、ユウヒには心配されたが、昨日の今日で学校を休むわけにもいかないと判断してのことでもあった。

ユウヒの言うことも最もであり、今強くなる為には、誰かに誰かに師事して、戦い方を知る必要があった。

その点、エクスカリバーの先代保有者であるリンゼは、これ以上ない適役であった。

 

「で、私に師事したい、と」

「そうなんだ。⋯⋯駄目、かな?」

 

口を固く結び、悩む仕草を見せるリンゼであったが、しばらくすると、コウを見つめて口を開いた。

 

「私や、レンカ、カノンは高校生だから、アルバイトとしてこの責務をやれる。だが、コウやユウヒはまだ中学生だからな。法律上は、学業優先だ」

「⋯⋯でも」

「でも、じゃない。私とお前では、立場が違い過ぎる」

 

中学生は、法律上、アルバイトをすることは難しい。出来ないことはなくとも、高校生とは違って、圧倒的に制限が多すぎるのだ。

そんな状態を前に、コウが軽く絶望に飲まれかけた時、しかし、リンゼは手を伸ばした。

 

「だが、まあ、放課後であれば、問題は無い。良いぞ、私がお前を指導してやる」

「⋯⋯ありがとう、リンゼ!」

 

なんだかんだ言って、少し嬉しいんだろうなぁ、とはその場に居た職員達の感想である。

 

 

コウがリンゼに指導の約束を取り付けていた時、レンカは基地に備え付けられた港から、海を眺めていた。

その隣には、黄色い眼の少女、現世カノンの姿が。

 

「今日は、珍しいな、カノン」

「まあ⋯⋯何故かは知らないけど、学校が休みだったから⋯⋯」

 

カノンは、アジア支部WayMark所属のセイヴァーズの中で、唯一住んでいる場所が他のメンバーと離れている。

その為、支部に顔を出せることは少ないのだ。

 

「ただ、そろそろ私の方に、基地と直通のテレポーターを作るみたいなことを言ってた、けど⋯⋯」

「へー、そりゃまた豪勢なことで」

「才原さんの家の協力」

 

「ええ⋯⋯」と言って肩を落とすレンカを見て、カノンはふふふと微笑んだ。

レンカの家は、WayMarkの表面上のスポンサーと、資金提供者を務めている大手のブランド。その為、WayMarkの開発には、大抵資金提供を行っているのだ。

まあ、本人は少し心苦しく思っているようではあるが⋯⋯。

 

「ま、カノンもやっとこさ、連携に参加できるわけだ」

「⋯⋯うん」

 

連携という言葉に表情を曇らせたカノン。

レンカは、それを見て気分を悪くしたとでも言うかのようにガシガシと頭を搔く。一瞬、チラリと見えた顔の火傷跡に、カノンは悲愴さを感じる。だが、それを指摘しても、彼女が良い気分になることは無いだろう。そう考えた、カノンはそれを見なかったことにした。

ズレた白いストールを直しながら、レンカは諌めるようにカノンに語りかける。

 

「⋯⋯ちっ、お前、まだいじめられてんのかぁ?ったくよぉ⋯⋯気にすんなとか、そんなことは言わねえけど、何か言わねえとなんも変わらねえぞ?」

「⋯⋯分かってるよ⋯⋯でも⋯⋯」

「だぁー、もう! でも、じゃねえ! 苦しそうな顔すんなら、それをどうにかする努力をしやがれってんだ」

 

カノンの煮え切らない態度に、生来から短気で深くは抱え込まないタイプのレンカは、小さくイライラを募らせる。

しかし、その声音からは、本当に心配している、という気持ちが伝わってくるのも事実であった。

 

「⋯⋯ありがとう、才原さん⋯⋯だけど、もう少し待って⋯⋯まだ、怖いの⋯⋯」

「わりぃ、オレも言い過ぎた。だが、辛くなったら、仲間を頼るってのも良いもんさ」

「⋯⋯うん」

「ま、頑張ろうぜ」

 

頷いたカノンを見て、レンカはその場を立ち去ろうとする。

だが、その時、基地内のサイレンがけたたましく鳴り響く。そして、二人のインカムがそれぞれ鳴動した。

急ぎ、耳に装着すると、インカムからはリンゼの声が。

 

『二人共、近くに居るな?』

「ああ」

「⋯⋯うん」

 

何でも、セイヴァーギアが無くなろうとも、何らかの役に立ちたいと、リンゼはオペレーターを引き受け、また、機材操作についても勉強しているらしい。

リンゼらしいと、レンカは笑った。

 

