異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「
それは反射でしかなかった。他者の口から聞くのは実に100年以上振りではあったが、母国語はいつだって詩という形で己の中にあった。
だからこそ不意を突かれた言葉に、ワタシは無意識の内に反応してしまっていた。
次の瞬間──否、反応したまさにその刹那。
突如発生した風圧によって、自身の肉体が
"透過"は使わず、風に身を任せるように、大人しく彩豊の都の遥か外側にまで運ばれた
その双眸には意志が込められていて、明確な目的あって実行したであろうことが見て取れた。
「今度こそお前の"死に目"に立ち会いにきたぞ、"
「はて、どこで会ったかな。ワタシが見逃した人間など数えるくらいなはずだが」
覚えは、ない。
見たような記憶があると言えば有るが、ないと言えば無い。少なくともその程度の人物。
しかしワタシのことを知り、かつ
「いやそうか、
「思い出してくれなくても結構だったんだがな、まぁいい」
そうだ、あれは確か"断絶壁"だった。
あの時のワタシでは彼の命を捉えられず、3つの組織の幹部全員の大量殺人をした直後で満たされていたがゆえに……
「これは復讐だ。そしてお前の存在そのものも障害だ、だから殺す」
「今は、
「こっちも逃がすつもりはないさ、乾いて死んでゆけ」
予想外、嬉しいサプライズだった。
ワタシは一振りのナイフを取り出しながら、
「……"ベイリル"、と言うのか。せっかくだ、キミにはお気に入りの血詩をプレゼントして──」
言葉の途中で、脳が揺れた。
視界は
それははたしていつ以来だっただろうか。まだ魔導を覚える以前……この世界に転生して、記憶を思い出し、くだらない
「俺は名乗った覚えはないはずだが……まっ、とりあえず効いてくれたようで安心したよ」
油断はしていない。既に肉体は透過の魔導でもって、
しかし気付けば右のストレートを、顔面に貰い受けて地面へと大きく倒れこんでいた。
「噛み締めろ。一撃一撃、丁寧に殺し尽くす」
「な……に、だろうね、これは──」
起き上がりながらベイリルへと問い掛けて、相手の頭の中を"透過"させる。
魔力──魔導──色──濃度──視る──溜める──塗り潰す──雑多な単語群の中から、答えを導き出す。
「そうか……魔力の色、そんなものがあるのか。どおりでワタシを見つけられたわけだ」
「……」
「キミは魔力の色とやらを見ることができる。そして自らの魔導による濃い色でもって、ワタシの魔導の薄い部分の色を塗り潰し、その上で刹那の二の撃を加えた」
「なるほど、どうやらお前は記憶が読める……──頭の中まで"透過"できるってところか」
ワタシは呼吸を整えながら、久方振りのまともな痛みを堪能する。
「だが普通に喰らったことも
「
ベイリルの姿が掻き消えたかと思えば、ミシミシと右腿が悲鳴を上げていた。
恐らくは蹴られたのだとは思うが、単純な身体性能と白兵能力の差があまりにも開き過ぎていて認識できないのだ。
彼がワタシに対してダメージを通せるのは魔術ではなく自らの肉体だけのようで、かつ魔力色を濃く溜めるインターヴァルがあるようだが、それらを差し引いても……いささか具合が良くない。
「ッ……しかも意識せずとも攻撃に移行できるとは、見事なものだ。あまりにも……そう、相性って言うのかな? が、悪い」
「あの時、お前を取り
「はっ……はは、何度も何度も殺すと……まるで自分に言い聞かせているようじゃあないか、不安を覆い隠さんとするように」
「
「赤い、血だ──ワタシの」
己の血液。しかしこれで詩を書くにはまだ早い。
「お前が死んだ後には何も残さない。肉の一片も、骨の一欠も、血の一滴さえな」
ベイリルは至って冷静な思考で深追いはせず、わずかな時間で魔力を濃く溜め、こちらの濃淡を判断。
その上で初動を無意識の中に隠し、確実に打ち抜いてくる。
我慢勝負になってしまうが、いずれ限界がきて透過の魔導そのものが維持できなくなる可能性もないとは言えない。
そうなれば後は好き放題に解体されるだけとなる。
「ああ……キミは実に完成された戦士だ」
今少し、彼と親しくなる為に。その血で、詩を書く準備をする為に。次のステップへと進もう。
「だからワタシも……
「ッ──!?」
"変成の鎧"──多大な魔力を必要とするが、己の肉体を
同郷、ハーフエルフの男。まさしく鏡合わせのように、ワタシはベイリルの姿でもってベイリルと対峙する。
瞬く間に抜き放たれた"風太刀"の居合いを、ワタシも同じように居合い抜きで防ぐ。
「……負った傷も、変身すれば全快か」
「ああ素晴らしい肉体と反射だ、ベイリルきみの血肉は考えずとも動いてくれた……よくぞここまで練り上げたと素直に称賛できる」
「俺に
「ワタシはただただキミと親密になる為──より良き"死に目"を見る為の
「まっダメージリセットも想定内だ、魔力切れまで
「存分に味わわせてもらおう」
激突──雷が
さらに肉体が同じとて魔導は別物である。先ほどと同じように
しかしそんなことはどうでもよかった。
より、相手へと、近付くことが、できる。
そうして暴風が消え失せると──互いに同じ見た目ではあるが片一方は無傷、片一方は傷だらけという様相を
「所詮は
「っハァ……たしかに、ここまで
「簡単に知覚できるほど、安っぽい技術じゃあない」
鍛え澄ましたハーフエルフの肉体は、今までにない世界に対する
しかしわかるのは精々がその程度であり、魔力の色──ましてや濃淡まで理解できるとは……同じ肉体・感覚のはずでもここまで差異を感じたのは初めての体験であった。
「さて……そろそろ次の変身でもする頃合か、次は誰になるつもりだ? ありきたりに俺の大切な人にでもなって、手を止めさせる作戦でも取るか?」
「そんなものが通用しないことは、
強く、気高く、美しい。
かつて殺し損ねた
「より一層の興味が湧いた、だからキミに贈ろう。もっと知る為に、見せてくれ──」
ワタシはそう口にし、癒着しているかのように我が身と一体になっている魔法具"変成の鎧"が