異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「
其の大いなる
不義不忠の背信なれど、この身にて体現せし日輪は──あまねく
それは空気の屈折率を利用し、光の
すなわち魔術によって空気を歪めて凸レンズのように形成し、集約点の幅を大きくする為に何層も段階ごとに縮小し、重ね、展開させた。
「名付けて、空六柱改法──」
俺は挙げていた両手を、勢いよく振り下ろす。
「"天道崩し"」
遥か天空から集積された太陽光は、一筋の
それは純粋なる物理光であって、魔術が介在するのは空気で作った凸レンズのみ。
であればそのエネルギーはほぼ100%、闇黒によって減衰されることなく
大空隙を真っ直ぐ
その黒き声を聞いた黒竜教徒達は、瘴気を浴びながらも一箇所に集まり出すのを眺めつつ──俺は冷静に手応えを確認する。
(ガンマレイ・ブラストよりは扱いやすいが……やはり、威力はかなり劣るな)
歪光空気レンズは光線の負荷ですぐに割れて霧散してしまったが、
あらかじめ準備して
「なんで
「いやぁ、我ながら上手くやったかと。詳しくは後で説明しま──って、あーあー……」
絶望と歓喜が入り混じるような狂乱状態で、黒竜教徒らは心身で打ち震えるように
「あれだけの濃度に
"闇黒"によって精神汚染すら引き起こされるという、今まさに眼下で展開されている光景。
おぞましいと思うよりも先んじた俺の全感覚が、
「ベイリルちゃん──っちょい、離れたほうがいいね」
「っ……はい」
俺はアッシュを
そうして大空隙から現れ出でたのは──黒き鱗に黒き翼を広げた、闇黒を
俺は安全圏を保ちつつ「まぁ、本望だろう」と
「わたしも負けてらんないな!」
そう口にしたイシュトの人差し指から、"小さな光球"が出現していた。
それを見た俺は一瞬にして総毛立つ心地にさせられ、恐る恐る聞いてみる。
「なっ……んなんですか、それ──」
「これはわたしの光輝を
普通の魔術ならば消滅する、なら減衰したところで届くくらいの出力にすればいいじゃない。
"
それを
眼が一発で潰れるであろう明度すらも集束させたイシュトは、いつの間にか黒竜の直上へと一瞬で移動していた。
「ひさしぶり、
イシュトの声は黒竜の地響くような
優しげな笑みを浮かべたまま、イシュトは光球から"光閃"へと変えて撃ち
さらにイシュトはその状態のまま光速機動に移り、線は無数の
イシュトが
「
俺がそう吐き出した数瞬の内に光は消え失せ、巨大な光の残像と共に黒竜の咆哮が大気をもう一度震わせた。
「いやぁ~やっぱ難しいね、鱗は貫けてもその先がきつい」
最初からそこにいたかのように光速で隣に立って話し掛けてくるイシュトに、俺は率直に疑問をぶつける。
「あれほどの光輝でも効いてないんですか」
「肉体内部は最も濃縮された闇黒みたいなもんだからね。貫いた瞬間、一気に消滅させられてるっぽい」
「……つまり半分"現象化"しているようなもの、だと?」
「ベイリルちゃん、ソレなかなか言い当ててるかも」
俺は闇黒を撒き散らす黒竜を見据える。直撃させたハズの"天道崩し"のダメージも見受けられないということは単純に火力不足。
そしてイシュトの"光閃"でも無理ならば、つまるところ強力無比な魔術も効かないということを意味する。
「それに案の定、完全に正気を失っちゃってるから……わたしにも気付いてないし」
「誘導、できますか?」
「どうだろう、このままだと大陸中を暴れ回りそう。赤に怒られるかな~」
(怒られる程度じゃ済まない気がするが……)
「まぁまぁ、もうちょっとイケると思ったけど以前より大分ヤバくなってるね。う~ん、どうしよ」
その
そして"魔獣メキリヴナ"も可愛く見えるほどの
(アレを打ち倒すのは不可能だな、フラウでもオーラム
魔王具を扱う三代神王ディアマですら討伐しきれなかった、"魔竜"とまで呼ばれし黒き大厄災。
「おいおい
ともすると人化した緑竜グリストゥムが、呆れ顔で並び飛んでいた。
「どうしよっかぁ、緑」
「ボクが知るかよ!? 白は昔っから甘いんだよイロイロとさ」
(確かに……俺も見通しが甘かったな──)
黒竜はこのまま狂気の内に暴れ回り、大陸を闇黒によって汚染させていくかも知れない。
"折れぬ鋼の"に連絡が届いて駆け付けるまでに、皇国にどれだけ被害が及ぼされるだろうか。
"無二たる"カエジウスとて願いを聞き届けてくれるかも怪しく、そもそも特区まで向かうのに時間も掛かり過ぎてしまう。
(いっそ"大地の愛娘"の
シップスクラーク財団で対処するには、黒竜の強度はあまりにも超越している。
魔術を無効化され、同士討ちの危険性も
規格外に対抗するには、やはり同じ規格外を連れてくる他ない。
「まったく……白も黒も本当にしょうもない。
「えっ? どうするつもり?」
「総出で止めるしかないだろ、黒をさ。正直それで止められるかもわからないけど」
「緑って、なんだかんだでイイ奴だよね」
またとんでもないことを言い出した緑竜の視線が、俺へと向けられる。
「そういうワケだ、おいヒト……
「っと、それは……さる事情がありまして、申し上げられません」
「はぁあ??」
「ただし黄竜を
「五英傑ってのは、ボクらくらい強いんだっけか。んなっ……
心底うんざりするような声音で、緑竜グリストゥムは溜息を吐き出した。
正直に言ってしまえば、七色竜が一堂に会すサマは見てみたい。
それにカエジウスに残る願いの一つを使えば、一時的に黄竜を連れてくることも可能かも知れないと。
しかしそれまでに世界にどれだけの爪痕が残されるかと考えると、まずやっておくべきことがあった。
「まだ試してないことがあります」
「ぁあ? どういうことさ」
「なになに、ベイリルちゃん。なんか妙案あるの? イケる?」
「とりあえずやってみてからでも遅くはないかと──」
そして俺は詠唱し、創り上げたモノを黒竜へと撃ち