それは寒い空で   作:もちもちねずみさん

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プロローグ

「寒中!」

 

去り際にそう言い放った友人と別れ、私は家路についた。

本日11月26日、世間では1月後だというのにクリスマスで賑っている。かく言う私も、この年で少年のように心が揺さぶられてしまうのだから、クリスマスとは全く恐しいものである。

 

アパートに入り、靴を脱ぎ、真っ先にベットに崩れ落ちる。

もはや目を開くのも気だるいので手探りでテレビのリモコンを探す。しかし一向に見つからない、どうやら腹に敷いてしまっていたようだ。

腹の辺りをまさぐってリモコンを取り出し、テレビをつける。すると深夜のニュースが放送されていた。

 

「今日の株価は~」

 

最近はアンドロイド産業が急成長している、なんでも隣国が人型アンドロイドを積極的に輸入しているというのだ。

 

隣国フォクス、15年前の戦争によって現在西と東に別れているこの国は、西は平和、東は内乱というように全く違う道を歩んでいる。そのため西フォクスは東西統一のために、東フォクスの内乱を治めるための軍隊を近々派遣するという発表を行ない、近隣国に恊力を呼びかけている。

アンドロイド先進国である我が国はフォクスへの最大の支援国でもあり、戦闘用アンドロイドのみに収まらず様々な人型アンドロイドを大量に輸出し、今アンドロイド業界はバブルと言ってもいい。もしくは戦争景気だ。

 

 ちなみに、アンドロイド先進国といっても国中にアンドロイドがうじゃうじゃしている訳ではない。多くは輸出、もしくは役所で働いている。アンドロイドとはいえまだまだ高値で、とても一家に一台とはいかないのだ。しかし、その性能は高いもので、企業でも人型アンドロイドが居るかどうかでその企業の格付けがなされる。

 

そんな最中なので世間の緊張も高まり、例年であれば派手なクリスマスCMがやっている時期であっても多くが比較的控えめなCMや見応えのない番組ばかりで、なんともつまらない日々を送っている。

 

 

 

詳しいことは知らされないがどうやら軍隊の派遣は12月2日、約一週間後に行なわれるようだ。

 

起きているのもつらい。もう今日は寝てしまおう。

 

 

 

 

 

「フランク!まだ間に合う!早く飛行場に引き返せ!」

 

「もう間に合わないさ、燃料が吹き出してる。なぁに機体は消耗品だ、パイロットが生きてれば大金星さ。

大戦果あげて帰ってやっから待ってろよ。」

 

「ここがどこだか分かっているのか!」

 

「スネークノーズ、説教は帰ってから聞くぜ

フランク、ベイルアウト!」

 

 

 

 

 

...ひどい目覚めだ。15年前の傷口がまだ疼く。

 

その日起きると首を寝違えていたのは言うまでもない。


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