異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
言葉途中で、パチッパチッ──と、ゆったりとした調子で拍手をする女が一人。
「おいコラ、勝手に入ってきてんじゃねェよ」
「はははっまぁまぁそう言わずに」
それは誰あろう、俺もヴァルターも知るアンブラティ結社の"
「ったく、毎回ことごとく警備をすり抜けてきやがって」
「わたしはどこにでもいて、どこにもいない──ようなものだからね」
「取り込み中ってほどじゃァねぇが、用事はなんだ? 今さら勝手によこしやがった情報の対価がほしくなったのか?」
「いーや違うよ、少々予定外のことが起きているようでね。よくない、そう……とてもよくないこと──その確認をしにきた」
ヴァルターがどこまで知っているのかわからないので、俺は同じ結社員として下手に口を開かず黙して聞く。
「確認だァあ?」
「
「んなくだらねぇことで水を差しにきてんじゃあねェよ。占い師なんて信用ならねえ、オレ様は自分自身で切り
「素晴らしい意気だ。けどね、
そう言って
「それとこれは手土産だ、さっ遠慮せず開けてみてほしい」
言われるがままにヴァルターは中身を見て、その心臓が大きく高鳴るのを俺の半長耳が捉える。
「なかなか似合う装飾品がなくてね……でもどうだろう? 素朴なリボンだけど、"
意味が、わからない。状況が、理解できない。意図が、わからない。
あまりにも唐突な
しかして影は届かず──玉座の間に一陣の風が吹いて──
「ありがとう、"
四度目、しかしこのような形で会いたくなかった相手であった。
灰色の長髪に薄布で目隠しをした"運び屋"は、ヴァルターの心臓までめり込ませた
支えを失ったヴァルターの体は倒れ、命を
「ふふっ、この頭に
誰かはわからないリボンを着けた女の生首を隣に並べて、
「さて、"
「俺の番? 何か関係があるのか、甘んじて受けるかはともかく……一体何がしたい」
生者と死者を同時に
「言っただろう、凶兆だと。それはキミにも関わっていることだから仕方ない」
「それでその
「新入りのキミとは比べ物にならないほどの古株の言葉だよ。そしてその稀有な能力によって、いくつもの難題や危機を回避してきた確かな実績がある。
何事も優先順位というものがあるし、非常に残念でならないよ。わたし個人としてはとてもとても、気がすすまないのだがね──あぁ、もうやってくれていいよ"
瞬間──"運び屋"が動き、俺は魔導"
空間ごと断裂させるがごとき神速と威力を伴う蹴りを、"
「なッ──!?」
次に俺は、俺自身の心臓がドクンッと跳ねる音を聞く。
衝撃によって"運び屋"の髪が乱れて──あらわれた"半長耳"を確かに見逃さなかった。
俺と近い髪色。俺と似た碧眼。俺と近いように思える年頃。そして……俺と同じ半長耳。
いくつものパズルの
決定的な隙を晒してしまったと同時に、俺は背中に熱さを感じるとそこには一本のナイフが突き立てられていた。
「っ……ぐっ──」
そしてそれを掴んでいるのは──正面に立っているのとは別に、
まったく同じ顔をした女が、背後にいつの間にか出現していたのだった。
「すばらしい切れ味だろう? これはその昔、"大魔技師"が使っていたものでね……彼の工作物はまずこの一本の刃から始まった」
"
ユークレイスの隙間を縫ったその一撃で、俺は
(俺の体にも効くレベルの毒か……マズい、スライムカプセルを──)
腰元の瓶から取り出そうにも既に体が鈍く感じ、細かい動きも難しくなっていた。
「あらゆる素材を切削・加工する機能美だけでなく、
魔導は既に消失し、俺は二人の
「さすがは
だからこそ、キミのことも面倒を見てあげようと思ったのだが……本当に惜しく思う。ところで筋書きはどうしようか? こういう時にやはり
毒にはある程度まで耐性をつけていたし、そうでなくとも鍛えたハーフエルフの肉体は頑健なつもりだったが……そうした領域を越えている。
「次の帝王は……そうだな、テレーゼ──彼女がいいだろう。悲劇の王女、
さらには背中の刺し傷と、左腕の切断も相まって、もはやまともに集中することもできない。
「
(あぁしくじったッ、すまん……みん、な──)
そうして俺の意識は、
400話にしてひとまずの区切り、第六部はこれにて次からは新展開に。
今後どうなっていくか、是非とも最後までお付き合いください。