異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
俺はどこか雰囲気を察しているジェーン、ヘリオ、リーティアに決意を伝える。
「俺は
すると言葉を
「いまさら、でしょ?」
「まったくだ。聞くまでもねえだろ」
「ねー」
俺はフッと笑いながら、目をつぶって噛みしめる。
「そうだな、愚問だった。信じてはいたが……やはり重要なことだから一応、な」
「それでベイリルには何か計画があるの?」
「一晩あるからウチが地下に穴掘ってもいいよ? 昔ベイリル兄ぃが話してくれたみたいな──」
「まぁ"大脱走"するのは悪くない案だが……」
リーティアならば実際に一晩もあれば、苦もなくやれてしまうだろうことが凄まじい。
「とりあえず
「そっかー」
「んじゃよォベイリル、どうすりゃいいっつーんだよ?」
「俺たちはほとんど、この箱庭の世界しか知らない。だからまずは情報を集める必要がある」
「集める? ということは……まさか本館にでも忍び込むとか?」
「あぁジェーン、そのつもりだ。
「危なくない? 結構人が集まってきてるみたいだし」
「俺一人でやるから、何も問題はない」
「ああ? オレらじゃ足手まといってかァ?
「そこまでは言わんが、
ヘリオの不満丸出しの言葉に、俺は
「……チッ、知ってるよ。たしかにオレらは隠れるの得意じゃねェし」
「ウチは不得意じゃないけどー?」
「
「なくてもやれるも~ん」
ヘリオとリーティアのいつもの言い争いがエスカレートする前に、ジェーンが末妹の頭を撫でて場を制す。
「まぁまぁ二人とも。ベイリル──」
名前を呼ばれながらスッと目配せされた俺は、ゆっくりと
狐人族であるリーティアの感覚器官は頼りになるが、彼女の魔力を浪費させるわけにはいかない。
「いざとなった時に、地中潜行脱出も考えられるからな。だから温存しといてくれ」
「わかったー」
「聞き分けがよろしい。ありがとうな、リーティア」
素直にうなずく末妹の頭を、ジェーンと一緒に俺も撫でてやった。
「ベイリル一人がやるのはわかったけど……私たちは備えていればいいの?」
「準備だけは万全に。場合によっては……
「どうゆうこった?」
「この
俺が言い
リーティアは特に表情が変わらず、ジェーンは不安そうにやや眉をひそめる。
「それは……追手が差し向けられないように、ってこと?」
「まっ厄介事の種は処理しておくに限るからな」
逃げた俺達は
"
ならばいっそのこと本拠地もろとも崩壊させるという選択肢も十分に存在する。
「あー……殺して
「いやそこまで
「セイマール先生は? どうするの?」
「もしも立ちはだかることがあるなら、覚悟はしておいてくれ」
真剣な眼差しで三人はうなずく。どんな形であれセイマールは恩師である。
もしセイマールに買われなければ、四人は出会うこともなく……。
それぞれが
◇
夜中から朝方にかけて俺は本屋敷の方へ、
今は"巡礼"が重なっているおかげで、普段屋敷にいない
そういう意味でも時機は好都合であった。
屋敷内の配置も長い時間を掛けて少しずつ探索を重ねてきて、ある程度は把握している。
(俺が誰なのか確認しようとする
とはいえ長引けばそれだけリスクも跳ね上がっていく。
ゆえに目指すべきはまず一つ、"最も偉い人間の部屋"であった。
魔力強化を聴力へと集中させ、慎重に索敵しつつ進んでいく。
正確な位置はわからなかったが、わかりやすく
(道士が一人でいれば……ある意味そっちの
部屋に立ち入る前に索敵したが、部屋には誰もいなかった。
道士から力づくで情報を聞き出して、口封じをするとか──
道士を拉致・監禁して、いざという時の交渉材料にするとか──
道士を内部の犯行に見せかけて殺し、分裂・崩壊を誘うとか──
寝室はまた別にあるので、そこに忍び込むこともできなくはないが……無用なリスクは
(まぁいい、求めすぎはよくない)
俺は
この場所は【連邦西部】の
次に目に
(
それは俺達を育てる為の、履行計画書のようなものだった。
どういう方針で何を重点的に、段階的な育成を事細かに記したもの。
「っこれは……」
思わず口に出しながら、俺は顔を
そこにはこれから俺達が
(【皇国】への
洗礼時にまず"
さらには"情報を明かしたら死ぬ"、という追加契約も
("契約魔術"……内容がだいぶ酷いな)
いやだからこそ今まで、かなり自由奔放に育てられてきたというわけなのだろう。
より複雑で相手に強制する契約ほど、相手の確かな"理解"と"同意"が必要となる。
子供の頃から奴隷のように契約する場合、その精神を縛り付けてしまう。
それでは諜報員としてはまともに育たなくなるし、洗脳教育を施した上で、スムーズに契約できるであろうこの時を待っていたのだ。
(それが結果的に、こちらにとっては都合が良かった)
まず俺が転生者であり、子供の精神性を持っていなかったということ。
そして
(ふんふん、なるほど。子供の立場を利用して、皇国を内部から
契約魔術が執行され、
その前段階を見極め、虚を突く形でこちらから奇襲を掛けたいところである。
「なんにせよ、選択肢は一つっきゃないな」
つぶやきながら己のすべきことを取捨選択していく。
一度交わしてしまった契約魔術を解くのは、
洗礼それ自体が、絶対に
役立ちそうな資料を探し続けている内に、俺は"イアモン
そうして目を通していく内に、おぞましいカルト教団の真実の一つに辿り着いた。
(俺たちは……幸運だったということか)
そこには"魔法具"と、その為の"調整"に使われた者の
それもまたセイマールの字であり、彼は魔術具に関してかなりの
専門用語が多くわからない部分も多いが、
その過程で多くの苦痛が
俺達4人もまかり間違えば――庇護下に入ることを断っていたら――実験体として消費されていたのだろう。
洗礼を拒否した場合でも……今からでも被検体にさせられるかも知れない。
──それ以外にも
俺の中にあった常識では、理解できる許容量をとっくに超えている。
そして裏切った際に、連中がどういう出方をするかも既にわからなくなってしまった。
別に善人ぶって正義感を振りかざし、ヒーローを気取りたいわけでない。
ただ一個人として、
なによりもただ単純に──
「俺がこれから
予定は変更される。少し甘く見ていた。結局のところ、連中はどこまでいっても狂信者の集団。
すべからく
(
心を氷点下へと持っていく。それどころか絶対零度もかくやというほどに冷やす。
そうして俺は、まるで自分自身に宣誓するように言葉を口にする。
「覚悟完了──