異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
――アンブラティ結社が消滅して、さらに150年以上の
人類は
「──……と言ったところがおおよその話です。俺もいつまで生きられるかわからない。だから今なお、心のどこかで引っかかっていた
1人は最古の"英傑"にして世界史の生き証人。
黒い長髪に小柄な体躯は、初めて会った時から変わらない"竜越貴人"アイトエル。
「なるほどのう。
もう1人は重ねた分だけの年輪が刻まれ、それも馴染んできたハーフエルフ。
"
「未来を予知なんてできない、そもそも未知を既知としていくことを楽しみにしていました。でも、これは……」
「世界は"魔力災禍"──
アイトエルにとっては長い歴史の中の一幕に過ぎないのか、実にあっさりとした物言いだった。
異世界特有の災害とも言える現象。
暴走によって魔物が変異し、枯渇によって強度を失い、一部の魔術具も機能不全に陥ったことで文明が大きく後退した。
かつて世界を支配した神族をも衰退させた災害は、築きあげた人類文明でも──ついぞ克服することはできず、必死に
「財団には魔力研究の専門部署もありました。けれど、後手に回ってしまった」
「……暴走と枯渇の因果を研究していたわけかい」
「有力な仮説はありました、それも俺の魔力色を
「聞かせい」
魔力と名付けられたエネルギーは、基本的には
それを呼吸や食事など、肉体へと吸収することで各個人の"魔力色"へと傾向が変化し、平時でも肉体から漏出し、魔術を使用する際には一気に放出される。
一度付いた魔力色は半減期のようにまた無色へと戻っていくのだが……その速度を上回り閾値を越えた時に、暴走と枯渇の危険性が生まれる。
放出される色付き魔力は、本来なら空間に存在する無色の魔力によって希釈されるはずであった。
しかし無色の総和を上回ってしまうことで、逆に無色の空間魔力を染めるように侵食する。
そして無色だった魔力色に色が付いてしまい、その色付きの空間魔力を取り込んでしまうと、体内で色が混ざり合い、濃く
逆に空間に漂う色の付いた魔力を受け付けられず、
「──あくまで類推からなる仮説の一つですが、自分の中では最もしっくりくる理由です」
「なるほどのう。かつて神族は
「はい、
石炭・石油・原子力・太陽光・地熱、他科学から端を発するエネルギー群も利用はしていた。
しかし魔力という無尽蔵に思えた安価なエネルギーがずっと身近にあったがゆえに、そちらにばかり走りがちだった。
加えて化学肥料と抗生物質による人口増加と、人類全体の教育が進み、より多くの人間が魔力や魔術を日常のものとしたことも起因したのだと思われる。
「そして……一度手に入れた
大昔の神族のように魔力暴走によって人族から魔族へと変じ、果ては魔物と化す者も散発した。
過去とは比べ物にならないほど肥大化した人口の中で発生した"魔力災禍"は、魔獣や魔人に準じる
魔獣や魔人が文化圏の内に突如として出現することは──単純に被害が大きくなるばかりでなく、人々は疑心暗鬼となり、確証なく他者を攻撃するようになる。
隣人を信用できない。それらは高度に発展した文明をも、
「
「たらればの話じゃが──
「そう、ですね。結果論から見れば案は色々と考えられます……たとえばこの"
その瞬間、地鳴りのような震動を感知して、俺は自然と地面へと眼を向けた。
「地震……?」
「むっようやく来よったか。まったく、随分と待たせよってからに……しかしある意味でタイミングが丁度良いかのう。ベイリル、手伝え」
「自分で手伝えることであれば良いのですが」
すると間もなく一般人であれば立ってるのも難しくなるほど、地響きは強くなっていく。
「
「一体なんっ……はァあ!?」
言葉途中で地面から盛り上がってきたのは、数百年前にも見たことのある異様にして威容。なんならその
あの時と決定的に
あれなるは英傑の一人である"無二たる"カエジウスが討伐し、ダンジョンとして改装した魔獣。
「
「"ワーム"──なぜここに!?」
"翼なき異形の竜"とも言われる、長さ100メートル近い円筒形の体節が何十と連結された超巨体。際限なく成長を続ける暴食の王。
地上から天空までその全長を伸ばし、山脈を喰らい、大地を掘り食って、海のような湖さえ作り出した大怪獣。
「"星喰い"、とも呼ばれるのう。
「……そ、それは色々と得心はいきますが──まさかアイトエルは
「第一目的はそうじゃな。まっのんびり未踏の風景を堪能してもいたが」
ズルズルと地面を削りながら、途方もないほどの巨体が動くサマは圧巻の一言であった。
今までに相対してきたどんな魔獣よりも
「ワームは
「今がその産卵期というわけですか、それを討伐しようとは──"竜越貴人"アイトエル……やはり貴方は生粋の英傑なんですね」
俺はそう口にしながら──人知れず世界を守りし英傑に負けてはいられないと──魔力を遠心加速させていく。
「なに、やれることをやってるだけよ。とはいえ
コキコキと首を鳴らしながら、アイトエルの瞳の色が充血して一層の真紅に染まる。
そして彼女の周囲の魔力圧が、瞬時に研ぎ澄まされた一本の刃のように感じられた。
「それは……まさか、"竜の加護"?」
「ほう、ベイリルにはコレがわかるか。おんしも"白の加護"を得ている身ゆえかの」
体温と心拍数が上昇して血流が速くなり、筋肉がギチギチと
「もっとも