承女救済セイヴァーズ   作:B・R

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やっぱり、詰め込もうとするとちょっとなぁ()
それと、皆さん、シンフォギアXDで明日への凱歌、聴いてください。


第九話 ゴルゴーン戦

それなりの広さの河川敷。所々で草原が抉れ、土が露出していた。

逃げ惑い、苦しむ人の形をした数十にも上る数の()が、辺りに散らばる血溜まりが、その河川敷を、まるで地獄絵図のように変えていた。

そこに二つ、戦い、殺し合う影が。

 

 

『ァァァァアア!!』

「くっ、う⋯⋯ッ!?」

 

茜色の装甲を纏うセイヴァーズの少女、鏑木ユウヒは苦悶に顔を歪める。

髪の毛の全てが蛇であり、翼を持ち、その下半身は馬のそれである伝承通りの見た目のアンノウン、Sレートアンノウン『ゴルゴーン』と対峙する中で、幾度となく攻撃を受け止めた鎧はヒビが入っていた。

このアンノウン、ゴルゴーン自体の戦闘力は大したことがない。ユウヒ単体で倒せる相手ではないが、誰かが援護してくれれば二人でも倒せるだろう。

しかし、その特徴から割り振られた名前。それの持つ伝承のせいで、彼女はゴルゴーンと顔を合わせることが出来ないのだ。だからこそ、ユウヒはゴルゴーンに大したダメージを与えられずに、ほとんど一方的に嬲られている。

 

「くっ⋯⋯直視さえできれば⋯⋯」

『死ネ! 滅ベ! 救済者ァ!!』

「がは⋯⋯っ!?」

 

全長5メートルは超えるであろう巨体、その後ろ足から繰り出される蹴りを腹に受け、ユウヒは地面を転がりながら拳を地面に突き刺して踏み留まる。

 

「⋯⋯くっ⋯⋯きっついなぁ」

『ユウヒさん! そろそろ、レンカさんとコウさんが到着します! もう少しだけ、耐えてください!』

「⋯⋯いくらでも、耐え続けてみせるよ⋯⋯!」

 

だが、その言葉とは裏腹に、ユウヒの身体は、今にも倒れそうであった。

ユウヒは、腹部からの激痛に顔を歪めて、呻き声を上げる。そんな状態のセイヴァーズに手加減をするほど、アンノウンは甘くはない。

 

「うっ⋯⋯」

『斃レェ!!』

 

ゴルゴーンが、翼でユウヒを薙ぎ払う。

大質量の直撃を受けたユウヒは、そのまま地面に叩きつけられ、衝撃で肺の空気を全て、微量の血液を口腔から吐き出す。

 

「かはっ⋯⋯」

『コレデェ、終ワリダァ!!!』

 

ゴルゴーンの手刀がユウヒの腹部を貫こうと迫った瞬間、二人の間に何かが着地し突き刺さった。

それは、一本の剣。金色に輝く刀身を持った、聖剣の一振り。

直後、頭上からの危険を察知したゴルゴーンは、四足で以てその場から飛び退く。

 

「⋯⋯想語コウ、推参!」

「コウちゃん!」

「お待たせ、ユウヒ」

 

危険の正体。それは、赤のマントをはためかせ、ゴルゴーンのいた地面に右の正拳突きを見舞うコウであった。コウは、そのまま左手でエクスカリバーの柄を握ると、振り抜くように一閃。ゴルゴーンの下半身を、小さくも斬り裂いた。

そんな二人に、先制しようとゴルゴーンが襲い掛かる。しかし、それは、青い焔の斬撃によって止められた。

 

「はァっ!! くらえッ『火焔(カエン)』!!」

『グウッ⋯⋯!? ⋯⋯小賢シイ、小娘ガァ!!』

「はっ! 言ってろ、Sレート!」

 

ゴルゴーンの髪の毛、数匹の蛇が現れたレンカに襲いかかる。

レンカは、それらをアメノハバキリで軽く斬り捨て、ゴルゴーンに剣先を向けた。

 

