異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「──今後もソレはしっかり伸ばしておくことじゃな、必ず役に立つからの」
「……一応は切り札なんで、言われずとも練磨し続けますよ」
「はっはっは! いい子いい子でもしてやろうかの?」
「いえ、結構です。それに……俺よりも若く、俺以上の領域にいる学園の後輩もいますし」
脳裏に浮かぶは、1人の少女──何を隠そう──魔鋼剣二刀流のケイ・ボルドであった。
円卓第二席たる"筆頭魔剣士"テオドールの門弟集団をあっさりと蹴散らした彼女こそ、真に天才と言える部類。
俺の場合はありとあらゆる
しかしケイは集中した分だけ、彼女なりの
その代わりに全力の彼女は
「なに、己を
なにやら実感の込められた一言であり、最も古い五英傑が語るのであればさもありなん。
「そうですね、死にさえしなければまた
それが武術の本質でもある。君子危うきには近寄らず……もし泥にまみれようと逃げ切ることこそ一番大事。
「
その代わり、生き抜く為に愚直に修練し続けたのが我が身の技術じゃて。
本当にナゼなのだろうか……不思議とシールフを相手にするような話しやすさがあった。
さきほどから地味に気になっていた疑問を、俺は童女へと率直にぶつけてみる。
「つかぬことを
「さてなぁ……ただこの地上で
「
黄竜も数えられる"七色竜"は、歴史においても断片的にしか語られない──竜と神族による"原初戦争"の頃から生きる存在。
神族は不老ではあるが魔力の暴走と枯渇に
本人の
「ちなみに七色とは全員知り合いじゃ」
「っはは……」
俺は乾いた笑いを肺から漏らしながら、アイトエルの話を信じるより他なかった。
黄竜とはぶっ倒した後にもわずかに話した程度だが、大昔のことなどほとんど忘れ去っていた。
それが普通なのであろうし、エルフ種1000年の寿命でも晩年は
「じゃが大して面白くもなく……あまり思い出したくもない過去ゆえ、詳しくは割愛させてもらうぞ」
「ご随意に」
(だけどこの人は……かなり覚えているっぽいな)
脳の記憶容量の限界はわからないし、あるいは忘却した箇所を脳が好き勝手埋めている可能性もなくはない。
いずれにせよ腐ることもなく、こうして活力
「さて──このまま問答を続けてもいささか無駄かのう、
「まぁ、そうですね。今の段階で明かせることだけ話していただければ十分です。それ以外はまた後日ということで」
むしろせっかく得た知己にして五英傑という最高の
「ただアイトエル……その前に一つだけ、よろしいでしょうか」
「なんじゃ?」
俺はゆっくりと覚悟を決めて、アイトエルへと質問を投げ掛ける。
「貴方は
それだけは聞いておきたかった、俺自身の
炎と血の惨劇に見舞われたあの幼き日より、幼馴染のフラウはまさしくアイトエルが紡いでくれた
そして実母であるヴェリリアについては……その生死すらも不明なままである。
あの惨劇以前に街を出ていたので、少なくともあの事件には巻き込まれてはいまいが──
「知っておる」
「っ……」
あっさりとそう答えたアイトエルはそこから先は
俺は表情筋や心音に至るまで、ハーフエルフの強化感覚を総動員して情報を拾い集積する。
しかして彼女から得られるものは……その言葉以外にはなかった。
「それも今は言えない、"いずれわかる"──ですか」
「いや、そこに関しては自分で突き止めることじゃな」
またも
(まぁ"突き止めろ"ということは、"少なくとも生きている"と見て良いだろう)
シップスクラーク財団は順調に拡充してきているし、その情報網はいずれ世界全体を包み込む。
不慮さえなければ、
「それじゃあ本題に入ってもいいかの」
「本題、というと──さきほどの
脳裏に灼き付けた死体の顔を、俺は改めて思い出す。
「まずはそうじゃな。奴らは利害によって結ばれた共同体──
「アンブラティ
俺は財団の情報部門から見聞き知った、数多くの組織の情報を脳内から発掘していく。
幼少期を過ごした神王教ディアマ派のカルト教団、"イアモン
世界中にそうした結社の
「トゥー・ヘリックス・クランは潰されて、もう存在していないがの」
「あっそうでしたか」
「ちなみにメテル協会は、
「まじすか……」
(秘密結社──"そういうの"も目指しべきところの一つではあるが)
"フリーマギエンス"の秘匿された不透明な部分で、人々に想像力を働かせる。
陰謀論が
「それでアンブラティ結社の
「
「えぇまぁ──」
それはそうだ。影も形もなかった。煙のないところで「火事が起こっているぞ」と言われたような心地。
そもそも本当にそれが俺に関係あるのかというところから、話を始めねばなるまい。
現実問題としてそんな秘密結社が存在するのか、実際に
故郷の街とその周辺をいくつか、焼き討ちしたという証拠も本来であれば必要である。
「世の中はそんなもんじゃ。軽重を問わず、多くの事態とはいつだって預かり知らぬところで動いておるもの。
ましてや世界中に多様な組織を作ってきた
「五英傑である貴方でも?」
「その通り。
アイトエルは広げた右手で顔を
「しかし結社について、"
「頼み、ですか。それが"とある情報筋"とやらですか……?」
「んむ、ぬしらの為にわざわざ
(財団にも"竜越貴人"にも察知しえぬ情報をもたらし、なぜだか俺たちの利として五英傑を動かす人物……?)
まったくもって心当たりがないし、むしろそのアンブラティ結社内部の人間なのではないかとも
下手をすれば罠だという可能性だって
「ちなみにその
「"
「……ッッ!? それは──」
俺は驚愕に言葉が詰まって、そして聞き返さざるを得なかった。
なぜならばアイトエルの"発音"は、連邦東部
はたしてそれは異世界言語ではなく──地球の"英語"のそれであったのだから。