異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「ほう……同郷がいるとは思わなんだ」
返された言葉を俺はしっかりと呑み込む──すなわち、同じ"異世界転生者"との初めての
「
「違う。詩もね、好きなんだ」
(アイトエルは転生者を俺しか知らないと言っていたが……やはり、同時代にもいたか)
地球からやって来た"異世界転生者"──本来ならば交流を重ね、是が非でも財団に取り込むべき相手。
(そして真の意味で互いを理解し、分かち合える存在……のハズだったんだがな)
しかして眼前の男は、決して
こんな形で同じ転生者と相対したくはなかったとさえ……さながら不意討ちを喰らったような心地。
「不必要な殺しをやめろと言っても……無駄だよな」
「キミも似た匂いを感じるのだが、他人に指図できる立場なのかな。新たに
「──確かに、本質的には変わらないだろうな」
「ではワタシはキミに責められる立場にはないわけだ」
「あぁ勘違いしないでくれ。別につらつらと綺麗事や御託を並べるつもりもない」
「それはつまり……そうか、よくわかった」
「察しは良いようで──」
ギチリッと俺は筋肉を引き絞ってから
「危険分子は排除しておく主義なんでな」
「ふむ……
「やってみろ」
俺は
双瞳を見開いて集中を持続させたまま、いつでも"天眼"を使える状態に自身を置いた。
「ただ、
いけしゃあしゃあと抜かす"
「あいにくだがお前に
俺の右手の人差し指から、螺旋状に回転する風が渦巻き始める。
トロルすら殺し切った"
「乱暴だな。あまり気はすすまないが……そちらが来るというのなら──これもまたせっかくの機会なれば、その"死に目"を味わわせてもらおうか」
「あぁ、
"天眼"──刹那の
しかし
同時に伸ばされる
それは俺の心臓に最短距離で
「ふむ、キミはワタシを傷つけることなどできないが……どうやらワタシも、キミには
(幻像でも幻覚でもないッ──!?)
天眼は間違いなく
「"物質透過"──"
俺はパッと思いついたモノを列挙し、疑問として
「気にしたことはない。ただ
「なにをだ」
俺は少しでも状況を打開すべく、情報を引き出す為にそれとなく話に乗る。
「人には数多くの
関係性を深めて、歩み寄ってもらうのを待つのもいいだろう。無理やりこじ開けて、中身を覗き見るのも悪くはない。
しかしもしもだ……
特段の答えらしい答えではなかったが、
(いずれにしても……魔術の域を超えている)
"読心の魔導"と同じ──物理現象によって立つことなき、超異能の領域。
同時に"天眼"によって知覚する魔力密度もまた、"魔導"であることを心で
そしてもう一つ浮かび上がった疑問を、俺は問い
「なぜ
まったく"性質の異なる魔導"を、2種類持つことはできない。それは創世神話の時代より生きるアイトエルでも無理だと言っていた。
なぜならば魔力の色の固定化にも付随することであり、魔導師でない俺でも不可能であると直観的に悟っている。
シールフの場合は"読心の魔導"を基点にして派生させ、あくまで元の魔導に連なるものである。
「はて、そういったことには
「はァ~……
俺はさも溜め息のように吐きつつ、"酸素濃度低下"の魔術を仕掛ける。
しかし死域にあっても
「嘘を見抜けるとでも言うのかな、キミは」
「ある程度だがな。でも別にいいさ、なんでもかんでも正直に答えてくれるとは思っちゃいない」
「ではキミの前では、なるべく正直にいるとしようか」
少なくとも意識的に発動しているタイプではないのだろうか。あるいは今もそういう状態を持続させているだけか。
呼吸すら透過していて生きていけるのか。普通に喋っているのを見るに、悪意あるそれを選び取っているのか。
『ゼノ、"魔導具"なら二種類はありえるか?』
俺は
意図もしっかりとわかっているのか、ゼノも俺にだけ聞こえるような小声で答える。
『断言は控えるが、まず無理だ』
『ってことは何かカラクリがある、か……』
『おそらくな』
外付けで自由に使える"魔術具"と違って、使用者に紐付けされる性質が"魔導具"にはあるという。
それは魔力を通じて、魔導具と
つまるところ魔導具は一人一つであり、魔導師に魔導具は使えない。
「さて……ワタシはキミの心臓にだって直接手に掛けることができるが、そもそも捕まえることができない」
「──俺はあんたに命中させることは容易だが、干渉することができない」
「つまりキミにワタシは殺せないし、ワタシもキミは殺せない」
「……そのようだ」
"変身の魔導"まであっては、顔を覚えても意味がない。しかして
何がなんでも殺しておくべきではあるのだが、あまりに
(魔力を消耗させて、魔導それ自体を使えなくする策もあるにはあるが……)
魔導を二種類も使うような、既知外にいる相手の魔力量もわからない。
「では今は出会いにのみ感謝し、この場はお互い去ることとしよう」
日常の一コマのように調子を崩さぬまま
「いやにあっさりだな」
「言っただろう? 今は
「
「そうだ。自分は死なないと思ってる立場の人間を、少しずつ
しかしその内の一人の死体が見つかり、片割れが行方不明となっていた。もはや組織間の抗争が目に見える結果となった──」
(もしや……俺が殺した"黒豹兄弟"か)
ともすれば巡り廻って、俺が
「おかげで今回は必要以上に満ち足りてしまっている。この街に留まる理由も既にない、失礼させてもらうよ」
「そうか……
そんな俺の言葉に対して、
今の状況で争うべきではない、
「あぁそれと……
思わずそう口にしてしまったが、俺は少し軽率だったかとすぐに思い直した。
仮に結社の人間であるならバカ正直に言うわけもないし、そうでないなら不用意に情報を漏らしたことになる。
しかし
「あぁ……そういえば
「っ──結社を知っているのか」
「本人は"
俺は眼光を
「そうか……殺した人間のことはしっかり覚えているんだな、サイコパスの割に」
「なるべくだがね。物覚えは悪くないほうだ」
「俺たちは名乗りすらしないがな」
「一向に構わない。人は流れのままに、思うままに、生き、死んでいく……また次に
別の街か、あるいは別の国か、はては
言いながら若い女性の姿へと変化した