「行くぞ! コウ、ユウヒ、背中は任せた!!」

「ああ、任せてくれ」

「了解!」

 

コウの肩を借りて、何とか立ち上がったユウヒは、短剣デュランダルを空中に召喚し、拳を握り締めて構える。

その姿を見て、まだ大丈夫かと判断したコウは、己もエクスカリバーを両手で構えて、ゴルゴーンの脚部を見据えた。

 

『小娘ドモガァ!!』

「はっ! いちいち、うるせえんだよッ!!」

 

全員、ゴルゴーンの顔だけを見ないようにはしているものの、それぞれが瞬時に対応する場所を決めて、攻勢に出る。

アメノハバキリの刃が、ゴルゴーンの腹部を斬り裂き、エクスカリバーの閃きがゴルゴーンの脚部、関節を狙い、二人への翼や蛇での攻撃をユウヒの指示で射出されたデュランダルが阻害する。

レンカは、ニヤリと笑った。

 

「くくっ、良い感じのコンビネーションじゃねえか! リンゼが抜けてどうなることかと思ったが、問題は無さそうだな!」

「僕も、意味無くエクスカリバーを引き継いだわけじゃないからね!」

『小娘ガァ、図ニ乗ルナァ!!』

 

ゴルゴーンの蛇から放たれた紫色のガスが、レンカとコウを襲う。

全く予想していなかったゴルゴーンのアクションに、二人は虚を突かれる。どうにかして回避しようとするが、遅い。

このままでは殺られる、二人がそう思った瞬間、赤の閃光がガスを呑み込んだ。

 

 

「『デッド・バースト』!!」

 

 

『新手カッ!?』

 

それは、赤いローブを身にまとった少女。

三人にとって、特にユウヒとレンカにとっては、よく知っている人物である。

 

「カノン! おせえじゃねぇか!」

「アンノウンさっと倒して、栃木から、ここまで最短ルートを全力で走ってきたんだけど?」

 

栃木から品川区までは130キロメートル前後ある。それを、走ってくるというのは相当だろう。

 

「ま、何はともあれ、心強いぜ。四人なら、こいつも仕留められるかもなッ!」

「当たり前。こんな蛇女、さっさと倒して私は帰りたい」

『ッ!! 死ニ晒セェ!!』

 

激昴したゴルゴーンが、レンカとカノンに向けて四足で駆け出す。その速さは、初動から時速200キロにも及ぶ。

突撃とほぼ同時に二人に接近したゴルゴーンは、前足でレンカを、後ろ足でカノンを蹴ろうとする。

 

「あめえんだよッ!」

「馬鹿にしないで」

 

しかし、レンカはそれをアメノハバキリで受け流し、カノンはダーインスレイブの腹で受け止めつつ、衝撃を少しずついなした。

 

「───『ファントムキル』」

「くらえよ、反撃の拳ィ!!

 ───『火砲(カホウ)』!!」

 

突如地面より現れた彼岸花、その一本一本が人の腕へと変化して、ゴルゴーンの脚部拘束する。

そこへ、蒼く燃え盛る、焔を纏ったレンカの右拳。剣から大鎌へと変化した、カノンのダーインスレイブの一撃が放たれた。

ゴルゴーンの身体が、蒼き炎で燃え上がり、ダーインスレイブによって右翼と右腕が切り落とされる。

 

「今が好機、かな⋯⋯!」

「みたいだね!」

 

それを見て、好機と判断したコウとユウヒの二人は、それぞれのギアを構えて、ゴルゴーンを見据える。

エクスカリバーの刀身が、二つに割れ、赤い閃光が刀身の付け根へと。ユウヒの指示で、数十本にも及ぶデュランダルが虚空へと召喚された。

 

「『エクス・バースト』ォ!!」

「デュランダル、シュート! ⋯⋯『デュラン・カーネイジ』ッ!!」

 

エクスカリバーから解き放たれた赤き閃光がゴルゴーンの左半身を呑み込み、射出され突き刺さった幾数ものデュランダルが、その刀身を増殖させてゴルゴーンの身体を突き破る。

