異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
──四次元の精神体でしかない"
その光景は何度も見たはずだった。
実際に一度体感したことで、記憶を精査する為にシールフの読心によって心象風景を何度も振り返った。
赫炎に燃ゆる故郷、無造作に撒かれた肉片。
黒煙と、血が蒸発したような匂い。
森が消失していく音、途切れていく怒号と悲鳴。
肌を撫でる熱気。入り混じった味。
『災害や疫病、魔物や魔獣……数え切れない戦争と戦災、
(やはり己が身の上で起きたことだと、心持ちが違うか)
『あぁ──しかも座して眺めてなきゃいけないってのは、なかなかに
故郷アイヘルを襲った"炎と血の惨劇"、事前に止めることもできた。しかしそれはしない。
ここも一つの分岐点ではあろうが、この時点から修正された違う
『ただ
(なにやら曖昧な話じゃのう)
『アイトエルに助けられたってのは聞いてるからまぁ……時期的にも十中八九間違いないと思う』
(んじゃれば、ぼちぼち
地獄のような
「んん~? キミはだれだぁ?」
かつて童子だった俺を足蹴にしてくれた仮面の男は、ゆっくりと歩いて間合いを詰めるこちらに気付く。
その隣には両膝をついてうなだれる母ヴェリリアの姿があった。
「子供……いや、違うかね。
仮面の男の言葉は、ピンッと指で
一直線に飛んだ指弾は仮面の額部に命中し、走った亀裂から瞬く間に真っ二つに割れる。
「むぉ──!?」
『"
「おんしが
反射的に顔面を抑えて隠そうとした
「
大仰に両腕を広げた
「無事に幕引きを迎えたいところだったが……なに、即興劇も歓迎しようではないか」
「おんしの安っぽい舞台で踊る趣味はないかのう」
「ははっははははははッアハハハハハハハハ!! 興味深い意見だ、なかなかの悲劇だと思うのだがね──なるほど、狙いは彼女のほうか」
「……何のマネじゃ?」
「トボけても無駄だ、観察眼なくして脚本と演出はできないのだよ。わずかに視線が向いたのを見逃すような
「よく見ておるのう、少しばかり認識を改める必要があるようじゃ」
「──んだがッ!! そんな三流役者であっても、演出が良ければ十分に盛り上がるというもの!! さあ立ちたまえヴェリリアくん、"彼女がキミの子供を
「あ……ぁ──」
瞳の焦点は合わないまま表情を歪ませ、ヴェリリアが明確な敵意を向けてくる。
「ほう、ヴェリリアや──
「ふーむ、それっぽい反応をしていたから当てずっぽうではあったが……やはり子供を奪われた母、で正解のようだ」
クツクツと
『アイトエル、母さんは洗脳されている』
(わかっとる。ただ荒療治も必要じゃろ)
「キミたちがどれほどの仲かは知るまいが、ハハハッ相争うサマを見せてもらおう」
「あ、ぁ……あぁぁあああァァァアアアアアアア!!」
半狂乱の様相を
最短距離を真っ直ぐに、地面を削りながら剣勢をつけて斬り上げられる。
「さあさあ! さらなる悲劇を、彼女に与え──……は?」
「言ったじゃろう、おんしの舞台には付き合わんと。争いになどなるわけがない」
アイトエルの右手には特大剣が握られ、左手には気を失ったヴェリリアの首が掴まれていた。
「なに、が起きた? まさか
「ご大層な観察眼とやらも、
"無刀取り"──武芸万般を自称する
彼女にとって、素人の目に映らないまま白刃を奪い取り、瞬間的に
ヴェリリアとて長き冒険者としての経験と修練あれど、アイトエルとの差は歴然であった。
「なっ、くッ──三流役者が実に
「だーかーら、演じたつもりはないと言っておろうが」
「いや待て、映らない演技になんの意味がある……? 時間が飛んだような演出としては──それを一つの流れの中に組み込むのであれば……」
「筋金入りのド
ブオンッと特大剣を放り投げ、
「おぉ──!? っと……待て待て待ちたまえ、少し話をしようじゃないか」
こちらを制止するように
「どうだろうか、報酬ははずもう。その力量と演技──は今後の成長を見込みつつ、
「上から目線が過ぎるのう」
「そこは仕事の上下関係、区別はつけるべきだと思うのだが?」
「はぁ~……もう付き合ってられんわ」
マイペースな
「どうしてもダメか?」
「断る」
「残念だ……では、
「む──」
「
「それでいい、
"死の気配"とも言うべき濃密な圧力を前にするも、アイトエルは涼しい顔を崩さない。
「歯ごたえがありそうだ、小娘」
「おんしのほうが間違いなくずっと年下じゃぞ、小僧」
「……そうか、いやどのみち些末なこと。久方振りに闘争らしい闘争になりそうだ」
「立ち姿だけでも随分と腕が立つようじゃが、これが役者が違うというやつかの」
あるいは今現在この地上世界において、最も命を奪ってきているであろう
かつて西方魔王として名を
今この場にある惨劇の地にて、何十あるいは何百と殺してきてなお、血の一滴にも染まっていない
("
俺はかつて皇国の"大要塞"で相対した名を、心の中で思い出していた。