『場所は、そう離れていない。だが、昨日の戦闘のメンテナンスで、ユウヒのギアはこっちにある。コウには、お前達の戦闘を見てもらう為、二人にやってもらう。難しそうなら、コウも行かせるが⋯⋯』

「いんや、オレ達だけで十分だ。オレ達二人だけに任せるってことは、大して不安要素のある敵ってわけでもないんだろ?」

『ああ、Bレートが二体のみだ。ここのところ、立て続けにアンノウンが出現しているが、此方もいろいろと調べている。取り敢えず、調査報告はよろしく頼む』

「はっ、そういうのは後で言うもんだろ⋯⋯ちくしょう、めんどくせえなおい」

 

調査報告の言葉に、あからさまに面倒臭そうに顔を歪めるレンカ。

二人は、提示された出現場所まで移動する為、走り出した。

司令部のある大田区から、目的地までは三キロ前後。走れば十分間に合う距離ではあった。

 

「案外、近いみたいだな」

「⋯⋯うん⋯⋯でも、エナジーが勿体ないからって、走る必要あった?」

「良いんだよ。走った方が訓練にもなるしよ」

 

そう言うレンカは、まるで危機感を抱いていないように見えた。

逃げ惑う人々を掻き分けながら、二人は人の波をアンノウンの方向へ逆走する。

 

「⋯⋯はぁ」

「ま、Bレート二体だし、ストレス発散程度にでもやろうぜ」

 

実際、Bレート程度であれば、今までも幾度となく倒して来ている。Aレートは片手で数える程、しかも他のセイヴァーズとの共同でしか討伐していないが、それでも、経験はあった。また、数が多いならともかく、Bレート二体ではそれほど民間人に被害が出る恐れがあるわけでもない。

 

「今更、Bレート如きに遅れをとるわけもなし。てか、そろそろSレートと戦いたいぐらいだ」

「Sレートは⋯⋯流石に⋯⋯」

 

Sレート、それは接触禁忌対象であり、討伐にはそれなりの経験を積んだセイヴァーズが徒党を組んで当たる必要がある存在。それでも、討伐出来るかは五分五分である辺り、かなりの強さを持つネームド個体だ。

 

「んなことは、まあ、どうでも良いか。そろそろ着くぜ。変身⋯⋯Fragment Amenohabakiri Start-up!!」

 

レンカは立ち止まり、指輪を横に振り払いながら詠唱する。

 

光が包み込み、彼女をセイヴァーズに、戦士に変える。

 

腕、肩、腰、脚にダークブルーの軽装甲を纏い、その右手には鍔と反りの無い黒い刀身の刀アメノハバキリを装備したその姿が、才原レンカのセイヴァーズとしての姿。

レンカは、変身しようとリングを触るカノンの腰に手を回して抱き抱える。

 

「すぅ⋯⋯じゃ、跳ぶぞ」

「⋯⋯へ?」

 

レンカは、アンノウンの暴れる音が聞こえる住宅街へと向けて、跳んだ(・・・)

 

「ほらよっと! ちゃんと受け身取れよ!」

「なんで、投げるの⋯⋯!?」

 

あろうことか、空中でレンカに投げられたカノンは、慌ててリングを胸元に翳して、詠唱する。

 

「Fragment Dáinsleif Start-up⋯⋯!!」

 

目を瞑り、光に包まれ、カノンはその姿を変える。

そして、地面に綺麗に着地した時に光が晴れ⋯⋯

 

「殺るわよ」

 

足元から無数の彼岸花が現れては散っていく。

和風の赤いローブに身を包んだカノンは、緋色に白のラインが入った直剣ダーインスレイブを振り払うことで彼岸花を描き消し、その閉じた双眸を開く。

 

その目は、血のように赤かった。

 

「にしても、なんで変身するだけで変わるかねぇ」

「⋯⋯変わっていない。ただ、少し我慢が効かなくなるだけ」

 

「それが変わるってことだよ」とレンカは苦笑するが、カノンはそれを意にも介さず、二体のアンノウンに向けて剣を向ける。

 

「才原さんは、手出ししなくて良いよ⋯⋯私ひとりで殺る」

「あーいあい、わーったよ。ま、ヤバそうだったら⋯⋯って聞いてねえし」

 

カノンは、剣を振り払い、疾駆する。

FMのセイヴァーギアとは言え、纏っている時の馬力は軽く短距離走世界一位の記録を超える。いや、そんなものは比ではない。

文字通り、瞬きの間に十数メートルを駆け、アンノウンの前に立ったカノンは、ダーインスレイブを一閃する。

 