苦悶の声を上げる間もなく、ゴルゴーンは身体中から粒子を漏らしながら、膝を付いて沈黙した。

 

それを見て、四人は警戒を払いながらも構えを解いて、集まる。

 

「⋯⋯ふう」

「Sレートアンノウンも、案外大したことない」

「コンビネーションアタック、成功! ⋯⋯ってやつだね!」

「ま、初の四人共同戦線にしちゃぁ、よくやれた方なんじゃねえの?」

 

四人のセイヴァーズは、口々にゴルゴーンとの戦いへの感想を言い合う。

 

「私達の中でも一番長く戦ってきたリンゼちゃんが戦えなくなっちゃって、コウちゃんが戦うってことになって⋯⋯でも、心配する必要なかったね! この感じなら、私たち、もっとたくさんの人を救えるよ!」

「確かに、この調子でやれるなら、アンノウンとの戦いも楽そう」

「⋯⋯僕も、頑張るよ」

 

ユウヒの言葉にうんうんと頷くレンカ。カノンも、それは考えていたようで、肯定の意を示す。

コウはコウで、そこまで言われたら、もっと頑張るしかないと考えて拳を握り締めた。

事実、レンカやユウヒの言う通り、今回の戦いが初めての、現状WayMark所属セイヴァーズ四人による共同戦線であった。そして、損害はあったものの、誰一人かけることなく討伐出来たのは、僥倖であったのだろう。

 

 

それが、油断を招きさえしなければ、の話ではあるが。

 

 

『⋯⋯ッ!!』

「ッ!? 危ない、ユウヒ!」

 

「へ?」

 

沈黙していたはずのゴルゴーンが、突如目を見開いた。丁度、その対角線上にいたユウヒは、いち早く気がついたコウの注意喚起も虚しく、ゴルゴーンと顔を合わせてしまう。

 

『顔ヲ⋯⋯合ワセタナァ?』

「まず⋯⋯ッ!」

 

ユウヒが慌てて顔を伏せようとするも、固定されているかのように身体が動かない。遅かったのだ。

ゴルゴーンの赤い眼が妖しく光り、ユウヒのセイヴァーギアが一瞬、眩く輝いて、変身が解ける。

セイヴァーギアに備わる、致死の攻撃を受けた時、残存レジェンダリーエナジーのその全てを防御に回す機能。これによって、並大抵の攻撃でセイヴァーズが死ぬことは無い。しかし、これが発動した場合、セイヴァーギアはレジェンダリーエナジーを喪失し、再充填されるまではギアを纏うことは出来なくなる。必然的に、セイヴァーギアによる変身も解かれるのだ。

 

鎧が砕け散る衝撃によって、ユウヒは意識を失ってしまう。コウは、一目散にユウヒの元へと駆け寄り、安否を確かめる。

 

「ユウヒッ!」

 

息はしている。気を失っているだけであり、目を覚ますだろう。だが、それが分かったところで、状況が好転するわけではない。むしろ、頭数が一つ減った分、かなりの無理を強いられることになる。

ほくそ笑むゴルゴーンを睨み付け、レンカはアメノハバキリを構えた。

 

「クソっ! まだ生きてやがったか!」

「想語さん、鏑木さんを連れて『誰モ逃ガシハシナイ!!』⋯⋯難しいか⋯⋯」

 

ゴルゴーンの身体、失われた両翼と両腕が、粒子をまき散らしながら再生される。

ユウヒを連れて逃げるように指示を出そうとするも、ゴルゴーンの手刀による一撃がカノンの言葉を遮る。何とか、飛び退くことで避けるが、掠った一撃がローブの裾を引き裂く。

ゴルゴーンは誰一人として逃がすつもりは無いらしい。

 

「僕も、戦うよ⋯⋯全員で、生きてアイツを倒すんだ⋯⋯!」

 

勇ましく宣言するコウ。

レンカは、それに応えるように笑い、カノンもダーインスレイブを構えた。

 

