異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
俺は
打ち倒せないことを前提とし、フラウの新技によってこの星から追放する──それが
「はぁ~~~……
「悪ィ、アタシももうキツいわ」
フラウは大の字に倒れ、赤と黄の髪割合が元に戻ったキャシーは肩膝立てて座り込む。
「つーかTEK装備もボロボロだ、リーティアからは試験運用だから壊してもいいって言われてっけど」
「データを集めるのも大事なことだからな。黄竜素材も補充できたし、"折れぬ鋼の"相手にあの大立ち回り──安い代価だろう」
「あーしのやつは"折れぬ鋼の"には意味ないどころか、ただの的になりかねなかったからな~。出番はまた後でだぁ」
俺がTEK装備の調整を頼むとすぐに、リーティアは作りかけのものを実戦試用できるまでの形にしていった。
キャシーの"
"
「とりあえずの大勝利! ベイリルもキャシーもおつかれ」
「フラウこそ。お前に頼らざるを得なくなって、すまなかったな」
「つか
「あぁ……俺も未来と比べて
"
拡張された魔力容量はもとより、あの
「……? どったのベイリル、そんなに見つめて──あーしに惚れ直した?」
「うん、惚れ直してるとこだ」
「おまえら恥っず!」
異なる未来において、結社の"
そして規格外たる頂人にカテゴライズされる常識の通用しない"折れぬ鋼の"を無力化せしめたこと。
「嫉妬しないでよ、キャシーってば」
「そんなつもりはまったく無ェ……」
幼少期の俺のオトギ
リーティアとはまた別方向──実戦的な魔導分野における天才の
「ただフラウ、前にも言ったが──"自家中毒"にはくれぐれも気をつけてくれ」
「あーーー未来のやつね、ちゃぁ~んと注意しとく。それにベイリルがいなくならないなら、あーしも気張る必要もないし」
「もういなくなりはしないさ」
「
「うんうん。それにね、別の未来のわたしも……悔いは残っても、きっと幸せだったと思うよ~」
「もっともっと幸せにしてやる。フラウもキャシーもハルミアさんもクロアーネも、生まれてくる子供達も、俺と
俺は
「じゃあ"折れぬ鋼の"は?」
「人類の規格に当てはめていいのかは疑問が残るところだが……テクノロジーが進めば、いずれ再会できる。そん時は今日の日のことを平身低頭全力で謝るか、笑って誤魔化すさぁ」
いつになるかは具体的にわからない。
ただ是非とも生きている内に、違う形でもう一度相対したいものである。
「つーかよ、ベイリルはまだ余力があんのな?」
「ん、まぁこれでも一応は"魔法具"持ちだからな」
「ずっりィ」
魔王具"
初代魔王本人と違って発動にも魔力が必要な為に、
「う~ん……ってかあーし、数日くらいは魔術使えないかも」
「オイオイ、まじか。体は大丈夫なのか」
「だいじょぉーぶ。ただ単に吐き出しすぎた反動かな~? なんとなーくだけど、確かな予感ってやつ」
「戦争が終わったら、一度サルヴァ
「そーする~。単純に慣れてないから、体がビックリしちゃってるだけな感もあるけど、戦線は回復するまでお休むね」
「あぁ、くれぐれも無理はするなよ」
自家中毒の初期症状の可能性もありえるものの、フラウ自身がずっと戦い続けてきた歴史がある以上は悲観的にはなる必要もなかった。
「なら
「
「負けんなよ」
少しばかり戦略は狂ったものの、軌道修正は特に問題はない。
「さて、それじゃぁ俺はもう
俺は黒・スライムカプセルを撒いてから一気に吸い込み、魔力を染色充填しながら答える。
「今の俺に
◇
「──……匂うな」
「がっはっは!! こりゃあ気付きませんで、スマンことでしたなあ"戦帝"。おい"風水剣"、ちっとおまぁの水で洗ってくれんか」
「ん、ワカッタ」
長い黒髪に黒瞳、重厚な鎧に身を包んだ恵体、左肩から指先までを
帝国の頂点、"戦帝"バルドゥル・レーヴェンタールは吐き捨てるように言う。
「アホ、"熔鉄"。そうではない」
「むっこりゃしたり?」
"熔鉄"と呼ばれた身の丈の数倍以上の鉄塊を背負う髭面のドワーフの男はふんっと鼻を鳴らした。
「
「わかるか"刃鳴り"」
「言われれば……程度のものですが──」
狐人族の男はその隻腕で、鞘入りの大刀柄頭に手を掛ける。
「どわっ!? やめんか風水の! わいの匂いではないと"戦帝"が言っとったろうがい」
「ドッチにしてもクサイ」
「まったく……まあスッキリしたからええかのう」
たどたどしい発音の魚人種サメ族の女、"風水剣"は生成した水を"熔鉄"へと容赦なく噴射し終える。
"戦帝"と直属の近衛"三騎士"、帝国における最強の遊撃部隊は緊張感なく話し続ける。
「おまえたち、聖騎士だと思うか?」
「我らを
「んう~む、ありえないとは言えんわなあ」
「……ダレデモ、倒すだけ」
「そうだな、誰であれ敵は迎え討つとしよう」
戦帝は大きく息を吸い込んで、肺を引き絞るように吐き出す。
『隠れてないでッ!! さっさと来るがいいッッ──!!』
そう咆哮した瞬間であった。
勾配が激しく見通しの悪い荒野にて、突如として上空から
「ほう……」
それは直接攻撃ではなく、目くらましだということはすぐに察しえた。
瞬間的に見えた影は4人。大量に散った水がすぐに雨のように降り注ぐ頃には、既に三騎士の姿は消えて戦帝一人となっていた。
代わりに眼前に立っていたのは──巨大な盾を
「覚えがある。たしか"放浪の古傭兵"ガライアムか──直接戦ったことはないが……二度、いや三度。最初は確かヴァリマデ教区の
ゴギィンッと金属と金属がぶつかり合う音が、膨張するように急接近してきた老兵の肉体と同時に届く。
戦帝はそれをまるで予見していたかのように反応し、盾と盾の隙間を引き裂くように大剣を振り下ろし終えていた。
しかし剣は半ばで止まり、2枚の盾で白刃取りをされたような形で、体ごと大きく振り回される。
執着なく大剣から右手を離した戦帝は、爆発魔術を使うも──瞬く間にガードされてしまっていた。
「
「……問答がお好みか、戦の王」
「言ってくれる。どういう意図があるのかは知らんが……守勢の老兵がたった一人、このオレに勝てると思うなよ。闘争にまみれたその戦歴を味わい尽くし、斬って捨ててくれよう」