異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
真上に宇宙と、真下に天空を望む……成層圏を越えた中間圏。
超高高度の境界線上で浮遊しながら──俺はゆっくりと夢想する。
「今なら……そう難しいことだとは思わない」
"魔導"──異世界に存在する魔力を
任意全能の魔法より始まり、劣化した魔術として体系化され、さらに異能たる魔導へと至った異世界魔法史。
「新たに進化の階段を
ほとんど大気もないような空間だが、俺は"
喋ればそれは声として発せられるし、無意識で制御している魔術は思考も循環も
「文明と発展はいつだって
動機を得て、
そうやって知識と経験を積算し、具体性を持たせることで──人は要不要を選別して進歩してきたのだ。
魔力と魔法についても一つの学術分野であり、系統化していくテクノロジーの一端とも言える。
("天眼"──)
"風皮膜"を張ったまま空間へと自身を
ハーフエルフに生まれ、地球の知識と、転生前から明晰夢で鳴らした妄想具現化力。
記憶に入り込んで頭の中身を再現するシールフの魔導。そして直近におけるアイトエルからの教授と実践。
フラウ、ハルミア、そしてヤナギとの魔力交流──俺は恵まれた環境にある。
「そしてなるべく
もしも若返ったならどうするか、誰もが思うことの一つだろう……今度こそ"自分を磨き上げる"ということ。
よく食べて、よく運動し、若いからこそ無理が利く様々なことに挑戦する。俺はこの世界で生き残る為にも、心がけて
努力は好きではないが、魔術は苦のない努力だった。楽しんでやってきているし、今も楽しみで仕方がない。
だからこそ魔導の領域に至れないとは……
どのみちそうしたネガティブイメージは
既に魔術士としては上から数えた
(それに……異能のイメージなら、現代娯楽で散々っぱら見てきているわけで)
地球の
同時にそうしたファンタジーへの憧れも、日本という現代社会に生きながら私生活で考え続けてきたことは否定できない。
(実際に俺が使う魔術は、
それこそが異世界の現地人にはない、俺にとって最大の
神話の時代より人類文化が歴史の中で生み出してきた、
大いに
それを異世界という現実で再現する
むしろ誰よりも俺は魔導に至れる境遇にあるとさえ言える。いつまでも
「"
強めに言葉としてその名を吐き出す。
俺と同じ"異世界転生者"──奴も地球の知識を持っていて……そして一足先に"魔導"へと至っていた。
(
奴が一体何歳なのかは知らないが……同じ転生者である
そしてあの危険な男に対抗する為には、俺自身も魔導師になるしかないのだ。
「強く追い求める動機が……よもや同じ世界からやってきた敵対者に対するカウンターとはな──」
自嘲気味に心中で笑ってしまう。思ってもみなかった因果にして皮肉。
しかしこれもまた、決意を固める良い機会だったのかも知れない。
魔導とはその特性上、たった1つしか持てない自分だけの
そして使いたい能力の案はいくらでも脳内に転がっている。
なるべく
実際問題としてシールフが今なお成長の途上であるように、雛型を定めてから少しずつ拡張・造形していくのが望ましい。
やり直しのきかない魔導の領域において、見通しを甘く固定化してしまうのはよろしくない。
俺は徐々に内部で魔力を加速させながら、循環する流れを意識する。
(アイトエル……いや、初代魔王は魔力を"色"と
色というのはそもそも波長の違いを、瞳によって捉えているに過ぎない。
空が青く見えるように、夕日が赤く見えるように、虹が鮮やかに見えるように……。
(魔力で強化したハーフエルフの視力は、本来の可視領域外である赤外線によって、夜でもよく見えるし……)
魔力の色についても同じことが言える可能性は十分にある。
未知の粒子とエネルギーによって成り立っていて、さらに本質的に突っ込んでいくと波の一種ともとれるのやも。
いずれにしてもイメージを構築する上で、色というのは非常にわかりやすく飲み込みやすい。
その際に重要となるのが濃淡であり密度であるということも、今の俺は直観的に理解できている。
「問題は……魔力色の"固定化"ってのが
溜息のように吐き出す。アイトエルはああ言ったものの、俺の中でいまいちしっくりとこないのだ。
(そも──これまでも今現在も、魔力を"粒子"として見立てて加速させてきた俺にとって……)
魔力を固定化して濃く
それは俺やフラウが
(だからこそ導き出した、たった一つの冴えた
加速・循環を
「名付けて──"
元々粒子加速器をイメージして、
その発想を少しだけ転化し、改良・発展させるだけでいい。
すなわち比重の違いを利用し、高速で回転させることで溶液中の物質を分離させる"遠心分離"。
それを体内で
(濃縮分を魔導に使い、上澄み分を魔術として使う……まさに一石二鳥のやり方)
俺は魔力の加速分離をも意識しながら、並行して理想の魔導を頭の中で形作っていく。
今まで得てきた経験の数々と、知識を総動員するように整理し羅列していく。
("天眼"を得て再認識させられたのは……)
典型例となる"
つまるところ歩くとか、物を掴むとか、食べるといったように、一定まではプログラム化して
ジェーンが歌によって氷の武器を複数同時に操るように、独自のアルゴリズムでルーティーン化を
リーティアのアマルゲルよろしく、自分にできないこと、イメージしにくいこと、リスクのあることは任せてしまえばいい。
(
呼び方は様々、形も色々。歴史における文化圏で多様に存在した考え方。
(そうだ、風は遍在する……独立し、分担し、共有し、連係する、俺自身の
何者にも負けない──たとえば"折れぬ鋼の"のような──極限にして無敵の俺を想像し……創造する。
幽体ないし体外離脱。アストラル体による分離。外付けで自由にカスタマイズできる
「"もう一人の
くるくると腰のホルスターから抜いた左のリボルバーを、自らのこめかみに当てて
左の初弾には"浮遊石の小欠片"を鉛で包んだだけの
双瞳に映る"片割れ星"──世界中で今もっとも俺が近いだろう──
いつの日か……あの星にまで行く機会を得られるだろうか。
人類が
第2章はおしまい、次の3章で四部の最後となります。
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