異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
刻一刻と肥大化していく肉の塊は、もはや魔導体の腕でも抑えておけないほどに質量が増えていく。
「あっちゃあ~~~……なるほどそっかあ、暴走して変異はまだしも、他のを取り込むまでいっちゃうかあ。兵士としては無節操で使い物になりそうにないなあ」
「すっごいけど、ただあ……このままだとまずいなあ。別に
「世界中、だと……?」
「んん? うん、そうだよお。でも複製するにはあ、移設・合体させたここの苗床が必要だからどうしよお……女王型の寄生蟲を使うとなるとお──」
おしゃべりな
「ベイリルさん! っっ──これは!?」
HiTEK装備"複製永劫魔刃《ブレイド・レプリカ》"によって、力場の剣を伸ばしていたヤナギがこちらへと駆け寄ってくる。
その左脇には
「……あぁ、姉さんだ。もう助けようがない」
いくらなんでも現状の財団が保有するテクノロジーではどうしようもないし、魔獣をこのまま解き放つわけにもいかない。
「せっかく再会できたのに……」
「あぁ、でも皆を危険に
「そんな! 自分たちは──」
俺の気持ちを
「いいんだ。肉親の情こそあっても、実際に過ごした記憶と情があるわけじゃあない。ヤナギ、お前のほうがよっぽど大切な存在だ──もちろん"烈風連"もな」
どうにか無力化できたとしても、融合魔獣の治療を未来に託す──にはあまりにもリスクが大きすぎる。
ヤナギも俺の言葉を飲み込んでくれたようで、それ以上の口は開かない。
「それよりも
「……はい、先ほどの奴で九体目で──」
「そうか──どうやら今死んだ
「だよお? ワタシをいくら殺したって、違うワタシが──」
俺は新たに生えてきた10体目の
「悠長にしている時間はもうない、脱出するぞヤナギ」
「……了解しました」
振り下ろした"太刀風"を俺はそのまま斬り上げ、魔獣の体内から外への出口を作る。
◇
「総員──! 第二狙撃距離を保って封縛措置を維持!」
"魔線通信"によるヤナギの命令に、近距離に展開していた"烈風連"の面々が魔獣から大きく間合いを
(移動研究施設である
これ以上
やり方はいくつか考えられたが、俺は最も確実な方法を選ぶことにした。
『アッシュ──!!』
音を増幅させて灰竜の名を
上空で旋回していたアッシュは呼応するように1度だけ咆哮すると、大きく息を吸い込んでから俺へと向けて
炎熱でも、氷雪でも、雷霆でも、豪嵐でも、病毒でも、光輝でも闇黒でもない。
触れた物質を原子の結合から分解せしめるが
「灰は灰に、塵は塵に……」
この世に存在すべきでない化物は、世界から退場してもらう。
俺は拡散するブレスを直接
やっていることは空気あるいはプラズマや、
「最小の粒子まで、消えて果てろ」
飛行しながら、俺は地上を
ヤナギと烈風連は既に退避を完了しつつ、魔獣の動きを同時に抑え込んでくれていた。
(さようなら、フェナス姉さん……)
何人もの
俺は──黒く凝縮しながらも淡く発光している──"風化"の灰ブレス球を、指向性を定めて
灰色球は中心部で炸裂すると、そのまま拡張するように飲み込んで領域内の全てを滅却して収束──大きなクレーターをだけ残した。
(
思いを新たにした俺はクレーター脇に着地し、ヤナギへと告げる。
「これから今以上に忙しくなるぞ」
「はい、
アッシュも降り立ち、"烈風連"も参集して整列する。
「将来的なことも
「よろしく頼む」
──すると横たわっていた
「……大丈夫か、
「──?? あ、あぁ……終わったのか」
「ひとまずは、な」
「申し訳ない、手間を掛けさせてしまった」
「もはや消滅したが、
傷だらけの
「それは……失うものがないからだ。わたしにはきみたちのような"個"というものがない。装い、演じている間は──何も考えない、自分のことも他人事に過ぎない」
「だが他人になりきれるということは、その人の心も映し出しているということだ。感情を理解する感情がなければ無理な芸当だよ」
「そういうもの、か──」
散発的にではあるが1年近く付き合ってきた男の、本音の部分がはじめて見える。
「かつて俺の同志に、あらゆる人間の記憶を読んだ人がいた。それが原因でか、己の人格というものすら曖昧になった時期もあったそうだが……」
「……どうなった?」
「無気力だったらしいが──ある人から、"頼られ頼る"ことを改めて教えてもらったらしい」
そうしてシールフは虚無から立ち直って、新たに世界と関わって生きる道を模索していった。
相互扶助。一人でも生きていけるとしても、繋がりから生まれる文化が人類を豊かにするものである。
「まぁこれも