『先程マデノ“ゴルゴーン”トハ違ウトシレ、小娘共!!』

「ぐうっ!?」

 

その言葉の通り、先程までとは繊細さを欠くものの、その一撃一撃は、比にならないほどに重たく鋭くなった。

いなせていたはずの攻撃が、重たすぎていなせなくなったことに歯噛みして、レンカは回避に徹する。

コウとカノンも、どうにかして援護に入ろうとするが、容易に切り落とせていたはずが、刃すら通らなくなった蛇によって邪魔をされる。

 

「⋯⋯やられてばっかじゃ、ねえんだよ!!」

 

イライラを募らせたレンカが、アメノハバキリの持ち手を握り込むと、刃から青炎が噴出する。

 

「くらぇ、『火刃』!!」

『ソンナ温イ一撃、効カヌァ!!斃レ、セイヴァー!!』

「ぐぅあっ!!」

 

火刃による一撃すら、ゴルゴーンの表皮の一部を軽く焦がすだけで終わり、その返しの前足による蹴りを受け、強く蹴り飛ばされたレンカは、河川敷の硬い土の地面に打ち付けられ、数度弾んで止まった。

 

「レンカッ!?」

「想語さん! 才原さんを心配している場合ではないです! あの人は、強い人だから! この程度で、死にはしない!」

「⋯⋯カノン⋯⋯」

 

カノンの言葉に、レンカへの心配を一旦頭の片隅に置ける程度に冷静になったコウは、エクスカリバーを構えて、考える。

それを見て、カノンはコウにある提案をする。

 

「⋯⋯想語さん、私のデッド・バーストに合わせて、エクスカリバーの一撃を解き放ってください」

「⋯⋯わかった」

 

未だほぼ無傷の状態のゴルゴーン。それを見詰め、コウはエクスカリバーを、いつでもエクス・バーストが放てるように起動状態にする。

そして、カノンは、ダーインスレイブを地面に突き刺して、赤い眼を見開いた。

 

「『ファントムキル』!」

『無駄ダト言ウノガ、分カラナイノカ、小娘ェ!』

 

先程と同じく、人間の腕に変貌した彼岸花がゴルゴーンの全身(・・)に絡みつく。そして、鎌に変化した緋色の剣が、ゴルゴーンに振り下ろされる途中(・・)で、刀身が二つに分かれた(・・・・・・・)状態のダーインスレイブに戻る。

 

 

「キャンセル!! 『デッド・バースト』ォ!!」

 

「⋯⋯『エクス・バースト』ッ!!」

 

 

解き放たれた二つの赤い奔流が、虚を突かれた様子のゴルゴーンを呑み込み、その後ろにある川の一部をも消し飛ばした。

 

「やった⋯⋯?」

 

煙が晴れたそこに、ゴルゴーンの姿はない。

安堵から、コウがため息を吐く。コウの鎧も、カノンのローブも、色合いがくすんでしまっている。後、もう一度でも必殺技を放てば、エナジーが空になるだろう。

差し込んだ夕日が、辺りを照らす。

カノンは、荒くなった息を整えてから、レンカの方に向かう。

コウも、気絶するユウヒの様子を確認しに行こうとし、異変を感知して、弾かれたようにユウヒの元へと走った。

 

「───間に合えッ!!」

 

『馬鹿メガ⋯⋯マズハ、一人ッ!!』

 

 

ユウヒに覆いかぶさるように巨大な影が照らし出される。

 

次の瞬間、ユウヒと無傷のゴルゴーン(・・・・・・・・)との間に割り込んだコウの腹部を、ゴルゴーンの手刀が穿いた。

 

『僥倖⋯⋯マズハ貴様ガ死ネェ!!』

 

「うぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

鎧が砕け散り、致死量の出血液が辺りに撒き散らされる。輝きを失った空色の鎧片、破り裂かれた赤いマント。折れる聖剣。

 

 

 

そこで、コウの意識は途切れた。




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