異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「アスタートは、少女が一人だけ……と言っていたのだが」
今現在、この世界でもっとも高き位置にいる男──ヒト種を率いて竜族に戦争を吹っ掛けた男が口を開く。
(まさかの初代神王となるケイルヴと鉢合わせるとはな、神話の時代ってのは半端ないわ)
ケイルヴ・ハイロード。
黄昏色らしい魔力は第三視点の状態では見ることができない。
またジェーンの直系の先祖という話もあって、その瞳は魔力色を見られるそうだが……。
なんにせよ第三視点としての
「見ない顔だな」
「やっほー」
「……」
イシュトは相手が知らないのをいいことに、竜とヒトとの
一方でブランケルは表情には出していないものの、怒りと憎悪が滲み出ているようだった。
『アイトエル、もう一度体を借りるぞ。それとヒト族陣営でどういう振る舞いをしていたか読み取るから、俺に伝わるように思い出してくれ』
(うぅ……わかった、おねがい)
ケイルヴは
同時に俺は想起されたアイトエルの記憶情報から、どう話を組み立てていくか考えを巡らす。
「そっちの貴様がアスタートが言っていた少女で間違いないな……? どこかで見たような気がするが、誰だったかな」
状況から察するに、アスタートは自分が消えた後のこと……1人ぼっちになったアイトエルの処遇をケイルヴに任せていたと思われた。
アイトエルの記憶からすると、その扱いはぞんざいなものの──俺が
「私はアスタート様のお付きをしておりましたアイトエルと申します」
「……それなら、どこかで見たことがあったかも知れんな」
「ケイルヴ様がどのようなご用向きで、私をお探しになられたのか主人からは伺っておりませんが……」
アスタートはアイトエルを憎からず思っていたことがわかった。
そしてアカシッククラウドへ出発する前にも気を回し、あのケイルヴに頼むほどの大切な存在であったことは疑いがない。
「そうだろうな、アスタートはそういう奴だ。そしてどうやら既に世話もいらないと見える……が、そっちの白いのと黒いの。名前と所属を言うがいい」
「ケイルヴ様、この
「黙れ、
居丈高で高圧的、それも不思議はない。
いずれ神族を名乗り、その初代神王となる男なのだから。
「でも──」
どうにか抗弁しようとするも、殺意がみなぎる眼光で
いかに頂竜の血があれど、まだまだ
「もういい、下がっていろアイトエル」
すると黒竜ブランケルが、
「そうだねぇ、もう仲間だもん。守ると決めたからね。そのかわり困ったことがあれば、いつかわたしたちも助けてもらうからさ。頼り頼られ~」
(っ……!!)
『ほらな? こういう
イシュトさんは言うに及ばず、
「答えない上に、何のマネか。……貴様ら、何者だ? 何様のつもりだ」
「ヒトではなく──
「いやっ、ちょ……ブランケルさん!?」
隠す気もない黒竜に、さすがに俺はリアクションを取らざるを得なかった。
「竜、だと? 何を言っている」
「ケイルヴ──ヒト種の首魁。ならばおれのことも、少しくらいは覚えがあるはずだ」
ズズズッと両手に闇黒を
「バカな……ありえない」
「目の前の現実を認識できないほど、おまえたちは劣等だったのか?」
ケイルヴはギリッと歯噛みすると、直後に真顔になって口角を上げる。
「……どうやら、本当に本物か──アスタートのヤツめ、この我をまんまと
「誰のことを言っているのかは知らんが、おれたちは争うつもりはない」
言いながらブランケルは一度
「なに? 貴様ふざけているのか、黒竜ッ!! 小賢しくも
ケイルヴの周囲を包み込むような膨大な魔力の高まりを感じ、パキパキと空気が音を立て始めるが……ブランケルは至って平然としたまま答える。
「因縁も恨みもある。だが"おれたち"は、その
「そーそー。"わたしたち"はあなたたちの治世にも文句は言わないし、ちょっかいも出さずにヒッソリと生きてくつもり。お互いに干渉しない、それでいーじゃん?」
「そうか白いほうは……白竜か。揃いも揃ってふざけたことを」
「もう一度言うけど本気だよ? ヒトは竜に勝った、そっちも恨みはあるだろうけどさ。これ以上争っても良いことなんか一つもないよ」
(歴史としてはどうなるんだこれ……俺はどう立ち回るべきなんだ)
逆説的に考えれば俺がどのように行動したとしても、その結果が後の歴史として成り立って未来の俺が存在しているはずなのだが……。
だからといって軽率な行動をすべきでもない。
どこかで過去を改変する以上は、必ず何らかの形で結果が現れるのだから。
「
「あっははは! あんまりわからずやだとさぁ……ケイルヴくん、
(いや、イシュトさん
一瞬にして空気が凍るような威圧感。あのイシュトさんが怒るなんて初めて見た。
そりゃ付き合いとしては短いのだが、まったく想像がつかなかっただけにギャップが凄い。
「降り掛かる火の粉であれば、払わねばならん」
「そういうこと」
しかしいかに七色竜の二柱掛かりとはいえ、おそらくは当代最強クラスの
(それにまだ
人の姿のまま"現象化の秘法"を含めた全力を使いこなせていたのは、俺が会った頃のイシュトさんだけだ。
それ以外の六柱は、基本的に竜の状態と比較して使える
互いに牽制し合うように、沈黙したまま事態が
(どうするの……? ねぇどうするの!?)
『落ち着け、俺も考えてる──』
最悪の場合は、
(俺だって、遊んできたわけじゃない)
100年の昏睡を差し引いても、実に300年以上……
数え切れないほどの生物の肉体から発せられるありとあらゆる情報を、心理と感情すらも"天眼"で読み取ってきた。
そうだからこそ、いつだってつぶさに観察してきたからこそ
「ふゥ……──」
俺自身の肉体であったなら、それで"風皮膜"を