異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
恐竜、巨大
とにかく地球に存在していたとすれば──獅子も虎も熊も象も敵わない──確実に野生における地上ヒエラルキーの頂点に君臨しているレベルの生物。
「まじっかぁ……」
そう吐き出すも、眼前に突きつけられた現実にいまさら戸惑うようなことはない。
異世界の非情さと人生の無常さは、つい最近の
魔物の
むしろわかりやすい見た目で、生態も察しがつくだけマシというものだった。
初めての実戦とも言えるが、今の俺にはほどよい緊張感だった。
既にバッチリと
「逃げ切れるか──」
何よりまず戦うことより
仮に打ち倒す場合でもそれは真正面からではなく、罠などを仕掛けて
俺は振り返りざまにその場から跳躍し、
「最適解を導き出せ、俺」
3メートル以上の高さに立った俺は、陸上竜を含めて周辺状況を観察する。
(背の高い木が多い。どうにか
瞬間、恐るべき速度で陸上竜の尻尾が飛んできたかと思えば、硬かったはずの土壁を豆腐のように破壊した。
俺の小さな体躯は、その余波だけでもろとも吹き飛んでしまう。
「うっく……ぉあ」
破片もろとも空中を
子供の肉体であったことが逆に功を奏し、俺はそのまま気配を最小限に身を
どうやら陸上竜は一時的に俺を見失ったようで、そこまで頭は良くなさそうであった。
すると地を
(っオイ待て、そっちは――)
陸上竜が向かったのは、少し離れて隣に鎮座している
そして同じように遠心力を
(クッソ……俺自身が危ないのに、他人なんて──)
俺は続く言葉を心で思うよりも先に握り潰した。
なぜならハーフエルフの半長耳には
──まだ生きている。どうしようもない状況で、小さな子供が泣いているのだ。
極限とも言える異常な状況での、
それともただ単に
「あぁそうだ、やっぱり無理だ。俺はもう……
心の中ではなく、はっきりと口に出して自覚する。
俺の隣からいなくなってしまった……幼馴染の少女フラウと重なってしまったのだ。
(我ながら学習しない? くっはは、上等だ)
今度こそ、上手くやれば、いいだけの話だ。
俺はパチンッパチンッ――と左右それぞれで指を鳴らしながら、足元にある瓦礫を蹴り飛ばして弾いた。
狙い通り、陸上竜はこちらを覗くように長い首を90度に傾け、「クアァ……」と大口を開け
俺は真っ向から相対したまま、両手でフィンガースナップを続けながら半眼で睨みつけた。
「獲物を前に舌なめずり、か。陳腐なド三流トカゲ
自らを奮い立たせるように、言葉の通じない獣相手に挑発をする。
ギュゥゥッと親指と人差指と中指を合わせ、個体にした大気を一枚の薄刃のように形成・圧縮するイメージ。
この魔術はさしあたり詠唱は
(
しかして
フィンガースナップと同時に、空属魔術の"風擲斬"が飛んだ。
空気にも重さがあり、窒素や酸素も液体化し固体にもなる。|薄く鋭利に、高速で射出し、真空で斬り断つようなイメージも足す。
しかし洗練されてないそれは……刃というより空気がわずかに
「いまいち……だけど白兵戦は
あれほどの巨体を相手に、生身で挑むなんてのは自殺行為である。
しかして何度も指を鳴らして連射するものの……強靭な鱗には傷一つ付くことはなく、大トカゲはゆったりのったり歩みを進める。
その間に俺は何発も撃ち込み、そしてそのたびに研ぎ澄まされていく。
火事場のなんとやら、
希望を抱け、期待しろ、思い込めばいい、魔術にはそれが"
自分自身にペテンをかけて騙し切れ。
(もうこれで終わってもいい……わけではない)
ただ本来の規格を度外視した
相対距離が狭まってきたところで、俺は魔術を
「集中──勝つ、勝ってみせる。
常に最強で最高の自分をイメージする、最適の動きを思い
「
剣豪同士の刹那の立ち合い──
フィクションでも数え切れないほど見た死闘の光景を、己自身へと落とし込め。
あの巨体と鱗を相手にどれだけ叩き込んでも、
多少は鋭くなって火力が上がった実感はあるが、それだけで決定打にはなりえない。
肉薄して"
となれば手札も、事実上"
間合いを考えれば二度目はない。"
「狙い次第だ……
俺は指を合わせた右手を前に、同じく左手を顔の横に持って
右腕とその指を"大トカゲ"と一直線上に──
銃の
「"手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に"──」
まるで
全開の集中。大口開けて突進してこようとする大トカゲの瞳を、俺の双眸はしかと
パチンッ──左手で撃った一撃は、大トカゲの右前足の出掛かりを潰し、ほんの
間髪入れず本命の右手で放たれた二撃目の"風擲斬"は、その
大トカゲは高く一鳴きすると、俺のではない鮮血を撒き散らせる。
突進する勢いのままに、俺の横を通り過ぎると木々を薙ぎ倒していった。
振り返り身構えるも、あっという間にその姿は見えなくなっていく。
「ふゥ、はァ……トカゲ呼ばわりは、さすがに
響いてくる音も次第に遠くなっていき、