異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「──私は
ベイリルは眉をひそめつつ、強化感覚で心理状態を把握しようとするものの、遺体を乗っ取った指環という特異性の
「昔話を続けよう。私が作られた当初、まだ自我の獲得には至っていなかった。だから産まれ出でたのは……実のところ400年ほど前とも言えるな」
「当時の誰かが指環を使って、指環自身に生命を与えたってことか」
「その通り、誰あろう──後に"大魔技師"と呼ばれる男にな」
「なっ……」
世界に安価な魔術具文明を広め、文明を一変させた希代の転生者。
さらに7人の高弟達は国家や強大な組織といった枠組みをつくり、大魔技師から端を発して人類は大きく底上げされた歴史がある。
「大魔技師は自意識を持った私をどうこうすることはなかった──私もまたできなかった。なにせまだ単なる指環、動くことも喋ることもできない。それゆえ彼の話をただただ一方的に聞くばかり」
「……大魔技師が魔術具文明を興したのは、どんな目的があったんだ?」
「さてな? それは大魔技師が死してなお知り得ることはなかった。そして私は遺産の一つとして扱われ、高弟の一人の手に渡った。だが私が魔王具──もとい魔法具であることは誰も知らず、装飾箱の片隅で私は大魔技師との思い出を一人楽しんだ」
「転機が
「それが最初の乗っ取りってわけか」
「あいにくと違う。そもそも私にはまだそのような発想もなかった。ただ"神器"と呼ばれるほど魔力に恵まれた彼女と同調するように……意思を疎通できるばかりか、私自身の魔法をも扱えるようにまで至ったのだ」
「生物・無生物を問わず命を与える──」
「そこまではまだ無理だった、が……人々を癒し、死んだばかりの者であれば蘇生するくらいは充分だった。彼女は"神域の聖女"と呼ばれ──人々は求め、崇拝した」
「……」
「そしていつしか、
「それが
「最期まで人々の為に尽くしながら死んでいった
アンブラティ結社──その
「導く、とは具体的に?」
「与えられるだけでは、人間が
「その為に国家を不安定にさせ、土地を疫病や魔薬によって無秩序に
「
「言わんとすることは理解できるが、まさかお前が人類の未来を
ベイリルが結社に入る頃だと、単なる相互扶助組織であると聞いていた。
しかし方法はどうあれ、人類の行く末を考えての
「──最初の同志、いや仲間となるべき者には既にアタリをつけていた。聖女への
「それ、は……」
「"
「
ベイリルは遠い記憶の中を走査するように、わずかに残った糸を手繰り寄せていく。
「だから……キミも"神域の聖女"の
「──"
アンブラティ結社にあって、特徴的な耳飾りを着けた女性が浮かび上がる。
ある種において結社の中枢そのものとも言えた、各結社員を繋ぐ役割を持った──この手で討つことが叶わなかったかつての
「遍在した分身体は、私の人格と聖女の姿を持っていた──が、私の魔法までは持ってはいない。ゆえに私たちは役割を分担することにした」
「生命を与えるお前と、分身を作り出すお前か」
"命脈の指環"とはまた別種で、破格の性能とも言える"遍在の耳飾り"。
魔法とはつくづくぶっ飛んだものなのだと、ベイリルは再認識させられる。
たった一人で情報収集と共有を
「数少なくない者達を引き入れた……最初は100人以上いたな。"
「
「……あぁそういえば彼は今シップスクラーク財団の総帥にして、フリーマギエンスの
「既に立派な財団員であり、
長年、過不足なく仕事をしてくれている。
俺自身動き回ることも多かった影武者という面倒な部分を任せられるのはありがたかった。
「それは……良かった」
「良かっただと?」
「彼は、私が
「そう──だったのか……しかも、唯一?」
「彼はとある集落で
「なるほど、本人も忘れて謎が多い出自について得心がいったよ──」
「最初から未完成。それに私のように劣化すると思っていたが、神族の肉体はやはり別格のようだ。いずれにしても無為に命を与えたのはあれが最初で最後……しかしキミが作り上げた文化によって、彼は自分の人生を歩んでいる。早々に捨て置いたのはどうやら私の認識不足だったようだ」
大切なのはどういう影響を受けるかということ。