異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
#511 冥王と呼ばれた男 -The man called Pluto-
男は意志なき
そうして世界を見届けた男は、新たに時空を越えて……今度は自らその忌まわしき名を名乗る──
◇
「"
ベイリルは洞穴の奥深くに突き止めた、もはや男か女かすらもわからない人物に向かって話しかける途中でやめた。
顔が潰された四肢のない即身仏とも言うべきか、
視覚も嗅覚も聴覚も触覚も、味覚も機能していないだろう。
およそ人間が持つ機能のほとんどを
「未来予知──もしかしたらと思ったが、
結社を潰していくにあたって、真っ先に処理しなければならない最優先事項。
厄介な預言者の居場所を知る為に、ベイリルは持ちえた知識と
一時魔空へと流出してしまった
"大監獄"にて第三視点だったベイリルを"到達者"だと誤認した事実を利用して協力を仰ぎ、歴代の長──ヴロム派の
「コイツがヴロム派の
あらゆる世界の過去から未来までの情報が積算されている情報の大海にアクセスできれば、断片的な未来視も可能となる。
("第三視点"の魔法を開眼した俺自身と──)
"
そういった例外を除けば、本来は"魔空"へと到達するのにこれほどの代償を支払う必要があり、それでもなお未知数とも言えるもの。
まったく
「執念は買う。もはや結社に利用されているだけの道具なのかも知れないが……安らかに眠れ」
パチンッと鳴らされた指によって風刃が命脈を絶つと同時に、
◇
「"
「あぁそうだ、最初からこの結末は決まっていたんだよ。
ベイリルは風の結界の中で、コートを着た男を前に死を宣告する。
「ッ……待てよ、待ってくれ!
「残念だがお前は旧インメル領に伝染病を蔓延させ、治療薬と称して魔薬をばら撒いた──その報いは受けて然るべきだろう」
「アレは実験だったんだから仕方ないだろが! 俺《っれ》ぁなあ……誰もが幸せに浸れる、"究極の魔薬"の為にがんばってんだよ! わかれよッ!! みんなが救われる為なんだ!!」
「なるほど、それは面白い試みだな」
突き詰めれば人体は化学反応。
思考も感情も、シナプスを通じて電気信号をやりとりするニューロンに過ぎないとも言える。
もしも全員が副作用なく──あるいは無視して半恒久的に夢を見続けられるなら、
「ただ
スラリと抜いた"太刀風"に、
「話を聞けって! そもそも病気をばら撒いたのは"
「あぁ。人を救うことに無常の喜びを見出し、その為に自分で患者を作ることも
「は……?」
「"
「し……知らねえ名前ばっか出すな!! なぁアンタ、"
「
「わっけわかんねえって! アンタの目的が結社を潰すことなら協力する!! 俺《っれ》は役に立つ、立って見せるからさあ!」
「もう足りている」
風の刃がズググッと心臓へと刺し込まれていく。
「とはいえ、お前の
「ッ……が──」
財団に回収と後始末を頼む為の"使いツバメ"を飛ばし、ゆったりと深呼吸を1つしてから青空を見つめた。
結社を潰す作業が終わるまで、血に染まった手が乾くことはない。
「さぁ外堀は埋まった、天守と本丸を前に……内堀りを埋めるとしようかね」