異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
初代魔王ウィスマーヤが自分の魔法を魔法具とすることを頭の中で組み立てている中──アイトエルが口を開く。
「ところでグラーフよ、そっちの10人はどのような魔法を使うのだ?」
「
「大昔は顔色を
「年の功あってもさすがに難しいですか」
「うっさいわ」
ゆる~い会話をしながら、グラーフは一人ずつ操作死体を前に出していく。
「まずは"自己遍在"の法。己を増やすことで、犠牲を
「あ~~~破壊工作をしまくってた奴か、竜側も手を焼いておった」
("
「次に"不動転移"の法。あらゆる場所に飛べたとか」
「あっちこっち盗みに入ってた奴じゃな、捕虜の脱走の手引きもしていたようじゃった」
(俺の中じゃアイトエルを象徴するものだな)
「続いて"万里神眼"の法。全てを見通すことができたらしく」
「間諜であった私にとって、最も恐るべき魔法だったのう」
(知らない魔王具だ……"折れぬ鋼の"が持っていれば、救われる人がもっといたかもな)
「"荒天災禍"の法。無制限に操られた天候はさぞ壮観だったでしょうな」
「"現象化"の秘法の模倣元の魔法か、結果としてヒト側は相手に利する発想を与えたことになったな」
(神領を閉ざしていた魔王具。あれの
「"勇壮不死"の法。伝え聞くところによると、誰よりも果敢に戦ったそうで」
「一度捕まっておったな、もっとも転移使いによってすぐに解放されてしまったが」
(イェレナが譲り受け、俺も使ったやつだな。帝国に保管されていたらしいが……)
「"力勢反転"の法。戦場において生涯無傷だったそうですが真偽は?」
「直接見たことはないが……なんでもかんでも反射して、涼しげだったらしいのう」
(これも知らないな、反転──反射か。見つけられれば何か応用できんもんか)
「"千変万化"の法。彼は双子で同じ魔法を使ったとされていて、片一方は意思なき巨人となって神領を守護しております」
「
("
「"心意支配"の法。使役し隷従させる魔法ですな、同じ神族同士でも近寄りがたかったそうな」
「最も
("無二たる"カエジウスが保有する、簒奪の魔導と相性
「"消滅天秤"の法。
「なるほど……それが頂竜らに新天地へ向かうことを決意させた、
(つまりエネルギーの発生しない
「"生命譲渡"の法。
「その魔法使い本人が、こうして操られているのは皮肉なものよのう」
("
「――んでんで、わたしの魔法"魔色相環"と合わせて11個。結局収まりが悪いままだ、まっいっか」
思考を巡らせながらもしっかり聞いていたらしいウィスマーヤの様子を見て、俺は疑問符を浮かべる。
『っ──あれ?』
(ベイリル、どうかしたか?)
『いやぁ……魔王本人が思い付かないのなら、俺から言うしかないのか』
(よくわからんが、伝えたいことがあるならいくらでも言ってやるぞよ)
タイムパラドックスは今さらであるし、バタフライエフェクトもこの際は気にする必要もないだろう。
「ウィスマーヤ、ちょっといいかえ」
「なになに?」
「残り一個余っているなら、新たに創ってみるというのはどうだろ?」
「……ほほう? アイトエルくわしく」
俺はアイトエルの言葉を通じて、未来の知識を過去へと伝達する。
「たとえば──おんしの魔力の"循環抱擁"を、魔法具として落とし込んでみるとか」
「あぁーーーおぉーーーなるほど、イイネ! 創作意欲をくすぐられる。ってかアイトエル、よくわたしの魔力操法のこと知ってるね?」
「んん? あ~~~ちょっと考えてみればわかることよ。
「アイトエル、意外と頭良かったんだ」
「失敬じゃ」
「魔力の循環はともかく、
「
枯渇から端を発したエルフ種たるグラーフの感覚は、ハーフエルフの俺にはよくわかった。
暴走から端を発したヴァンパイア種であるからこそ、フラウも"
「発案者として言わせてもらうが、せっかくなら
「剣……?」
「ほら耳飾りや指環だの、装飾品ばかりじゃ面白みがなかろう」
「いや、うん……なるほど。たしかに循環と抱擁を再現するには、単品だけじゃ無理だし――そうだなぁ、三つくらい必要かも。そうなると剣ってのは案外丁度いい」
(初代魔王ウィスマーヤ、まじもんの傑人だな)
断片的な情報から、循環器・増幅器・安定器の3つの要素をすぐに察し得ている。
大魔技師やリーティアと比べて、誰が歴史上最高かまでは俺にはわからないが──魔術を開発したことといい、
「どうやら長引きそうですな、こうなったらとことんお付き合いしましょう。新たなる創造と展望、これほど胸がはずむことは……そうありませんから」
◇
まず最初に"
続いて優先された"
"
"
次々と魔法具は形を成し、最後に"
「美事よウィスマーヤ、実に天晴れ」
「壮観ですな」
「ありがと、二人とも。いろいろと手伝ってくれて助かった」
役目を終えた
『いやぁ俺も感無量だな。やはり
(私も久方振りに熱を上げた気がするってものよ)
「それじゃ、どう分けようか?」
「
「うん、そんなもんだね。私は残り物でいいから、好きなの持ってって」
「なんだ、渡りをつけただけの私にもくれるんか」
「もちろんだよ」
「愚問ですな」
「なんせ素材集めや、クッソまずい料理の分もあるし」
「一言余計じゃい」
「さっアイトエルどの、お好きなモノを」
「ふ~むそれじゃあ……──」
『
(うむ、私もそれが一番便利そうだと思った。
アイトエルは裸足になりながら跳躍し、机の上に並んだ靴へと着地して履く。
そしてその場から動かず、元の位置へと転移して戻る。
「決まったようですな。それでは
「へぇ~意外だね、グラーフ。"消滅天秤"なんて物騒な魔法使いの死体を連れて来た割に、
「
グラーフはそれぞれ、剣と
「そうそう、敬意を込めてこれらは"魔王具"──と呼ばせていただきます」
「
「まあまあ、
「まったく……それじゃ残りはわたしが預かって──」
残り物を眺めながら、ウィスマーヤの言葉が止まる。
「どうかしましたか?」
「うん。わたし自分で"魔色相環"の魔法が使えるのに、
「おんしが使わんでも、他の誰かが使えるだろう?」
ウィスマーヤは少しだけ
「あげる」
「ふむ、私の取り分は一個だけじゃなかったか?」
「個人的な譲渡だし、昔何度かお世話になったお礼とでも思って。それになんとなく……
(言われているぞ、ベイリル)
『……光栄なことだ。俺は未来の知識を前提にちょっとヒントをあげただけなのに』
「よろしいのではないですか、アイトエルどの。貰えるものは貰っておいて損はありますまい」
「ふっ……それじゃ遠慮なく頂いておこうか」
──初代魔王と後の二大神王、そして魔王具の誕生。
歴史的瞬間に立ち会った俺は次なる潮目を目指し、