異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~   作:さきばめ

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#485 提案 II 

「──テクノロジーと文化の発展を見続ける。人類の進化、その文明の果てをいつまでも見届けたい」

 

「その為に小賢しく画策してるわけか」

「新たに生を受けたんだ、男なら上を目指すもんだろう?」

「うるせえ」

 

 かつてヴァルターが語った言葉を、少しだけ形を変えて俺は口にするも一蹴される。

 

 

「どうやって勝つつもりだ」

「モーリッツ麾下(きか)軍、モーリッツ派貴族、サイジック領軍、モーガニト兵、自由騎士団、騎獣民族軍、ワーム海賊船団といった兵力を総動員するだけだ」

 

 さらには飛空島(スカイ・ラグーン)を利用した移動拠点という高所の利。

 その他テクノロジー兵器や、各種支援。竜騎士団といった隠し札も用意してある。

 

「挟撃、あるいは囲むわけか。そんな上手くいくと思ってんのか」

「言ったろ、人材は既に揃っている」

 

 局所制圧可能な伝家の宝刀。戦術指揮を担える有能な将。有機的に接続し広域戦略を成り立たせる為の仕組みと技術。

 一国を丸ごと相手するまでは無理だが、モーリッツと組んで帝国の東をいただくには、十分すぎる勝算をもって(のぞ)める。

 

「カッ、お手並拝見しろってか。随分と恵まれてやがるようだな」

「ふっ……俺は俺で()()()()()()()()からな」

 

 "第三視点"として種を撒いてきた。将来の為の布石を置いてきた。

 時空を超越した(えにし)と、運に恵まれたがゆえの現在(いま)である。

 

 

「はぁ~~~ったく、どうするかね。ここでベイリルてめェの言葉を易々(やすやす)と信じるほど……オレ様はお人好(ひとよ)しじゃねえ」

「悩む必要はない、実質的には独立して動くわけだからな。こっちはこっちの領分を伝えただけ。分割統治の提案はしたが、後は情報を吟味(ぎんみ)した上で好きにしてくれていい」

 

 俺は牙を()くなら掛かって来いとばかりに──不敵に、煽るように──口角を上げた。

 

「コッチがどう動こうと、用意があるっつーわけか? あぁあぁ、いけ()かねえなあ。やたらオレ様を知ったような(クチ)を叩きやがるしよ」

「もちろん備えは(おこた)らない。それと俺は、ヴァルターお前のことは嫌いじゃあない。つい同郷仲間意識でだ」

 

 ヴァルターの3つの言葉に、俺は3つの言葉で返す。

 

「チッ、まあとりあえずいい。ただオレ様に都合よく動いて欲しいってんなら……一つだけやってもらおうか」

「万丈の聖騎士オピテルの打倒……皇国を追い詰め、神器を引き出し、戦帝を足止めしたところで"折れぬ鋼の"をぶつける策を実行したいと」

 

「なッ……!?」

「だから戦帝はこっちでどうにかすると言っているだろうに、いやあるいは俺ごとやるつも──」

 

 一瞬にして伸びた影刃が、俺が(かわ)した場所を通り抜けていた。

 

 

「避けたなベイリルてめェッ!! やっぱり心を読めやがるな、このカス野郎がァ!!」

「いやいや回避したのはただの実力だ。まぁそう思い込んでもらってもこちらに不都合はないが……俺もインメル領会戦で同じようなこと──"折れぬ鋼の"を呼び込んだからな」

 

「ッッ……そう、か。アレはてめェが考え、実行したことだったのか」

「戦帝が王国軍を蹂躙した後の余勢(よせい)()って、反攻侵略にでも動かれると復興の邪魔だったからな」

 

 実際には未来を知っているからこそではあるが、現状揃っている情報からでも推察できないこともないので言い訳をつらつら並べ立てる。

 

「ちなみにワーム迷宮を踏破して制覇特典を得たこと、さらに今回の皇国侵攻戦を提案したのもヴァルターお前だったこともノイエンドルフ閣下から聞いている」

「あのお喋り元帥(ジイさん)──」

「まぁまぁ俺もお前も同じ転生者──野望や考え方も……少なくなく似通(にかよ)っている部分がある。だからなんとなく次の行動も読めるのさ」

 

