異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
尖った赤黒い髪をオールバックにした男──"明けの双星"兄オズマの、虹色に輝く右瞳が獲物を
「見つけたぜ、一発目で大当たりだ。どこまで見通してんだモーガニトさんはよ」
「ふ~ん、アレがそうなん。実際に見るとさすがに強そう、足止めか戦線一時離脱か再起不能っかぁ」
もう一人は同じ赤黒い髪を双つ結びにして、左瞳が虹色の彩りを持つ"明けの双星"妹イーリス。
双子はそれぞれシップスクラーク財団から選ばれ、特別に支給されている飛行ユニットを用いて滞空していた。
「対等に近い実戦は久々だねえ、腕が鳴るよ」
「……戦王」
翡翠色の髪をなびかせながら、"食の鉄人"ファンランは自ら作り出した水龍の上に鎮座していた。
さらにもう一人、"
「ガライアムさん、相手ぇ代わりましょか?」
「無用だ」
「いやアニキじゃ"戦帝"はそもそも無理っしょ」
オズマは笑いかけながら言うも、ガライアムに一蹴されたところをイーリスに突っ込まれる。
「うっせ! まあよ、お互い余裕があれば助けるっつーことで」
「余裕がない時だけ、遠慮なく助けを呼び合おう!」
「そうだね、みんなで美味い飯と酒分かち合ってこそ。死んだら食べることもできなくなるからね」
「……ああ」
「んじゃ
オズマは弓を引き絞りながら落下し、イーリスは飛行ユニットで大きく旋回しながら加速する。
ファンランは水龍と共に墜落していき、ガライアムは"
水龍が着弾した瞬間、オズマは溜めていた矢を"熔鉄"へと撃ち放ち、鉄球ごとぶっ飛ばしながら自身もそれに追従する。
最大速まで達したイーリスは、水塊に
ファンランは"
◇
「オマエぇえええ!!」
顔を歪ませながら、逆手二刀流を構えた"風水剣"は叫ぶ。
「ははっ相性が良いってわけじゃああないけどね、でも同じ
ファンランは乗ってきた水龍を勢いのままぶつけるも、風水剣は水龍の中を回転しながら切り裂くように泳ぐ。
「へぇ……あっさりと奪われたかい、魔術士としても一流のようだねえ」
そのまま真っ二つにされた水塊は──その質量をさらに増やしながら──新た二人を囲む大渦へと変化していた。
「シィィィャァァアアアア」
"風水剣"は回転を続ける大渦の流れを利用し、波乗りと潜水を繰り返しながら白刃が煌めかせる。
直線的な軌道を読み切ったファンランは、ただ偃月刀を当たる位置に置いておくだけで良かった──はずだった。
「なるほど……」
右の脇腹から吹き出た赤色が、水に混じって希釈されていく。
"風水剣"は水流で加速し……空中で軌道を変化させ、こちらの太刀筋の流れにも乗って一撃を加えてきたのだった。
「水中だけでなく
ファンランはグッと腹筋を固めながら
そうして無手のまま──己を
目利きするかのように全体を見つめ、空気と水と大地の匂いを嗅ぎ、取り巻く音を
料理人として厨房に立つのと同じように──
刃が肌に触れた瞬間、その右手首を捕まえる。ほぼ同時とも思える速度で、風水剣の返しの左も掴み上げていた。
「あいにくと……わたしの筋肉は、手首の振りだけじゃ通らないよ」
逆手の返しだけでは、皮一枚を切り裂くのが限度で突き刺すことも叶わない。
両腕を拘束された風水剣は苦々しい顔で、大きく口を開け──なんと肩口へと噛み付いてきたのだった。
「痛ッ……ははっ、美味いかい? でもわたしは食材じゃないし、調理してないものを食べさせるのも主義に反するってもんさ」
握力だけで両の手首を締め上げ、そのまま砕き折った。
苦悶の表情を浮かべて、肩から離れた風水剣の
次の瞬間──周囲を回転していた大渦が、水流を伴う竜巻へと変化して収束していく。
(近接を封じられたら即座に魔術とは。判断が早いし、なかなかキツいねえ……けど)
もみくちゃにされながら、呼吸のできない"水嵐"の中で、ファンランは掴んでいた右手のみを離す。
その解放された一瞬の内に、風水剣は折れたままの手で左刃を振り抜いていた。
(東派
首を
打ち抜いた衝撃は風水剣の肉体へと浸透し、肺の中の空気が逃げられないまま破裂するかのように膨張する。
「──ッッ」
空気の代わりに、音も無く吐き出された風水剣の血反吐が、水流の中で希釈される。
さらに空から降ってきた"大水龍"が、その
衝突によって巨大な水溜まりとなり、中央には水龍の核となった
「"水龍一刀勢"──すまないね、手加減する余裕はなかったよ。ベイリルやレドなら、きっと上手くやれたんだろうけどねえ」
絶命した風水剣の両手から、それぞれ離れた2本の剣が血と水の中に沈む。
ファンランは自らの得物を一気に引き抜いてから、遺体を水の上に横たえた。
「何十年後か、何百年後か……もし生まれ変わりがあるのなら、ご馳走してあげるから許しておくれよ」
出血多量でフラつく体を
「自然では人間だって食材とはいえ……やっぱり人殺しってのは
ひどく陰鬱な心地にさせられる。
こうした思いは今回を最後にして、以後は人を喜ばせる為だけにこの腕を振るっていきたいと……そう願うのだった。