異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
戦帝が一時的に陣を張っている屋敷に
だだっ
建造物の名残りがわずかに見え、ご
(わざわざ"修練場"を作るとは……)
そこには魔術なしの、純粋な
一人はもちろん"戦帝"であり、相対しているもう一人は騎士装束に身を包んだ隻腕の狐人族の男。
どちらもフル装備のようであり、かたや戦帝は左肩まで
一方で狐人族の男は勝るとも劣らぬ長さの片刃剛剣を、隻腕のままで居合い抜く。
(器用だな、あれが……かの有名な"刃鳴り"か)
俺は記憶の中から特徴を照合する。
その尻尾は毛が抜け切っていて──くたびれつつも、しなやかに──しっかりと鞘を持ち支えている。
さらに地形を利用しながら、
「──オマエはダレだ」
観戦している中で
「モーガニト領主、ベイリル・モーガニト伯爵。召喚に応じ推参しました」
「フーン、オマエがか」
どうやら話は
(魚人種──サメ族かな)
共通語がたどたどしいのは声帯にやや違いがあるからだろうか。
かと言ってエラで水中呼吸ができるだとかそういう特徴が水棲種にあるわけではない。
あくまで神族という祖先のヒト種から、魔力の暴走や枯渇から
獣人種が感覚器官に優れたり、鳥人族が魔力強化や魔術で楽に飛行することができたりと、魚人種は地上よりも水場のほうが生きやすいという程度である。
実際に学苑時代の友人である"オックス"はクラゲ族だったが、言葉自体は普通に話していたし、育ちも大いに影響しているのだろう。
「ツヨいって聞いてるゾ」
「まぁ一応は」
いつの間にか彼女の両手にあった独特な
"見せの右薙ぎ"から、後ろ足を踏み込んでの"返しの左薙ぎ"──
「ムッ、血デてない。ほんとーにヤルなオマエ」
あくまで試しただけで、さすがに本気ではなく。
皮一枚に血一筋の刃を完全に
「どうも、"風水剣"
俺は軽い
帝国の頂点自ら
帝王直属の近衛騎士。帝王の命令以外を聞く必要がなく。帝王が誰よりもその信を置く。帝国内で最も忠誠
「何をしちゅうんじゃ、風水の」
ドゴォンッと地面に足裏をめり込ませて、"鉄球"を背負った新たな人物が現れる。
「あぁ"熔鉄"……コイツやれるゾ」
「戦帝がわざわざ呼び出しゆう、そりゃあそうじゃろう」
"熔鉄"の二つ名を呼ばれたドワーフ族の男。身長は"風水剣"よりも低く、150cmも満たないだろうか。
筋肉の塊によって成長阻害されたような見た目だが、それがドワーフ族ともなれば珍しくもない。
(……ドワーフは
大髭を生やして老けて見えるものの、白髪まではいってないので案外若い可能性もあるが……喋り方は古臭い
何にせよ、後ろに引っさげた"鉄球"が彼の
「おう"空前"の、ワイにもちっとばっかし
「……少しで良いのであれば」
もはや恒例の行事として割り切る。帝国は軍事国家であるからして、強さこそが何よりも相手を見る重要なバロメータとなるのだ。
それにここで
「風水のを
赤熱した鉄球が溶けて、熱を
"熔鉄"の二つ名を
「本気で来りゃあッ!! 見せてみィ!!」
「真気──発勝」
俺は液体窒素を封入し、音圧振動を
急速に冷やされた熔鉄の一部は、固まりながら分子構造を崩壊させて斬断された。
「こいっつぁ、たまげた。
「お、スゴい」
冷えた鉄はすぐにまた熱を持って溶けたかと思うと、元の鉄球に再成形されるあたり、"熔鉄"もまた一筋縄ではいかない実力である。
「まったくオレの許可なくつまみ食いをするな、二人とも」
「"空前"……居合いを使うのか、おもしろい」
いつの間にか"戦帝"バルドゥル・レーヴェンタールと"刃鳴り"、そして既にいた"風水剣"と"熔鉄"に俺は囲まれる形になる。
「待たせたか? モーガニトよ」
「いいえ陛下、三騎士たる"風水剣"と"熔鉄"の御二方が相手をしてくださったので暇を持て余すことはありませんでした」
俺はその場に
「ここにはコイツらしかいないから別によい。ところで……なにゆえキサマが呼ばれたか察しはついているか?」
「
「そうだろうな。遊撃任のキサマを二度も振り回すのは、オレとしても前言を
それは
「……ヴァルター殿下からお聞きになりましたか」
「あぁ、別に責めてはいない。遊撃を許したのは他ならぬオレだし、功名心も実に結構」
(実際はヴァルターの
結果として聖騎士が死んだのは事実であるし、俺は変に否定することなく、とりあえず話の流れに身を任せる。
「おかげで戦況は大きく変わった、詳しい話は
(──!? そういうことか……
つまり
アンブラティ結社に新たに属する"
さらには当て推量なものの、教皇庁に根回しして
神器という虎の子を引っ張り出すよう、結社が仕向けた可能性すらありえる情報力であろうかと。
「キサマの一手によって生じた事態だ。さらに功績を重ねる機会だぞ? 喜ぶがいい」
「
「くだらん帝国においてそんな遠慮は捨てろ、これは命令だ」
「王陛下にそう命じられるのであれば……
「それでよい、神器とはそれほどの油断ならぬ相手なのだと知れ。オレの直下にて、オレの指示だけを聞き、オレの為に戦え」
「かしこまりました……では
その瞬間、俺は言葉途中に詰まるしかなかった……。
なぜならば、一瞬にして"風水剣"の刃が首元に、"熔鉄"の赤熱鉄刃が背後から脳天スレスレに、"刃鳴り"の剛剣が心臓付近で止められていたのだった。
「フッハハハハ! 冗談にしても、それはおこがまし過ぎたなモーガニト。おい
あっさりと
「申し訳ありませんでした三騎士さま、軽口をお詫びします」
「おうさぁ!」
「気にシナい」
"熔鉄"はそう言って俺の腰をバシっと叩き、"風水剣"はにっこりとギザっ歯を見せて笑い、"刃鳴り"は静かに
「それにしても、刃を突きつけられながらまったく動じないとはな」
「いえ……さすがに微動だにできぬほど
その言葉の半分は真実、もう半分は嘘ではないもののお世辞も多少なりと含まれている。
「フッ、オレがわざわざキサマを呼びつけてまで加勢させた意義──そして期待を裏切ってくれるなよモーガニト」