異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~   作:さきばめ

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#324 再結成

 

「さっすがだねぃ、ベイリル」

 

 横へと顔を向けると──ふわふわと両手にレドとエイルを浮遊させながら、愛する幼馴染のフラウが立っていた。

 

「フラウも早く追いついてこいよ」

「なんだかんだずっとあーしのが強かった気がするんだけどな~、ついに抜かされちゃったかぁ」

「天空魔術士あらため天空魔導師、ここに在りってなもんよ」

「キャシーと一緒にあーしもさらなる高みにでも(のぼ)っかーーーっ、また迷宮(ダンジョン)に潜って帰ってきたら肩を並べるだけになっとくよ~」

「おうとも、俺も暇ができそうだったら行くかな」

 

 スライムカプセルの実用化の為に延期となっていた、カエジウス特区ワーム迷宮(ダンジョン)再攻略計画。

 発起人であるキャシーが"黄竜の加護"を目当てに、それ以外にも迷宮内は様々な資源が存在していてもう一度挑むだけの価値はある。

 

 しかし時機を待っている(あいだ)に、()()()()()()が出たという話で迷宮はまたも再改装される事態になってしまった。

 攻略メンバーのスケジュールを調整して集める都合もあって、未だに先延ばしになっているのが現状であった。

 

 

「ところでフラウ、お前の怪我は大丈夫か?」

「うん、結構キツイけどね~。まっもう少しくらいは頑張れる。レドとこっちの女の人も生きてるよ」

 

 レドは散々っぱらしぶとく、エイルも既に死んでいる身──とりあえずは問題なさそうであった。

 

「良し。さしあたって詳しい話は後にして──っと、(っつ)ぅう~」

 

 もはや生体自己制御(バイオフィードバック)すらもままならず、頭にガンガンと残響する痛みに俺は顔を歪めながらしみじみと呟く。

 

「あぁ……ハルミアさんがいればな──」

「ハルっちは"身重(みおも)"だからしょうがないねぇ。はやく産まれてこないかな~? もうっめっちゃ可愛がるのにぃ」

 

 

 ともすると無重力で浮揚(ふよう)した状態のレドが、空中でジタバタと暴れ始める。

 

「んっ──な、ぬぅぁぁあああ! 降ろせフラウ!!」

「あっもう起きた」

 

 ドテッと雑に地面へと打ち捨てられたレドは、這いずるように立ち上がる。

 

「っゼェ……はぁーーー、あれ? アイツは!? クソジジイ!!」

「俺が倒した」

「……は? マ? ジ?」

「奴は俺たちを見逃すような性分じゃない、こうして無事に生きているのが証拠だ」

「ッッァァァアアアアア、クソッ! ボクが倒したかったのにィ、してやられた!!」

 

「なんでそんな元気なん、レドっち」

「確かに。"存在の足し引き"が魔導(・・)にしても、あまりにしぶとすぎる」

 

 俺は「まるでゴキブリ並の生命力」とまでは言葉を続けなかったが……。

 ここまで生命力と活力に溢れているのは、一体全体何を犠牲として引いて足しているのかいささか心配にもなる。

 

 

『えっ、レドっち(ボク)って魔導師な()?』

 

 フラウとレドの言葉がハモり、揃って俺の(ほう)へと顔を向けて問うてくる。

 

「あぁ、それは間違いない。そもそも既存の魔術に(とら)われてない異能時点で、学園時代から薄々そうじゃないかと思っていたがな」

「まじ? ボクって天才じゃん。フラウはどうなのよ?」

「あーしはまだ使えないけど……」

 

「やーいフラウ~ザコめー!」

「あのさぁ~……そうなるとレドっちってば、学園生の時から魔導師だったのに闘技祭であーしに負けたことになるんだけど?」

「なァ──! それはそれじゃん!?」

「さっきのヴァンパイアにもぶっ倒されまくってたし、ベイリルよりも弱いわけだ」

「うっさい! 相手にならなかったのはフラウもじゃんか!」

「あーしは別にレドっちみたく魔領統一を目指してるわけじゃないし、大魔王を目指す人間がこんな体たらくでいいのかな~?」

 

 

 フラウとレドの絶えぬ会話は微笑ましかったが、ひとまず放置する。

 俺は指を鳴らしてパチンッと増幅させた音で上空に合図を送ってから、離れた位置で待機していた囚人らの元へと風に乗って近付いた。

 

