異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
俺が"遮音風壁"を
「アイトエルさんは~?」
「もう帰ったよ、
気付けば3人と1匹に混じってさらに、犬耳がフードより少しはみ出ている女性がそこにいた。
「"クロアーネ"、いつの間に」
「特秘連絡事項がありましたので……私が直接来ました」
「あれ? まだ情報部の仕事やっているのか」
「色々と落ち着くまで、です。それもこの仕事で終わりでしょう」
「そうか、まぁ会えて嬉しいよ」
「うん? う~ん~?」
反射的に発してしまった俺の返しに、フラウが
「前に興味ないと言ってはなかったかね~? ねぇベイリルぅ~?」
「まぁ胃袋を掴まれてしまっては、
「
素直に認めるもクロアーネの反応は否定的であり、俺は笑いかけながらさらに付け加える。
「それ以外にも魅力はいくらでも
「不要です」
スッパリと断じたクロアーネに、俺は肩をすくめてフラウへと目配せする。
終始こんな調子であることを察したフラウは、うんうんと納得した様子。
ハルミアは微笑ましくこちらを見ていて、キャシーはやや呆れた表情を見せていた。
「それでクロアーネ、特秘事項ってのは?」
「……"アーセン"の所在が判明しました」
クロアーネは一瞬言うべきか
またその内容も財団に直接関わるような重大なものでもなかった為、普通に内容を通達する。
「ようやく見つかったか」
「アーセンって誰だっけ? なぁ~んか聞いた覚えはあるんだけどなー」
「個人的なやり残しだ。"イアモン
奴隷として買われ、馬車に揺られ、刷り込み洗脳の為に石牢に閉じ込められたあの日。
そこから解放時に教師セイマールと共にいた元教え子。俺達より前の、最初の生徒だった青年"アーセン"。
以後まったく接触を持たないまま育ってしまったので、顔はそこまで覚えていなかったのだが……。
シールフの読心の魔導による記憶走査のおかげで思い出せたので、兼ねてより調査してもらっていた案件の1つ。
故郷の土地やアイトエルに続いて、昔からの
(なんにしても忘れた頃に"
他の有象無象の教徒であれば、俺達が
ゲイル・オーラムが防波堤となって、そこで情報が一度途絶えるようになっている。
また
しかしアーセンだけは
(
アーセンの優秀さはセイマールが授業の合間に、まるで自分の自慢話のように語っていたのをよく覚えている。
能力も高かったようであり、セイマールからもかなり信を置かれていた男である。
アーセンだけは明確に
そうなれば
「
「そこに
スッと
「
「あぁ既に聞いてたか、ちなみにそいつは
「つーかどーすんだよ
言いながらキャシーはつまさきで死体を持ち上げる。
まだ目に見えた腐敗はしていないものの、匂いが鼻腔に届く限りだと時間の問題ではありそうだった。
「どうですか? ハルミアさん」
「ベイリルくんが話している
「なるほど……それじゃぁ、アッシュ──」
「クルゥァ」
名を呼ばれた灰竜は地面から飛び上がり、俺が教えたハンドサインを見て取ると
二つ名しか知らぬ男が
灰竜アッシュはそのまま俺の肩へと着地するとマフラーのように体をくるめ、俺は「よくやった」と頭を撫でてやった。
幼竜も随分と賢くなってきたもので、しつけを通り越して普通に学習させる段階に入ってきている。
しっかりとこちらの感情を読み取って、適切な
「あれ? ベイリルのことだから、てっきり持ち帰って財団で調べるとか言いそうなのに?」
「とある事情があってな、証拠を残すとマズいかも知れん」
「どういうことでしょう?」
俺はどこからどこまで話すか、
「まず
「へ~……」
フラウの眼がわずかに細まる。つまるところ復讐はまだ終わってないということ。
炎と血によって塗りたくられた故郷の真相についても、未だ不明瞭なままだ。
「アイトエル
「多方面ってなんだよ?」
「直近のインメル領会戦でも関わっていたらしい。財団の情報にも引っ掛かってない──よな? クロアーネ」
「……そうですね、アンブラティという
クロアーネは平静を崩さず答え、フラウは目をつぶり、キャシーは露骨に眉を歪めていた。
ハルミアは顎に指を添えつつ、さらに迫った疑問をぶつけてくる。
「具体的に、どの程度まで関わっていたのでしょう?」
「魔薬の流通に関しては、ほぼ間違いないようです。さすがに伝染病までは不明だそうでしたが……。
なんにせよ王国軍のインメル領侵攻を誘発させた遠因の一つに、アンブラティ結社が噛んでいたという話です」
「なるほど……んー、そうですかぁ」
ハルミアはしばし考えた様子を見せ、俺は気楽な心地で口にする。
「まっそう心配することはない、シップスクラーク財団とフリーマギエンスなら大丈夫だろう」
なんなら財団の"仮想敵"としては丁度良いとすら考えている。
確かに恐れるべき相手には違いないが、新たに財団は賠償金と領地と人材とを得た。
内部から
なによりアンブラティ結社の、
(
より盤石で隙のない体制を確立し、情報関連に
どうせなら