異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「──どのみち
「役目……
「はい。全てを終えた
「俺に? まぁ魔法具を譲ってくれるというのなら遠慮なく、ありがたく貰ってはおくが──」
もし
何より
(まぁデザインは正直なところ好みではないが……)
俺は自分が着けたビジュアルを想像しながらどうでもいいことを考えていた。
──と、イェレナはソファーの上で改めて座り直し、背筋をピンと伸ばして真っ直ぐ俺を見据えてくる。
「わたくしは本来、生きていてはいけない人間なんです。祖父エルメル・アルトマーは数多くの記録を、結社には悟られぬよう残していました。受け継いだわたくしも表と裏の顔を使い分け……」
「
「その通りです。結社という存在と、長きに渡る因縁を清算することこそ……わたくしが生き恥晒してでも、永らえている理由ですわ」
イェレナはギリッと歯噛みしてから、明確な意志をその口から紡ぐ。
「わたくし一人ではどうにもならない。ずっとこのような機会を待ち続けていました。
「なるほど……確かに俺と君は、境遇も近い──
「ありがとうございます。しかしその前に片付けなくてはいけないことがあります」
ギュッと握られたイェレナの拳は、感情の行き場を言葉へと変える。
「"
「……そうだったな。
「
「たとえそうでも、今回の一件を知っているのは極限られた人間だけだったんだがな」
「祖父の時代、すなわち100年近くも前からシップスクラーク財団情報部で働いている人間ですから」
「当時のエルメル・アルトマーの仕込み、か」
「財団の情報部だけでなく、多様な分野でも代々奉仕してきた一族。とっくに我々の手を離れ、財団でも
本来であれば情報に深く
しかしシールフが"異空渡航"実験で行方不明になってしまった為に、精査することができなくなったがゆえの穴につけ込まれたのかも知れない。
「ただかつて我々アルトマー一族が大きな恩を売った間柄にありますので……いくつかの特定事項に関して、迅速な情報提供をしてもらう次第なんです」
不安の色を顔に貼り付けるイェレナに、俺は肩をすくめて答える。
「あぁまぁ、別に
「……ふふっ」
「なにか
「いいえ、なんというかその──祖父からのお話や集めた情報から、
「事が終わったら、エルメル・アルトマーの残した記録とやらを個人的にも見せてもらいたい気分になったぞ」
俺は半眼で口にしつつ、イェレナは
「それでは本題に移らせていただきますわ」
「"
「
「結社員を、殺して回っただと?」
「そうですわ。およそ30年前、
"
(図らずも……アンブラティ結社は、
「
その単語を半長耳で捉えた瞬間、俺は
「魔導、と──"魔法具"?」
「"透過の魔導"と魔法具"
(そうか……なるほどな、"変身"の異能の
イェレナからもたらされた答え合わせによって、俺の中で一つの疑問が氷解する。
透過と変身、どちらも魔術の域を超えた異能であるが、一人の人間が二つの魔導を持ちえることは不可能。
しかし魔導と魔法であればその限りではない。
「まず透過についてですが──」
「ちょっと待った。それは
もしも殺された
「今はすでに亡き者とされていますが、かつて"仲介人《メディエーター》"が当時何度も殺される中で得た情報だそうですわ」
「仲介人《メディエーター》が亡き者にされただって!?」
「はい、他ならぬ
イェレナの言葉が耳を素通りしながら、俺は無力感を一つ味わっていた。
(死んだ……? この俺をハメた、あの女がもう死んでいる──)
100年も経過しているのだから、むしろ可能性としてはそちらのほうが圧倒的に高いと言える。
しかしながら30年前までは少なくとも生きていたようだし、長命であれば今の今まで生き延びていてもらって──この手で
最大の仇とも言える相手が消えたという事実に、俺は少しばかり打ちのめされた心地になる。
「
「少なくともそう伝わって以降、仲介人《メディエーター》が姿を一切見せなくなったのは事実です」
つまりは
「仲介人《メディエーター》がいないということは……今はどうやって結社は運営されているんだ、連絡手段は?」
「長距離なら"電信回線"、短距離であれば"魔線通信"で」
「えっ……あぁ、そうか──」
俺自身が
「いや、結社の話は後にしよう。さっさと
スッと立ち上がった俺に対し、イェレナは少しばかり困惑の色を見せる。
「
「いや、不要だ。第一に30年も経過していれば情報も古く、第二に俺は
やや主義からは外れるものの、元々イェレナと情報の存在自体が
現在まで能力をどれほど研ぎ澄ましているのかはわからないし、どのみち最大臨戦態勢であたるのには変わらない。
「第三に俺自身が
同郷であるがゆえに発想も近くなる。
"断絶壁"での一件以降、折を見てはシミュレーションも幾度となく重ねてきた。
唯一不可解だったのが異能を二つ使いこなしていたこと──それも今は片方が魔王具であることがわかったので、もはや恐れるべきことはない。
「闘って、生き残ったことがおありだったとは……」
「痛み分けだがな。俺は
「今なら……勝てますか?」
イェレナ・アルトマーの言葉に、俺は不敵な笑みを浮かべる。
「