異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
"斜塔"内の一室にて、俺は
対面に座る女は、用意されたお茶を一口含む。
「人払いは済んでいる」
俺は淡々とそう告げ、お茶が彼女の喉を通りきったのを見計らってから奇襲を仕掛けるように口にした。
「それで──"アンブラティ結社"の人間が俺に何の用だ」
「へぇ……」
女はカップをテーブルに置くと、わずかに瞳を見開いて驚いた様子を見せる。
「なんともまぁ、我々のことを知っているばかりでなく。わたしが構成員であることまで見抜いているとは」
「状況証拠を統合したのと、半分はカマ掛けさ」
相手の正体については的中したものの……まさか結社の
「ならば話は早い。が、どうやって我々のこと知ったのかまず聞いてもいいかな?」
「……最初はインメル領会戦で、作為的な形跡が見られたことから始まった。それと……既に知られているようだから言うが、
"竜越貴人"アイトエルから聞いたことは当然
また"脚本家《ドラマメイカー》"の死についても沈黙を保つ。
「彼からは具体的にどんなことを?」
「それは──その前に……どう
「あぁ、キミが"
「なら俺も問い返させてもらうが……どうやって俺の情報を調べた? なぜ大監獄や
「断片的な情報を繋ぎ合わせ、長年の知識と経験から推定し、それを前提に裏付けを取るだけさ。それと魔領に"お喋りな友達"がいたので、こちらも助かった」
(魔領……"レド"か、喋ったのは。まったく……)
自由奔放な彼女ならば、聞かれれば素直に答えたとしても不思議はなかった。
そんな気性を知りながらも口止めを忘れた俺に非があり、悪気なく喋ったであろうレドを責めることはできない。
(いやむしろ──
今まで掴めなかった糸口、を向こうから尻尾を差し出してくれたのだ。
「とすると、あんたが"
「我が呼び名まで……
「あぁ、神族殺しのことや"掃除人《スイーパー》"ってのがいることも聞いた。最初は"
「はははっ彼はあれで寡黙に見えて、かなりお喋りだったからな。しかし部外者に必要以上に話したならば、本来それは殺す相手となるのだが──キミは生きている」
「運が良かった、それと実力だ」
「ふふっ、実力よりもまず運が先に立つか。そういうキミだからこそ、結社に
「誘う、それが本題か」
俺はあえて不満気を表情に出し、相手との交渉を試みる。
「不服かな?」
「アンブラティ結社に、今のところいい思い出が無いものでね」
「勘違いしないでもらいたいのだが、
「しかしインメル領会戦を画策したのは事実なんだろう?」
「結果的にそうするのが都合が良かった、というだけだ。我々はあくまで相互
「……?」
「誰か一人がやりたいことを提起し、そこに乗じて一人一人が利益を見出す──突き詰めればそれだけなのさ」
「戦争もその一つ、ということか」
「結果的にそれが最も効率が良いのであればそうなる。主導する者次第だ」
「ヴァルターも結社員なのか?」
「彼の
「そうか……」
俺はしばし考える様子を見せてから、律儀に言葉を待っている
「──仮に俺が結社に入ったならば、議題を提起してもいいわけか」
「議題を提起、というのはいささか違う。全てわたしを介して伝達は
「……別に集まるわけではないのか」
「もちろんそれぞれの仕事の中で結社員同士がかち合うこともあるが、まったく会わずお互いに名前だけしか知らないのも珍しくはない」
それはつまるところ、まとめて一網打尽にすることはできないということである。
(一体何者なんだ、
たった一人で全員に渡りをつけるなどという無茶を、これまでやってきたような口振り。
「単独で達成困難とあれば、支援を受けることもできる。"
知らぬ名前が飛び出してきて、俺は情報整理に追われつつ……
「あとは"
(……アイトエルが殺し、俺が死体を灰にしたからな。流石にそこまでは知られてはいないか)
相当な情報通ではあるのだが、なんでも知っているわけではないようだった。
「そうそう、それと──個人的な
「……あんたの仲介も、貸しになるわけか」
「いやそこは気にしないでくれていい。わたしは好きでやっているだけだ」
「そうか、さしあたって
「彼は貸しを作るばかりで、自らそれを使うことがほとんどないまま死んでしまったがね。だから適度に使うことをオススメする」
内部事情がかなりわかってきたが、俺は一つ気になることを彼女へとぶつける。
「ところで、結社には
「いやわたしは違うよ、創始者にして首魁はいる。とはいえ滅多に表に出てくることがなくなった……わたしも随分と会ってないくらいでね。でも
気になる物言いを俺は胸にしまいつつ、さらに突っ込んでいく。
「その首魁に借りを作ることは?」
「頼むのは構わないが、断られるだろうね」
(……いきなりボスを
この
しかして先に彼女を殺してしまっては、他の結社員に辿り着く方法がなくなってしまうジレンマ。
「そんなことを聞くということは、前向きに考えてくれていると受け取っていいのかな?」
「今少し、悩んでいる」
(そもそもだ、
記憶を辿ると……同じように勧誘されたらしい"
あの
彼女自身の言葉の
(虎穴に入らずんば……か)
ワーム迷宮を制覇しなければ幼灰竜を得ることは叶わなかったように──
インメル領会戦に多くを投資して、サイジック領を得たように──リターンを得るにはリスクが必要だ。
今さらアンブラティ結社と
しかし現段階の情報でも底が見えず、敵対するにはあまりにも不確定要素が多すぎる。
「あくまで俺が個人としてのみ、結社に参加するのは許されるか?」
「それはキミが属する財団は、別モノとして考えるということかな?」
「あぁ、他を巻き込んで波及させたくはない」
「構わないよ。他の結社員の中にも大きな組織を有する者がいるが、本来持っている立場や職責とは関係のないところで──あくまで趣味や仕事としてやっている」
(これも、巡り合わせだな)
アンブラティ結社の
内部から情報を集め、
「それに元々キミを誘ったのは
「武力ね──わかった、入らせてもらおう」
俺は決断し、選択する。
「そうっこなきゃ。それじゃあキミの通称名はどうしようか、希望がなければわたしのほうで名付けよう」
「……"
「調整? わたしと被りがちな名だ。それにキミの役割からするとあまりそぐわないな。他の者にもわかりやすいのをオススメする」
「なら単純に"
「いや、いないよ。もちろん仕事として殺しを請け負う者もいるが……専門とする者はいない」
「ようこそ"