異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「くっはッハハハハハハハ! 見ろ! 人がゴミのようだ!!」
厳密にシチュエーションこそ違うものの……俺は高みから大要塞と展開する駐留軍、さらに動き出している魔領軍他を眼下に眺望して叫んだ。
すると狐耳と尾をピクピクと可愛げに動かしながら、金髪の少女が
「あっ! それ
「おうとも、ツッコミありがとう"リーティア"」
フラウは消耗と怪我で休んでおり、今この場には俺の隣に末妹リーティアが立っていた。
「でもベイリル
「わかっているさ。そもそも一戦を
はっきり言ってしまえば、俺にとって大空からの景色というものは非常に見慣れている。
それでも地球ではまずもって実現不可能な
「で、どうよベイリル。感想は?」
白衣を着る水色の髪をした青年、数学と工学分野の第一人者である"ゼノ"は得意気にニヤリと笑ってみせる。
「あぁ最高だよゼノ、素晴らしい仕事ぶりだ。それに"ティータ"も大変だったろう?」
「そっすねー、でも今までにないやり
桃色髪をツインテールにしたドワーフ族の彼女は、自信げにトンッと自分の胸元を軽く叩く。
「これが俺たちのとっての"浮遊大陸"──その取っ掛かりとなる"
今現在、俺達はまさしく"空に浮かぶ大地"の上に立ち、遥か下には地上があるという構図。
"空飛ぶ小さな島"──技術的ハードルの高さと多さをいくつも克服し、飛行船をすっ飛ばして実現した
「
「まぁ俺もまだ直接見たことはないがな。でも不可侵海域があるのは確からしい」
大陸の北の海──北洋──にはゆっくりと回遊する竜巻と暴風雨によって
曰く──消えた"頂竜"が
曰く──過去人知れず、真理に到達せし文明が残した理想郷。
曰く──暗黒時代における、神領あるいは魔領陣営いずれかの最終兵器。
曰く──大陸に見えるがその実は、あまりにも巨大過ぎる魔獣の影。
曰く──地図なき時代に英傑と大魔王がぶつかった結果、現代まで残り続ける余波災害。
曰く──実は今もなお生存している"大魔技師"が、新たな
曰く──誰も見ず、誰も聞かず、誰も知らぬ英傑が住まう魔法の地。
曰く、曰く、曰く、曰く──
その真相について言及した伝承・風説・物語は、
「あるいは……どこにも属さない浮遊国家なんてのも、本当にあるかも知れないぞ」
世界には数多くの
そしてシップスクラーク財団もまた、そういったモノを解明すると同時に、創り出していく側でもあるのだと。
「理論的には考えにくいがな。
「そういうのは
「んーーー、何か別に助長させてる物質でもあるんかなぁ? それとも磁場に対して反発か遠心力か、その他うま~いこと拮抗してる要因があったり?」
「まあ局所的に乱れてる可能性は大いに考えられるか。なんせ
「いやでもっすよゼノ、乱れているならまず先に──となるわけっすから、まず考えるべきは──」
「えーーー、ティータの言い方だと──も影響してこないとおかしくない? だからさぁ──」
俺の中で
「三人とも、妙案がある」
「あ?」
「お?」
「ん?」
「それがなんであれ未知ならば、調査して既知にするのが手っ取り早い。ゆくゆくは"
「ベイリルよぉ、んな簡単に言うなっての。この
「特にティータが大変だったよねぇ~。推進用の外燃プロペラ周りに、熱排出を利用した循環機構と~……なにより
「いやいやリーティアも苦労してたじゃないっすか。ベイリっさんの
今現在こうして立っている全長にして100メートル超ほどある
居住区と機構部と自然部に分かれて起伏を形成していて、
核となる
蒸気タービンを利用してプロペラを回し、余剰熱を利用して周囲の大気にも干渉する。
本来は高高度での大気調整の為の機能であったが、それだけでなく空気密度を変化させて光を屈折させることで、周囲との同化効果をもたらすことに成功した。
俺が使う"
地上部と地下部を合わせれば数百人単位での収容が可能であり、適時補給を前提に、不自由なく長期滞在が可能な配慮が行き届いている。
そして専用の屋内ライブ会場は照明から音響までしっかりと環境が整えられていて、それを
実験的な部分も多くデータ収集も兼ねているが、テクノロジー系統樹の
「──三人とも、俺の無茶を聞いて……叶えてくれて、改めて本当にありがとう」
俺は深々と頭を下げて感謝を示す。もちろん言葉だけでなく、もっと具体的な形で報いたいとも思っていた。
「そして期待しているよ、今後ともな」
「まっかせといてよ! ベイリル
「おまえの夢はおれたち──
「最近は楽しくて楽しくてしょうがないっすからね~」
浮遊し、移動する島を人工的な実現にまで至った"
サイジック領都の完成も近いし、シップスクラーク財団もさらに大きくなっていく。
未知は既知となり、新たな未知を見出していく。そうやって世界は回していくし、回っていくものだと。
「──ほんっと、自分が子供の頃だった頃を思い出すくらいに」
続いたティータの言葉に、俺は学生時代の一幕でわずかに話したことを思い出しつつ
「そういえば……ティータは子供の頃に、
「そっすよ。自分も
ティータの言葉に先んじて補足するように、ゼノが腕組み笑って差し挟む。
「変人同士つるんで、大人の手を焼かせていたわけだ」
「うっさいすよ、ゼノ」
「えぇ……おまっ昔から自分で言ってるくせに」
「自分以外の人間に言われるとなんとなくむかつくじゃないすか」
「理不尽だ」
(俺もフラウを連れて、色々とやったもんだな──)
異世界という未知の新天地へと転生して、どう生きるか、どう違うか、どう活かせるかを模索するために幼馴染を連れ回した記憶が蘇る。
「大人が知らないようなことも、いろんなことを教えてもらったっす」
「ティータがツインテールにしてるのも、幼馴染の影響なんだよねぇ」
「うん。昔からお揃いにしてて……もう離れてだいぶ
するとティータも自分の桃色ツインテールの毛先をくるくるといじる。
「今もどこかで元気にしてるかなあ……──"スミレ"ちゃん」
ふと吐き出されたその名前に、俺は一瞬