異世界シヴィライゼーション ~長命種だからデキる未来にきらめく文明改革~ 作:さきばめ
「ごめんなさい、ベイリル……本当にごめんね──でも、必ず戻ってくる。絶対に帰ってくるから、それまで待っていて」
それが──"最後に聞いた母の言葉"だった。
深く
何か事情があることは明白で、俺はその
振り返ることなく目の前から去る母の
見捨てられたとは思っていない、変わらず愛してくれていたことは理解できている。
ただ息子であった自分と同等か、それ以上の理由があったからこそ
◆
「っ――ぐぁ、ゴホッ……うぅ、ぅぁああガアアアアッ!!」
夢から
そして大きく息を吸い込んだところで熱気が肺を満たし、ようやくわずかに意識が明瞭になったところで困惑する。
「なっ……あ、なんだこりゃ――」
眼に映ったのは赤色と赤色だった。
"血"溜まりの上に俺の足が
思わずバッと体中を触って自分の状態を確認するが、さしあたって
この血が俺の血じゃなかったことに、とりあえず
(いや安心してもいられない……)
血ではないもう一つの赤色が、視界を埋め尽くしているのだから。
動画などとは違う、現実の"炎"を瞳に映しながら――
聴覚も戻ってきたのか、燃えて崩れる音と、喉が枯れんばかりの怒号や痛烈な悲鳴が聞こえてくる。
対岸の火事であったなら、どれだけ良かっただろうか。
しかし熱さと息苦しさは、明晰夢でもない
もしも地獄というものがあれば……きっとこの光景はその一つなのだろうかなどと、頭のどこかで──
(いや、あぁそうだ……)
――少しずつ思い出す。
唐突だった。あまりにも突然だった。完全な不意打ちであると言えた。
母の欠けた俺の生きている世界は……
いつものように朝に起床し、フラウを迎えに行こうとして家を出て――いきなり爆発音と衝撃波に襲われ、たちまち炎に焼かれたような気がする。
「フラウ……探さ、ないと。おばさんやおじさんは無事なのか――それにラディーアも、どこかで……」
母がいなくなってから一人になった俺は、リーネ
ヴェリリアの目的も行方も誰も知らない。
だからと言って、自立して世界へと旅立つにはまだまだ
いまいち身の振り方を決められないまま、新たな変わらぬ日々を送りながら……今この瞬間、死中に
「っはァ……ふゥ……――」
不完全燃焼によって生じた一酸化炭素を取り込まないよう姿勢を低くし、炎から逃げるように移動する。
もしも屋内で遭遇していたなら、たちまち命が失われてたに違いない。
亜人の住むここ【アイヘル】の集落は、広い森の中に作られたような立地である。
ひとたび山火事となってしまえば、その被害は拡大し続け、たちまち逃げ場も喪失してしまう。
「うぅ……くっ、そ――」
体温調節が
俺の異世界人生はこんな場所で、こんな形で終焉を迎えてしまうのかと……自然と
(また、死ぬのか……俺は)
そもそも前世で死んでいたかどうかもわからないが、今ここで死んだらまたどこかに転生できるのだろうか。
果たして転生できたとしてもまた人型であるのか、それとも動物か虫か草花か。
あるいは今度こそ死んで無となるか、便宜的に魂と呼ばれるものが異次元を
「ッあ──うっ」
思わず視線を向けるとそこには、胴体が真っ二つにされて焼け焦げた死体と……寄り添うように炭化しボロボロになった死体があった。
「死にたく、ない……」
心の底から出た言葉だった。己の無力さを痛感する。
人生においてこれほど間近に死を感じたことはなく、同時に考えさせられるようなこともなかった。
前世の現代地球においても、どこかの国では直面していた悲劇の一つだったに違いない。
少なくとも自分の周りは平和だった日本では無縁、自覚することなく
五体満足健康のありがたみを、病気や骨折などをして理解できるように……死を目の当たりにして、
自分の命も守れず、幼馴染を見つけることもできず、何もできないまま燃え尽きるのか。
新たに得た人生──何一つ
「
立ち上がろうとした、その時だった。
俺の首根っこが掴まれたかと思うと、そのままズリズリと引きずられる
「……!? ラディーア、よかった無事だったか」
顔を上げると、暗い桃色髪がそばかすが顔に残る鬼人族の少女がいた。
俺はグッと
「わざわざ探しにきた……のか?」
「うん別に、どうしてるかなって思っただけ。わたし、親いないし」
「孤児院のほうは……?」
「もう無い。わたしはなんとかまぬがれた。フラウは?」
「わからない、探すのを手伝ってくれるか?」
母ヴェリリアがいなくなって、より身近でかけがえのない存在となった
「聞くまでもない。なめないで」
「くっはは、そうだな……ありがとう」
火と煙で現在位置がわからない、だが俺がその場から動いてないのであれば……そう遠くはないはずなのだ。
「ラディーア、姿勢を低くするんだ」
「歩きにくい。急がないとなのに、なぜ?」
「"毒の空気"ってのは上へ向かうからだ、屋外でも吸い続ければ気を失う危険がある」
すると
俺はフラウ
多少の有毒ガスをものともしないのは、種族としての強度があるゆえだろうか。
「煙もヤバいが……熱さも死ねるな。さしずめ電子レンジか,、オーブントースターで焼かれている気分だ」
「なにそれ。たまに言う、変なこと」
「電磁波で水分子を振動させたり、電熱線の抵抗を利用したり、赤外線による放射熱──って、無事生き延びれたらいくらでも説明してやる」
「そ。とっとと見つけて、生き残る」
火事の恐ろしさというものが、
(急が、ないと……)
その時だった。
パチッパチッ――と、最初は枝か何かが
「ほっほぉ~、これはこれは……素晴らしい! いまだ
男の声――煙の中から現れたその人物は、中肉中背でベレー帽のようなものを
そしてその明らかな怪しい
しかし拳が届くよりも先に、いつの間にか高く上がった状態から
「ッガ――ぅ……」
「おっと、これはしたり。
ラディーアは衝撃で地面に縫い付けられるように、背中を踏みつけにされたまま動かなくなる。
「転じてこれも
眼前の明確な敵。
言動と態度から
「……お前が、引き起こしたのか」
「ふっ、ふっふふふフフフフフッ!
「さっさと、その汚い足をどけろ」
「んん? おっと、確かにいつまでも
次の瞬間、俺は明滅する視界とままならない呼吸に、顔面を蹴り飛ばされたのだと理解する。
「はっハハ!! さてさて"幕引き"までは……もう少し掛かるかな。いつまでもかかずらってもいられまいね」
「ッはァ……このっ、殺す。殺してやるッ!!」
そう口に出すも、到底無理なのはわかっている。それでも感情のままに
「復讐劇か、そういえば最近は
仮面の男はすぐに俺への興味を失ったように、トドメを刺すことなく炎と煙の中へと消えてしまった。
(
そうして俺の意識は、