異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「──直接会ったのはそんなとこですかね」
「なるほどのう、今となっては
「そうですね……もし叶うなら、今の状況を打破できる新たな英傑が生まれてくれればとも思いますが──」
個人でどうにかなる話ではない。暴走と枯渇という魔力災禍に対する一つの回答は、"時間"である。
かつて神族の時代から暴走によって魔族と人族が生まれたように、仮説が正しいとすれば無色の魔力が充実するまで魔物に
英傑に相応しいだけの人物が新たに生まれても、
「ベイリルよ、おんし自身が英傑になろうとは思わんのか」
「俺、ですか?
アイトエルは腕を組んで首を
「ふむふむ、では少し昔話をしてやろう。"最初に英傑と呼ばれた者"の話をな」
「最初の英傑……つまり
言うまでもなく
他人語りをする
「あいにくと
「貴方よりも前に、英傑と呼ばれた人物がいたんですか?」
「
「なんと──」
神話時代を生きた者の口から、とんでもない事実がサラリと出てくるのに慣れることはないのだろうなとつくづく思う。
「名を"アスタート"と言った──そして
「最初、の転生者──? そんな時代から……」
ありえない話ではない。7000年も前とはいえ、時間軸が必ずしも並行しているとは限らない。
「あの男が来るまでは、ヒト種もまた頂竜が築いた平和と秩序の
「おぉう……魔法を創ったのか」
ともすれば天才の
さらには結果的に人類を大陸の支配者として隆盛させた、正真正銘"最初の革命者"。
「頂竜は七色竜──当時は十二色と傘下の竜や獣を率いて戦った。しかしヒト
「耳が痛いです」
「たとえば"この靴"のように自由に転移して強襲したり、距離や障害を無視して竜の
どこかで聞いたことのある効果に、俺は頭の中で羅列させ思い出していた。
「天候を操ったり、あらゆる干渉を拒絶・反射させ、不死身にあかせた特攻劇。挙句の果てには戦死した竜を蘇生させ、利用することもあった」
(
アイトエルが身に着けている"
仲介人《メディエーター》が着けていたという"
「もっとも過程はどうあれ生存を懸けた戦争じゃ、悪辣じゃったが卑怯とは言うまい。学習した竜族も同じようなことを仕返したわけだしのう」
「同じこと?」
「竜族は捕まえたヒトの一部を捕虜として生かしておった。その中には、かよわき乙女だった
「かよわい……」
「そこに引っ掛かるでない。でじゃ、頂竜は捕虜に自らの"血"を分け与え、ヒト種への
「意趣返しとしては当然ですね」
「何百人と輸血されたが、生き残ったのは
ずっと昔にシールフから少しだけ聞いていた話だった。
「それが
加護を受けたわけではないが、直接的に竜血──それも頂竜という獣の王の血を取り込み、受け継いだ者。
「簡単に言ってくれるなや。最初は拒絶反応と副作用が酷く、まともに魔力運用もできんかった。完全に慣らすまでに何千年掛けたことか」
「失礼しました、ただ──適合したことを呪ったりはしてないですよね……?」
今のアイトエルを見る限りでは、補って余りあるほどエンジョイしているように感じる。
「そうさな……最初は本当に
「なによりです」
「ちなみにシールフが
「なるほど、魔力は血に溶け込みやすい──シールフの"読心の魔導"をもってしても、その頂竜の魔力色に干渉することはできなかったわけですか」
魔導に対する天然の防御壁。
あるいは心が読めないからこそシールフは、エイルと同様にアイトエルを対等以上の存在として置いたのだろうとも思う。
「なんにせよ、当時の
「生きた心地はしなかったでしょうね……」
ただの一般人が、それこそ精神まで見通すという
「うむ、そんな死地にあって
「そこで名前が出てくるのですか」
「竜族はヒトから学んで
「つまり
スパイを送り込んでくるなら、その存在を逆手に取ってこそである。
「ヒト種は万物を消失させうる魔法によって、竜族もろとも多くの生物を一掃する計画すら立てていた。しかしアスタートにとって、そこまでは望むべきことではなかった」
「人間の
身につまされる。
強大な
「ゆえにアスタートは
俺の中で、いつか白竜イシュトと緑竜グリストゥムが語ってくれた、神話の時代と話が繋がったのを感じる。
"人化"の秘法によって世界に残った七色竜と一部の竜族の他、それら以外の頂竜を含んだ竜族が別天地を求めて別れたという物語。
「その為に転生者であったアスタート、あやつにはあやつだけの魔法があることを竜族へと示したのじゃ──それこそ"
アイトエルの口から発せられた魔法名に俺は驚愕し、思わず座ったまま身を前へと乗り出すのだった。