異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
(
いつだったか、モーガニト領ではじめてアイトエルと会って話した時に、断片的に語られた話。
地球の英語の
「もっとも詳しく説明するつもりはない。おんしには
「……?」
「
早まった動悸がドクンッと大きく跳ねて、そのまま心臓が停止したような心地だった。
俺は……その言葉──
「ブリック・ヴィンケル……その意味は、"第三視点"」
「うむ、当然知っていよう。なにせ
ドイツ語で"別の視点"を意味するBlickWinkel──しかし俺の知るそれは、"四次元の視点"を意味する。
仮にその点自身に人格があったとして、自分自身を見ることはできない。
そこで座標をもう1つ追加するとどうだろう、点と点を繋ぐことで"線"ができる。
すると"一次元"の線からは、己の上に連続している点という存在を確認できる。
次に線を認識するなら? 線を連続させた"面"にすればいい、つまりは"二次元"の世界である。
さらに平面を自由に観測する為には面を連続させ、"三次元"の視点である"立体"となれば可能となる。
それこそが今いる
絵や本を鑑賞する自分──であれば簡単に想像がつくだろう。
そして本の中の登場人物は、自分が本の世界の住人であることを自覚することはない。
しかし
一方で
点が連続したものが線の一次元。
線が連続したものが平面の二次元。
平面が連続したものが
そして
それが"四次元"の視点という考え方の基本となる。
(人は一つの瞳だと空間把握能力を損なってしまう──)
実際に片目を閉じて日常生活をしてみればわかりやすい。
厳密には色味や明るさなどの要素が関係してくるものの、片目だけだと距離感がわかりにくくなって、物がスムーズに取れなかったり体をぶつけてしまったりするだろう。
人は2つの目玉でモノを見るからこそ、
ならば3つの眼──すなわち"三つ目の視点"があったなら?
人は立体を超えた四次元へと
それは単に物理的に目玉を増やせばいい話では当然なく、
超常的な瞳の存在──その"第三視点"という概念こそが
「英傑となれ、ベイリル。
「まさか、俺が……?」
アイトエルの言っていることを頭では理解しているのだが、思考が追いつかない。
(つまり俺が──俺こそが"
だから情報提供されたアイトエルは、俺のことを俺以上に知っていた。
当然だ"未来の自分"から、過去の自分のことを教えていたのだから。
俺は第三視点として過去のアイトエルと会い、今の時代の俺の為に未来の知識を受け渡していたということ。
それが真実であるのなら、俺の考えた通りであるのなら……世界を、皆を、俺自身を──
「
「理解できてきたか? 先刻、少しだけ語ったが……ある
「つまり魔法なら──」
第三視点を開眼し、四次元存在へと
「そうじゃ、振り返る必要はない。おんしはおんしだけの
第三視点を手に入れるということは、
時の流れという連続した世界を自由に
("時間遡行"──過去へ戻って、歴史を修正することができる。それが
「もっとも実際にやるなら、何万年か何十万年かわからぬが桁違いの魔力を貯め込む必要があろうな」
「えっ──」
「同一時間軸を一方通行ではなく
「あの……」
「さらに言えば肉体を持っていくこともできぬじゃろう」
「いやちょっとッ!」
今から何万年と溜めるなんて気が遠すぎるし、そもそも貯留する器が存在しない。
暴走と枯渇で世界の魔力源も怪しく、さらに肉体なしの精神だけで時間を旅するというのか。
「ぬっはっっはははは、なぁに安心せい。その為に
「それは……つまり協力してくれる、と?」
「無論。ベイリルが過去の
とにかく方法はわからないが、少なくともアイトエルには算段があるようだった。
それもそうだろう、
「
(──ッ、それはすなわち失敗も視野に入れていたということ。つまり今この未来も織り込み済みでの話か)
「さしあたって仮に魔力を100万年かけて貯め込んだとして、その魔力で戻れるのは同等の100万年分くらいかも知れん」
いかに第三視点と言えど、魔法を発動・維持するのには
魔法は全能に近くとも、決して全能ではなく。エネルギーによってその出力の限界が決められてしまう。
「……それだと起点とした時間に戻るだけですね。あるいはそれをさらに何千何万回とループを繰り返して、少しずつ戻るとか、あるいはコツを掴んでいくというのはさすがに……」
心が
この400年弱だけでもかなり参っているというのに、万年単位を何度も繰り返すなどそれはもう人間の精神状態ではない。
「じゃから短期間で集める必要があろうな」
第三視点の魔法が可能だとして、それには必要な前提条件を揃える必要がある。
莫大な魔力を貯留する器。絶対的な
「俺にはそもそも貯留する器がありません……」
魔力容量に恵まれている
「おんし自身に器はなくとも、
アイトエルはそう言いながらコツコツと爪先で地面を叩いたのを見て、俺はすぐにピンッとくるのだった。
この物語を書き始めた時から考えてやりたかったネタの一つ、実に長い旅路でした。