異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「……暇だから
風竜の背に乗って、
「ボクは
「緑は地上に干渉しなさすぎなんだよ。いったい何千年
「だって面倒じゃん。地を
そんな言葉を体現するように、緑竜は飛行しているというよりもただそこにいる感じであった。
まさに風の化身と言った様子で、飛ぶという意識すらなく飛んでいる印象を受ける。
「ベイリルちゃん、どうする? 休みたいなら休んでても、わたしはどっちでもいいよ」
「とてもすごく興味があります」
五英傑の一人たる"竜越貴人"アイトエルとの会話にしてもそうだったが、神話や伝承で断片的かつ不完全でしか知られていない時代の話。
それを当人達の口から、当時の出来事として聞けることは、何物にも代え難い価値があろうというもの。
「よーし、じゃあ最初から語ろうか──」
俺は心の中で正座して、全力で静聴する姿勢を取る。
その語り口は幼少期に母ヴェリリアから、物語を読み聞かされたことを想起させた。
「世界にとある一頭の竜がいた。名は無く、誰よりも
「ねぇ白、それボクらが知らない話では?」
「いいの、"頂竜"本人から聞いたやつだし」
緑竜の茶々入れに気を取り直して、イシュトは話を再開する。
「その一頭の竜は己の"
「それがボクらだね」
(七色竜が純血種とも呼ばれる
頂竜から直接的に生みだされたの
「誰ともなく"頂竜"と呼ばれた竜と、わたしたちの
「平和だったねぇ、あの頃は──」
「そうして様々な動植物が過ごす中で、ヒト種が新たに
「魔法を使う──
「そうそう。竜種にも争いはあったけど、秩序をもって決せられた。でもヒトはそんなのお構いなしだった」
俺は何気ない気持ちで眼下に映る"それ"についても聞いてみる。
「ちょうど今見える、"頂竜湖"もその頃にできたんですか?」
ワーム海には数歩
"赤竜特区"もこの湖に面していて、帝国だけでなく連邦西部・皇国・魔領とが接している場所。
「あーーーそうだね、アレやったのはヒト側だけど」
「そうでしたか、ではただ単に
「うん。頂竜は世界も好きだったから、極力だけど破壊しないようにしてたし」
「……なんというか祖先が、すみません」
エルフも人族も魔族も──人型の種のほとんどが元を辿っていけば、神族から派生した種族。
「あっははぁ、そんなの気に
獣の王とも呼ばれた頂竜が率いし竜族と、後に初代神王となるケイルヴが率いし
イシュトは笑い飛ばしたが、まさしく想像を絶するほどの
「本当にイロイロとあった。アイトエルもその頃に生まれて──まっここらへんは本人の口から聞いてね」
「私的なこと、ということですか?」
「そそ、わたしから勝手に言うのは
またいつか、近い未来か遠い未来かはわからないが……"竜越貴人"とは会える日は来るだろう。
そしてその時に世間話の機会に恵まれたならば……突っ込んで聞いてみようとも思う。
「──えーっと、それで……ヒトが増えてくにつれて
「獣ばかりか"竜を
そう心底から吐き捨てるように緑竜が言う。
「まっ、ね。対抗したり真似をしたり、お互いに疲弊していても……もはや引くことは叶わなくなっていた。だからヒトは
「先に、選ぶ……?」
「
「とんでもない話ですね」
しかしそんな神族を差し置いて、イシュトが史上最強と語るのが"大地の愛娘"ということに戦慄を覚える。
「それで迷って悩んで……竜族は新天地へと向かうことにした」
「新天地、ですか?」
「そう、ここではないどこか──こことは違う"別の世界"へ行くって」
(別の星じゃなくて、別の……つまり異世界? 地球──には来ちゃいないし)
地球に存在していたら大騒ぎどころではない話である。
まさか太古の恐竜が、実はドラゴンだったなんてこともあるまい。
並行世界や多元宇宙よろしく、世界は無数に存在するのかも知れないとも。
「……なあ白、それって
「えっ──と……誰だったかな。改めて考えてみると、そもそも竜族にはありえない発想だし……あれぇ~?」
「別世界への道を開くなんて"秘法"もない。でもたしかに多くの竜族が、見知らぬ土地を求め旅立ち──そしてボクらは残った」
「うん、それは覚えてる。でも誰が言い出して、どうやって行ったんだっけなぁ」
イシュトと緑竜は揃ってうんうんと
それはただ単に忘れているというわけではなく──なぜだか抜け落ちているような様子に見える。
赤竜や黄竜ならばあるいは覚えているのだろうか。
(アイトエルが既に生まれていたそうだし、そっちに聞くのが手っ取り早いか)
なんにせよ
そういったことは無いようなのは、ある意味安心であろう。発展の中途で相争う事態は避けられる。
(もっとも種族としての気性傾向を見るに、あるいは共存できるかも知れんが……)
赤竜と火竜と竜騎士の関係のように──とはいえ
もしも"文明回華"を
そうした不穏な
「イシュトさん、竜の秘法でも存在しないということは……協力した
「そうなるのかなぁ、なんで覚えてないんだろ」
イシュトが首をかしげたまま、緑だけがグッと顔を
「おいおい、ヒトよ。話しかけるなって言ったのはボクだけど。そうやって露骨に
(理不尽な……)
そう率直に思いつつも、俺は素直に謝罪する。
「機微を理解できず申し訳ありません」
「無茶苦茶だよ、緑。謝ることないからね、ベイリルちゃん」
「仕方ないから今は発言を許す、ただし舐めた口は聞くなよ」
「承知しました。なんとお呼びすればいいのでしょうか」
「
すると十数秒と緑竜は沈黙してから、白竜イシュトへと
「えーっと、俗世でのボクの人名なんだっけ」
「たしかぁ──"グリストゥム"だったよ」
「それ、そう! ……だっけ? まぁいいや、じゃあそれで」
「はい、グリストゥムさん。竜の秘法でないのならば……人の魔法ならば異空間移動も可能だったのではないかと」
「知らない!!」
「……はい」
俺はその無体に対しても、ただただ