「ああそうか、つまりこれは同族嫌悪ってことか。よォ~くよく理解したぜ」

 

 ヴァルターはペッと唾を吐き捨て、椅子へとドカッと座り込んだ。

 

 

「で──戦帝をどうするつもりだ」

「殺す」

 

 ヴァルターの問いに対し、俺は淡々と、ストレートに口にした。

 

「はッ……はははっハハハハハッ!! "円卓殺し"だけじゃ飽き足らず自ら帝王殺し(・・・・)ってわけかよ」

「せめてもの礼儀のつもりだ」

「殺す相手への礼儀だァ? 欺瞞(ぎまん)もそこまでいくと滑稽(こっけい)が過ぎるぜ」

 

「個人的な感情で言えば、取り立ててくれたことも、その明快で一貫した気性についても好感が(まさ)る。が、戦災を撒き散らす害獣(ケダモノ)は──駆除しなきゃな」

 

 パチンッと指を鳴らして飛んだ"風刃"が──テーブルの上にある戦略模型に置かれた──戦帝と思しき大駒(おおゴマ)だけを器用に切断する。

 

 

「ヒュゥッ! 言うじゃねえか」

「悔いが残らないよう、真っ向から討ち砕く。それが俺にできる……せめてもの手向(たむ)けってもんだ」

「くっだらねェ感傷だ」

「帝王殺しの功罪も好きにしてくれていい。ヴァルター(おまえ)の功績にしてもいいし、第一王女(エルネスタ)第二王子(ランプレヒト)になすりつけてもいい」

 

「そのまんまベイリル(てめェ)の罪にしてもいいってわけだよなァ?」

「あまりにも動機の薄過ぎる伯爵(おれ)()せたいならご自由に。証拠を残すようなこともないしな」

 

 継承戦という名目だけでなく、何かしらの大義名分が欲しいヴァルターにとって、俺が殺したとするのはせっかくの好材料を捨てることに他ならない。

 

「まっいいさ、本当に殺せるかは疑問が残るところだが……精々利用させてもらう。日和見を気取ってる中央の金満大貴族どもの首根っこも、この手で掴んで引きずりだしてやらあ」

「それが双方にとっての上等だ。まずは状況を今少し単純(シンプル)にしてから、改めて俺達は雌雄を決しようじゃないか」

「言いやがる」

 

 するとヴァルターは指で肘掛けをトンットンッと叩きながら、思考を巡らしているようだった。

 

 

「おう話が終わったんならとっとと出てけや。てめェに頼むことはもう無いんだからな」

「一つだけ、戦帝の正確な位置を知りたい」

「っあーーー拠点は一応ココだが、いるとは限らん。あの野郎は動き回るのが常だからな」

 

 ヴァルターは座したまま影を使って、切断された(コマ)の半分を戦略模型上で動かす。

 

「万丈の聖騎士もそこらへんということか」

「だろうな。つってもあの野郎は奇襲を軸にしている以上、そう簡単に尻尾は掴ませないだろうぜ」

「"折れぬ鋼の"は?」

「……たしかに番外聖騎士さまを呼ぼうとしたのは事実だがな、んな上手くはいかなかった」

 

 はんッと言った様子で溜息を吐くヴァルターに、俺はニヤリと笑って告げる。

 

 

「──嘘だな」

「てめェ……」

「だから心は読めないぞ。カエジウスにも会ってきているから、群体魔物と契約したことも知っている」

「あれもこれも、ほんっとイラつかせやがる」

 

「まぁ視線や表情筋、声の抑揚や呼吸、心音や体温といった生体情報から真偽を見抜く程度もワケないけどな」

「バカ正直に、んなことを曝露するってのか」

「その程度はバレても問題ない。むしろ知っていれば手間が(はぶ)けるだろう。ただ今後の為にも、ポーカーフェイスはもう少し鍛えておいたほうがいいぞ」

「うっせえ」

 

「それじゃぁな、お互い気張っていこう」

 

 聞きたいことを知れた俺は、ヒラヒラと手を振りながら無防備に背を向け、悠々とその場を後にするのだった。

 

 

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