「はぁっ!!」

『GAAAA!?』

 

3メートルはある巨大な人型アンノウンの片腕を斬り飛ばし、返す太刀でそのまま、片足を斬り捨てる。

体勢を崩して片膝を付くアンノウンの首にダーインスレイブを突きつけ、カノンは薄らと嗤った。

 

「大丈夫だよ。私、慈悲深いから……たっぷり遊んであげるっ!」

 

もう一体の虎のようなアンノウンが、カノンに襲いかかろうとすると、その足元から彼岸花が現れ、人の腕に形を変える。そして、アンノウンを拘束した。

 

「まだ、待っててね? 後で遊んであげるから」

『AAAAAA!!』

 

アンノウンには、恐怖の感情は愚か、感情そのものが備わっていない。しかし、レンカの目を通して見た二体のアンノウンからは、おぞましい何かに恐怖するような感覚が伝わってきた。

 

「ほら! ほらぁ!」

『AAA!GAAAAA!!』

 

片腕と片足を失ったアンノウンの身体を、ダーインスレイブで斬りつけていく。その姿は、まるで遊んでいるよう。

 

「⋯⋯おい、カノン。そろそろ、終わらせろ。解禁令出さなきゃいけねえ」

「分かった。もう少し遊びたかったけど⋯⋯まあ、仕方ないよね」

 

そう言って、カノンは俯き力なく項垂れるアンノウンの首を切り捨てた。頭を失ったアンノウンの身体は、瞬く間にレジェンダリーエナジーの粒子へとなり風に消えていく。

 

「ったく、オレの出番ねえじゃねえかよ」

「また、今度。頑張って」

 

そして、腕に取り押さえられて藻掻く虎型アンノウンの首も同様に跳ね飛ばし、カノンは、見物するレンカの元へと寄った。

 

「ま、次はオレがやらせてもらうわな」

「うん」

 

そう言って、変身を解こうとした時⋯⋯二人のインカムに通信が入る。

 

『⋯⋯二人共、すまないが新たなBレートアンノウンの反応だ。数は四。そこから、あまり離れていない』

「⋯⋯了解」

「じゃあ、次は才原さんに任せるよ」

 

「当たり前だ」、そう言って、レンカはもう一度跳躍し、アンノウンの方角へと向かっていった。

 

 

 

 

そんな二人を、否、アンノウンの姿を、太陽に照らされたビルの上から見つめる者の姿があった。

サングラスの下に見える眼は、冷静冷徹に、状況を見据えている。

 

The condition of Solomon's ring (ソロモンの指輪の調子) is better.(は良好だよ) At the earliest,(早ければだが、) next month (来月までには)we can enter final test.(最終稼働試験に入れるかなぁ)

 

茶髪の少女は、右手に付けた銀色のラインが入った黒の指輪を見ながら、耳につけたインカムで誰かと会話をする。

 

I know.(分かっているよ) I need to keep up with saviors.(セイヴァーズに遅れは取らないって) Don't worry.(心配しないで) No problem.(問題は無いから)

 

そう言って、少女はインカムを外して、踏み砕いた。そして、手元の指輪を見つめて、ため息を吐いた。

 

「はぁ⋯⋯源流から力を分岐させて、アンノウンを使役させられるなんて、便利な代物だよねぇ」

 

すると、屋上の扉が開き、スーツに身を包んだ男達が現れる。

そのスーツには、WayMarkのシンボルであるアジアのシルエットに人差し指を立てた手、国家特務機関特殊指定災害対策本部による人類の道標を意味するマークが描かれていた。

 

「見つけたぞ、識別指名手配ヒューマノイド、コードJ。そのソロモンの指輪を我々の元に返却し、ご同行願おうか」

 

そう言って、銃を構えた男が立ち塞がる。

勧告に、少女は鼻で笑うと、その手の指輪を構えた。

 

「無理だね。死ぬのは貴方達だよ!」

「な!? 総員、戦闘配備!」

 

指輪が銀色に輝き、そして、異界より門が開く。

そこから、巨大な()が現れた。少女は、その口元を小さく歪めた。

 

「もう、終わってるんだなぁ」

「⋯⋯くそッ⋯⋯これが⋯⋯ソロモンの指輪の力か⋯⋯!」

 

 

残った最後の一人も、現れ出た一体のアンノウンにより触れられて、屋上の赤となった。




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