異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「
「
「ヒト種から見れば敵性種族の追放。竜族側からすれば、己が種族を裏切った新天地への導き手──」
両面にとって戦争を終結させたまさしく"英傑"。
「最初こそ英傑として祭り上げられたアスタートじゃが……しかし、"初代神王"として世界を統治しようとする"ケイルヴ"にとっては
「……
「実に
「そうか、ケイルヴ・ハイロード。
「うむ。とはいえ転生者であるアスタートはそういった機微にも敏感だったようでな」
「明確に睨まれて厄介者として排除される前に、行動に出た……──
歴史的にはケイルヴが初代神王である以上、アスタートは何らかの形で
であれば彼の取るべき選択肢は……話の流れからして、ほぼほぼ一つに絞られる。
「実際には帰還できなかったがの」
「えっ死んだ、んですか……? それとも失敗して次元の狭間で未来永劫さまよい続けるみたいな──」
あまり……というか、後者に関しては絶対に考えたくない想像であった。
「ベイリルは"アカシックレコード"という言葉を知っているか」
「えぇはい……過去から未来まで、ありとあらゆる情報の記録。"集合無意識"とか"阿頼耶識"とか似たような概念もいくつかありますね」
「アスタート本人は"
(単なる情報がエネルギーを持つ……? 確かなんかの実験で──"マクスウェルの悪魔"だったか、熱力学第二法則の否定だとかなんとか)
「宇宙全体が魔力の源となる粒子によって、脳のシナプスのように繋がっている総体じゃと言っておった。要するに、
世界それ自体を、情報として
「そもそもの発端じゃが、アスタートは地球へ戻ろうにも"基点"となるものを知らなかったゆえ、今のままでは故郷と繋ぐことが難しいと──竜族を送り出した時に感覚的に理解したようじゃ」
もし地球が今いる宇宙と同一ではなく、まったく違う次元にあるのなら──時間と空間と座標のようなものを特定する必要がある。
「知らなかったが、あやつには知識を得る為の理論があった」
「……それが、
「そうじゃ、アスタートは隠遁し没頭するようになった。ついには
「ありがちな考えだと……もしかして地球への帰還ではなく、
「あぁ、まっこと大バカなことよ。あやつは真に"神の座"を求め……そして、自らの魔法で渡ってしまった」
魔法の開発から仮説立て、理論の証明と実践。はたして彼が正常であったのか異常であったのかはわからない。
最初の転生者であったとされる彼は、分野は違うものの大魔技師と並ぶか……まさしくそれ以上の天才だったのだろう。
「結果、あやつは……"情報生命体"となった。伸ばした手は
「より高次の存在へ、ということでしょうか」
いわゆるSF的にはシフトアップとも言われる、ある種においては"進化"とも呼ぶべきもの。
フィクションに慣れ親しんでいるので感覚的には理解できるものの、現実的に定義する為の頭脳を俺は持ち合わせてはいない。
「意図したものとは違ったが、たしかに"真に全知の神"に近い存在にはなったであろうな。じゃが世界に干渉できるわけではない。全能どころか無能と言えるかも知れぬな」
つまりは
莫大な情報量に耐え切れなかったのか、単にそういう性質の超情報空間なのか。
「ちなみに
「……そうでしたか」
するとアイトエルは、少しばかり
「ついでにあやつが分解されゆく
「つまりそれが……貴方のどこか未来を読んだかたのような知識のカラクリだったわけですね」
「いや、違う」
「うん……んっ、えぇ!?」
あっさりと一刀両断に返された俺は、やや間抜けな表情を晒す。
「たしかに
さらりととんでもないことを言ってのけるアイトエルに、俺は平静を保つ暇すらなくなる。
「
「なんのことはない。何年分も貯め込んだ魔力を使って、ほんの少しだけ引き出せる程度よ。頂竜の血と鍛えた
軽いことのように言うが、限界があるにせよ全知の書庫に自由に入って、知識を引き出せるということに変わりはない。
「あるいは──アスタートが本当に消滅してしまったのかを、確かめたかったのかも知れんな。最初に魔導を発動させた時に、悲しくも真実はあっさりと理解できたがの」
「言葉もないです」
アイトエルは特に悲観的な様子も見せることなかったが、スクッと立ち上がって遠く空の彼方を見つめた。
「なんにせよ、アスタートが英傑であったことは不変の真実。そしてその伝統は……今もなお続いている、少なくとも
俺もアイトエルに続くように腰を上げ、彼女の壮絶な人生の一端を知れたことにただただ恐縮する思いだった。
「はてさて。いささか思い出話が長くなったが──そろそろ核心へと迫ろうか、ベイリルよ。おんし自身のことをよく知った、
なんとはなく心臓がにわかに高鳴りはじめ、喉が渇く感じがして俺は唾を飲み込んだ。
「ずっと以前にも話したか、