異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
──人々の記憶から喪失した
遠い
右手の中指にはリングが
「よぉ"
「……!?」
音もなく近付いた俺に声をかけられたアンブラティ結社の
「キミは──どうしてここに、なぜ私のことを……」
「俺は"空前"のベイリル・モーガニト。結社員としての名は"
「はじめて聞く名だ……あいにくと私は結社の動向というものを把握していないものでね。わざわざ新入りが挨拶にくるとは、とてもめずらしい」
既にお飾りなのは承知の上で、首を横に振って否定する。
「いいや違う。さて──どこから語ったものかな。数百年後の
首をわずかに
「お前なら
「
「察しの通りだよ
「どういうことだ……キミは何者なんだ、どうしてそんなことまで知っている」
困惑の色しか浮かばない
「俺は魔王具であったお前が生まれた日にも立ち会った。そして結社の終焉──お前が消滅したその
「……私が、消えた日?」
「未来が予知できるだけの"
「それはずいぶんと──
「事実だよ。だから"
「彼女を……?」
「あぁ、そうだ。"神域の聖女"の姿を借りた、お前の"遍在"とも言える片割れ──二人の本体を同時に殺す」
「あまりにも核心を知りすぎている……つまり
「理解が早くて結構」
もはや信じざるをえないといった表情で、
「
「あぁ、そのまま消えてもらう。残るは
「そうか……終焉は既にすぐそこというわけか、それも仕方あるまい。我々はあまりにも──」
そこからの言葉は紡がず、
「せっかくなら、私の無様な
「殊勝だな」
俺は短剣を掴んで、鞘から引き抜いた。
魔力が込められた複雑な紋様が、暗い霊廟内でほのかに輝きはじめる。
「だがこの刃をお前の血で汚すつもりはない」
「……残念だ。それでも別の私が多くを話したのであろう、キミに殺されるのであれば是非もない」
「消滅してもらう前に──二つほど聞いておきたいことがある」
「答えられることであれば」
俺は受け取った鞘に刀身を納め、再び後ろ腰に取り付けながら問う。
「お前は十数年前に、一人のエルフの女性を操った。間違いないか?」
「あぁ、珍しく
「治せるのか?」
「やったこと自体は一時的なものだ。しかしそれによって生じたさらなる症状については……関知できない」
「なるほど、お前を生かしておく意義はないということだな」
「それじゃあもう一つ、最後の質問だ」
「なんなりと」
諦念の境地にいる
「これから俺の
「どう……いう意味、かね」
「今ならまだ取り返しがつく、少なくとも俺の感情の範囲内でだがな」
アンブラティ結社としての所業。それを踏まえた上で勧誘されていることを、
「たしかに……私にもまだ"魔法具"としての使い道くらいは残されているのか」
「そういうつもりで言ったわけではないんだが、まぁ──それでも構わない。破格の性能だし、人類の行く末を見届けるということに変わりはない」
歴史上で"神域の聖女"がそうしたように、使用者次第では多くの人間を救うこともできる。
「
「
「"文明開華"と"人類皆進化"を掲げ、
「よく、知っている。あるいは……その
本来であればアンブラティ結社が目指し、そうなりたかった姿の一つかも知れないと。
「ちなみに俺が創設者な」
「従おう。大魔技師が託したキミに、人々の新たな未来を体現しようとするアナタに……私のすべてを委ねる」
「あいにくと大魔技師とは、少しばかり同郷話を咲かせただけだ。短剣もあくまで手土産であって、託されたというほどのものではない」
「それでも私にとって、アナタは継承者だ。大魔技師が築いた世界の……そして私が願った──」
俺は指環を右手の中指へと嵌めつつ、声を発せない魔王具へと一言告げる。
「
こうして先んじて
アンブラティ結社の終焉は、王手が掛かった状態にあるのだった。