異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
地上部に露出したワーム
俺はカエジウスと並んで歩きながら、会話に興じる。
「遠い昔──
(唐突な
「満足に動くことすら困難なこの身が歯がゆかった。周囲からは哀れみだけがあり、日に日に精神は摩耗し、いつからか渇望し続けていた」
「……健康は何物にも代えがたいものですね」
しかし興味深くもあり、機嫌を損ねたくもないので、俺は適度に
「あれが欲しい、これが欲しい、それが欲しい、なにもかも欲しい──そうして一つの境地、"魔導"へと辿り着いた……」
「何の魔導かお聞きしても?」
「"奪う"こと」
スッと左手が俺の肩に乗せられると、それだけで俺の
「っお――」
"
「欲しいものは奪った。
「カエジウス
魔導を解かれたことですぐに立ち上がった俺は、カエジウスに追従しつつ"天眼"で魔力色を見る。
おそらくは"
(魔力色が濁るから限界はあっただろうが、逆に言えば"
凶悪の一言に尽きよう。さらにはそんな魔王具を、あっさり俺に引き渡してくれたことが驚きであった。
もはや無くても問題ないのか。迷宮踏破の願いを叶えるべく貸与してくれたのか。"
「長き眠りから目覚めたワームであっても、奪う対象であることに変わりはなかった。しかしいささか甘く見ていたことは否めず、追い詰められる状況になった」
そこでカエジウスは立ち止まると、ジッと俺の
「――あっ、もしかしてそこで第三視点が出てくる……?」
「正確には第三視点によって導かれたとのたまう"竜越貴人"に、だがな」
「アイトエルを仲介役に……」
「だから直接知るわけではない。しかし他ならぬ"竜越貴人"がそう言う以上、キサマが第三視点とやらなのだろう」
カエジウスは歩みを再開し、俺は後ろではなく再び隣側を歩き出す。
「"
「それで返してくれた、わけですか」
今の俺にはまったく身に覚えのない魔王具の返却。しかしそうした過去の積み重ねによって、今この
「ワームから奪った膨大な魔力で、さらに意思と水分を奪い尽くしてやった」
「そうして残ったのが
完全に死んだわけではなく生体ダンジョンとして機能するワームが、遠目にも巨大にそびえている。
「あれは……人生の結晶だ。
奪うだけでは得られぬものがあると知った。弱き身だったころを思い出し、今後は
「それがワーム
"無二たる"カエジウス、一人の英傑の成り立ち。
「これが思いのほか楽しく、のめり込んだ。いつしか街が作られ、後からやってきた帝国を叩きのめし特区と勝手に定めてきて、収集した財宝の中で"コレ"を見つけた」
言いながらカエジウスは、首元のチョーカーのようなものを触る。
「魔法具"
(オシャレで着けてるんじゃなかったのか……)
ファンキーな爺さん、というわけではなく。カエジウスが所有していた二つ目の魔王具。
「コレは魔力で上回る相手に対し、強制的な契約状態に置くことができる」
「ということは……対象から魔力を奪えるカエジウス
「あぁ、色々と
カエジウスは単なる便利用品のように言っているが、実際はそんなレベルの組み合わせではない。
相手の魔力を
("黄竜"ですら最下層のラスボスとして使役できているのは、二つの魔王具とカエジウスの魔導の
街中の犯罪奴隷も、邸宅の庭やワーム
あまりにもチートすぎるコンボ。純然たる強度を誇った英傑達とは、また違った
「コレも欲するか?」
「滅相もないです。第三視点を開眼する予定の自分には不要です」
邸宅前に近付いてきたところで、カエジウスと共に俺は跳躍して外壁を飛び越え、広いテラスへと二人で着地する。
その中は――以前にも見たことのある――カエジウスの玉座がある、だだっ広い部屋であった。
「まさか……というか、やっぱり
スタスタとカエジウスが歩いた先の足元で、ボヤーッと光って浮かび上がる紋様。
「いつだったか"銀髪の女エルフ"が交渉を持ち掛けてきて、その知識の一部を奪ったことがあった。契約の魔法と併用することで、ようやく実用に至ったものだ」
「迷宮改装には有用この上ないですね」
迷宮最下層で黄竜を倒した時、帰還用の何かがあると思っていたがやはり存在していた。
後々になって理論的に可能性は低いかとも思い直したのだが、実のところカエジウスは進んだ技術を持ち得ていたのだ。
(契約魔術との併用か、ほんと魔の道ってのは単純なようで奥が深い……)
少しすると次第に光が増していき、じきに目を開けていられなくなるのだった。