「おつかれっす、旦那。いやぁなんかもう怒涛すぎて、小さい小さいオレっちの肝っ玉は冷えっぱなしでしたよ」

大事(だいじ)はないな? ストール、他の連中も」

 

 "煽動屋(あおりや)"ストールは「問題ない」と(うなず)き、ジンが俺の前に立って軍隊式の礼をする。

 

「一人の戦士として、改めて敬意を表させてもらうぜ御大将」

「そうかジン、ありがたく受け取ろう」

 

 レドに預けるのが惜しくなる男だったが、それでもジンが希望する以上は致し方なかった。

 

 

「ぼくはさほどの心配はしてませんでしたよ。あなたは学園の頃から意志を貫徹しているのを知ってますから」

「あぁ次はカドマイア、お前が仕事をする番だ」

「あいにくと仕事だとは考えていませんよ、生きる道そのものだと思っているので」

「くっはは、確かに──ヘリオもグナーシャ先輩もルビディア先輩も……同じ思いなんだろうな」

 

 俺はそう言って上空を指差すと、炎を(まと)った鳥が急降下してくる。

 火の粉と舞い散らせながら降りた紅翼の内側には、薄い赤髪を三つ編みテールにした鳥人族の女性が立っていた。

 

「おっ、元気そうじゃんカドマイア。なによりなにより」

「ルビディアさん……このたびはご心配をお掛けしました」

「いやーったっはっはっは。わたしらがカドマイアのことを知った時には、もう脱獄計画が進んでたから心配なんてナイナイ」

「っ……そうでしたか」

「どちらかと言うと、腕が(なま)ってないかのほうが遥かに心配だよ? あんたと違ってわたしらは"ワールドツアー"やってきてるし」

「学園時代は皆さんを引き立てる為に、ぼくが実力を抑えていたということ。お教えしましょう」

 

 

 ルビディアへと言い放ったカドマイアに呼応するかのように、上空からさらに影が2つ落ちてくる。

 

「言いやがんなァ! カドマイアぁああ!!」

 

 地面スレスレで足元を爆燃させ、くるりと一回転して着地するは俺の義兄にあたる鬼人族。

 そして地面に豪快に激突して轟音の中で立ち上がったのは、灰色髪の狼人族。

 

「ぬぅ……衝撃を殺しきれなんだ」

「ライブ前に怪我は勘弁してくださいよ、グナーシャ先輩」

 

 "衝撃双棍(インパクトトンファー)"を使って多少は着地を軽減したようであったが、本人としてはもう少し上手くやれるつもりのようであった。

 

「グナーシャはそんなに(ヤワ)じゃねえから大丈夫だよ。ったく、心配性だなベイリルはよ」

ヘリオ(おまえ)たちを相手にする時は、それが俺の役回りだからな」

 

 パシッと俺とヘリオはハイタッチをして、バトンを渡す。俺の仕事は終わり、これからは彼らがメインを張る。

 

 

「へいへい──っと。よォカドマイア、辛気臭い言葉はいらねェぞ放蕩(ほうとう)息子」

「我としては多くは語るまい。よくぞ無事に戻ったとだけ、言わせてもらおう」

 

「ではぼくからも一言だけ、また迎え入れてくれて感謝します」

 

 カドマイアは左右それぞれで作った拳をヘリオとグナーシャに突き合わせる。

 

「おォう、そうだな。とりあえず大口叩いたんだ、ついてこれなかったらぶっ飛ばすぞ」

「遅れを取るつもりはありま……ないよ」

「うむ、やはり四人揃ってこそよ」

「っしゃあ! 再結成だね!」

 

 ヘリオ、ルビディア、グナーシャ、カドマイアはお互いに肩を組んで自然と円陣を作った。

 

「つーかスズめ……焚き付けておいて自分は()りてきやがらねェじゃんか」

「あっははは! スズがわたしらを振り回すのはいつものこといつものこと!」

「パラスも()にいるぞ、カドマイア。事情は既に我らも聞き及んでいる」

 

「……上? って、そういえば三人とも一体どこからやってきたんです?」

 

「信じらんねえだろうが、行けばわかるし見ればわかるさ。今までで最っ高の会場だぜ」

 

 その言葉の直後にヘリオは周囲に炎を発生させ、ルビディアも翼に炎を(まと)う。

 急激に発生した上昇気流に乗るようにヘリオは爆燃させた脚で跳び上がり、グナーシャとカドマイアはルビディアに引っ張り上げられて飛んでいくのだった。

 

 

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