異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
両雄、激突す──
相性が良くも悪く、噛み合いながらも噛み合わない。
たとえ爆発でも受け流せるほどに研ぎ澄ましてはいるが、しかして大小織り交ざる衝撃波の連発によって風も一方的に散らされてしまう。
爆発──爆轟現象は火薬による爆燃とは違い、分子そのものを振動させる膨大なエネルギーの発露である。
その範囲内では破片剥離が体内で引き起こされ、肺臓や中枢神経、もっと直接的にも四肢や眼球などが破壊されてしまう。
直接的な爆風と衝撃波だけでなく、破壊され高速で飛んでくる瓦礫片による二次被害。
さらには吹き飛んだ
異世界基準の頑健な強度と魔術をもってしても、それは容易に防ぎきれるものではなく。
"
恐るべきは術者本人も例に漏れない爆発の被害を、近接戦闘で使いこなすほどの精緻極まるコントロールと反射神経・耐久性にある。
小細工など不要、とばかりに。
連綿と築かれた
数え切れぬほど重ねられた
実戦で鍛え抜かれた
取り巻く全てが強者たるを
伝家の宝刀級の実力をもって、帝国の頂点であるがゆえに自由に抜く暴挙が許される存在──戦帝バルドゥル・レーヴェンタール。
思考する暇もない、高次元の爆速戦闘。
発生した爆音は、そのまま共振増幅する必要なく相手へとぶち込む。
受け流しきれない衝撃波のダメージが、ジワジワと体に刻み込まれていく。
爆発を利用した加速剣撃、反転斬り返し。
左腕籠手で掴み掛かりながらの爆発、破礫を利用した散弾。
より直接的に追尾する連鎖爆破。
最善手を打ち続けるように、命そのものを燃焼し消耗させていくように。
ただただ
その瞬間、
「拮抗、しているか。それにしても味わったことのない苦痛だ」
「ただの音も大きくすれば武器となり、指向性を持たせれば兵器となる」
「音……なるほど、おもしろい」
二人ともダメージが
「戦帝の立つ戦場では雨が
「……いきなりなんだ? モーガニト」
雨雲など爆発によって簡単に吹き飛ばされてしまうから、という近年の対戦帝における戦争格言の1つ。
実際に曇天模様が局所的に晴れていたからこそ、あっさりと居場所を見つけることができた。
(やったことがあるかはともかくとして……)
戦略的に日照りを継続させ、意図的に飢饉を起こすような真似も難しくはないと思われる。
「天の采配──暗雲であろうと自らの手で晴らす、常々そうありたいものです。ただ……雨が
「詩人ぶった言い回しだな。オレの嫌いなモノの一つだ」
「俺自身が
言いながら俺は後ろ腰の短剣を抜き、刃部分を二本指で挟みながら持つ。
「実は俺も爆発魔術を使えましてね。どうです? ここは一つ
「ほう、随分と自信があるようだなモーガニト」
ニィ……と俺は笑みを浮かべ、さらに挑発を重ねる。
「お互いの
短剣をピッと上空へ放り投げた俺は、左右の親指・人差し指・中指を結合させて隙間から見据える。
「フッハハッハハハハッ!! 余興で勝負が決まってしまうぞ」
「闘争は娯楽でしょう? 伊達と酔狂、大いに結構じゃないですか」
「よかろう」
戦帝は大剣を地面に突き刺し、左籠手を真っ直ぐこちらへと向けてきた。
時間にして数秒ほど。しかし何十倍、何百倍と感じられるほど緊張感が高まり──短剣がコマ送りがごとく落ちてきて、地面へと刺さった。
──"爆界"──
──"
切っ先が触れた刹那、お互いに爆発魔術を
まるっきり同時に、相対距離からして完全に常軌を逸した規模の──大爆発と大爆発。
「ぐはっァ……ッッ、が──キサマ、わざと外したなモーガニト」
そして同時であったなら──破壊力は
戦帝は両膝をついて、籠手ごと喪失した左半身を見てからこちらを睨んでいた。
「いえ単純にぶつけ合った結果として
全包囲に拡散する爆発に
前提となる大気の螺旋多重壁に加え、爆発で生じた衝撃波を逆方向へと流し収束させる構成。
これは
(100年の昏睡から目覚めてから、大陸を奔走した300年弱。全てを覚えているわけではないし、忘れた部分も少なくないが……)
魔改造された肉体でもないし、感覚の齟齬や乖離も大いにある。
それでも俺の中で積算され、裏打ちされた技術が──根付いていたものが確かに存在するのだった。
「ハァ……ッゥ、単純な負け戦ではなく……オレ自身の死をもって最後となる
「座して死を待つか、自らその命を散らすか……それとも最期の
「ああ、受け入れるのも自死も
闘争の意志を瞳に宿し、残る右腕で立ち上がった戦帝は、体の動きを確認するようにうなずいた。
「ではおさらばです」
戦帝が最後に放つ──爆発を伴った右腕を、
衝撃波を織り込みながら回転と共に
「ゴフッ、ゥ……モーガニト。オレを踏みつけにして
「いつかあったはずの、肩を並べた