戦術人形と指揮官と【完結】   作:佐賀茂

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そういえば、人形のレベル概念を最適化工程に置き換えて考えるの、先人が居たりするんでしょうか。
自分で考えたつもりなんですけど、割と説明付きやすいなーって自画自賛してる設定の一つです。先駆者が居たらごめんなさい。


20 -狩る者、狩られる者-

 うーむ、愚痴の一つや二つや三つや四つくらいぽこじゃか溢したいところなんだが、生憎そんな時間的余裕は無さそうだな。第三部隊下げておかなくてよかった、直ぐに指示が出せる。とりあえずお前ら格納庫行って全部隊分の車両と運転用自律人形の手配しといてくれ。で、順次出撃ね。カリーナを通さなくても出せるよう指揮官権限で許可する。

 輸送任務から帰ってきて早々で申し訳ない気持ちもあるにはあるが、まぁこんなの兵隊やってりゃ日常茶飯事とまでは言わずとも往々にして有り得ることだ。G11には悪いがもうひと頑張りしてもらうとする。流石にあいつも他所のことならともかく、自軍の部隊が危機とあってはそれなりにやる気は出してくれるらしい。例えぐずったとしても今なら助走つけてシバけるからな、自分から動いてくれて何よりだ。俺も余計なパワーを使わずに済む。

 

 第三部隊を走らせると同時、第一、第二部隊にも同様に緊急収集をかける。ヘリアントスはまだ余裕がありそうな表情をしていたが、現状だけを切り取ればともかく、今回は割と嫌な予感がしていた。いや、予感みたいな不確かなもんじゃないな、どうにも不可解な点が残る。正直、早急に対応するのが最適解なのかも微妙だ。だがしかし、一刻も早く救援を飛ばさなければ第四部隊が危ない。つまり急いで対処するしかないわけだ。困ったね。

 

 S02地区には現在、指揮官が存在していない。

 これは別に適任が居ないとかそういう理由ではなく、単純に一度占領されたS02地区の復旧が間に合っていないためだ。前任の指揮官が奇襲されてボコボコに負けたものだから、施設は勿論周辺の防衛陣地や壁なんかも凄惨な有様である。少なくとも、今俺が過ごしているように健全な指揮官業が務まるような環境ではなくなっていた。だからクルーガーも、S02地区の掃討が終わった後に作業員と防衛用の戦術人形を手配すると言っていたのだ。そして同時に、周辺に鉄血人形の気配がなかったからこそ防衛を最低限に抑え、復旧を優先して行うことが出来ていた。

 そんなところに、再度鉄血人形の強襲。それも侵攻するに十二分に足る物量を備え、予測ではあるがハイエンドモデルがセットだ。第二防衛ラインで持ち堪えられること自体がそもそもおかしい。今のS02地区における防衛戦力はG&K本部が配備した防衛用戦術人形とうちの第四部隊くらいのものだ。戦える人間はほとんど居ない、その大部分が作業員だからな。指揮官が存在していた時でさえ一瞬で崩壊したのだ。指揮管制モジュールを活かせる人間もおらず、最適化工程が多少進んでいるとはいえ、性能を十全に発揮出来ない人形だけで耐えられるはずがない。にも関わらず、第一防衛ラインは突破されたものの第二防衛ラインで踏ん張っている。否、踏ん張れる程度に手を抜かれている。そう判断する方が妥当だ。

 

 恐らく今回は、襲撃自体が何らかのブラフ。鉄血のオツムには次のプランが浮かんでいるはずだ。それを考えているのが現場で暴れているヤツなのかもっと上のヤツなのかは分からんが、多分後者だろうな。前回AR小隊が瞬殺したハイエンドモデルも、火力こそあったが戦術的な思考はお世辞にも褒められたものではなかった。より上位のやつが何らかの策を講じ、その第一手としてS02地区に再度強襲をかけた。このシナリオの方がしっくりくる。

 

 いやあ、キツい。罠だと分かっていても飛び込む以外の選択肢が取れないのはかなりキツいぞ。何が起こるか分かったモンじゃない。それに、これはほぼ確信に近い推測だが、ヘリアントスにはここまでの予測が立てられていない。あいつどう見ても内政官寄りだからな、戦術の妙ってやつにはあまり心得が無いのだろう。多分だが、S02地区の状況を見てこの推測を立てられるのはG&Kに所属している人間の中で恐らくクルーガーと俺くらいだと思う。別に他の指揮官連中を無能だとまでは言わないが、戦場に身を置いていないとこの手の予測はし辛い。G&Kに限らず、地方都市の統治に重きを置いていたPMCだと無理からぬことだろう。

 

「指揮官! 第一部隊、第二部隊揃いました!」

 

 声に釣られて振り返ると、そこには俺の自慢の教え子たち。色々と説明しておきたいところだが、今は最低限の情報伝達にとどめておく。相手の思惑がどうであれ、今まさにS02地区で戦火に曝されている第四部隊を見捨てるという選択肢はハナから無い。不安要素もあるにはあるが、ここで引っ込むわけにもいかないしな、やるしかあるまいよ。

 端的に状況と目的を伝え、一刻も早く現着するよう言い含めて彼女たちを送り出す。前回と違い、クルーガーのドローンサポートが受けられないのも痛い。一応出撃車両にうちのドローンを乗せて運んでもらうが、性能差が酷いからな、どこまで俺の目が届くかも分からん。ということで、現場に着いたら全員通信は常に入れておくように。

 

「どんなヤツが相手だろうが仕留めて見せるさ! 安心しな指揮官!」

 

 去り際、M16A1の力強い声が司令室に響き渡る。こいつらならマジで冗談抜きにやりかねないところが恐ろしくもありそして頼もしい。だが今回はS02地区の掃討がゴールじゃない気がするんだよな。どんなトラップがあるか読めない以上、俺もあいつらの戦力に頼って胡坐をかくわけにはいかない。だが、自分ではかなり精度の高い予測だとは思っていても、不確定な情報で彼女たちを無駄に不安に駆らせてしまうのもよろしくない。先ずはS02地区の奪還、第四部隊の救出だ。相手を押し返すことだけを考えてもらおう。そっから先は俺の仕事でもあるしな。

 

 

 

 

『こちら第三部隊。第一防衛ラインまで押し返しに成功。ちなみにハイエンドモデルの姿は未だ確認出来ず、よ』

 

 S02地区の状況に関しては、うちの部隊が到着してから急速に上向きつつあった。

 現場の状況が分からなかった以上とにかく部隊を向かわせてそこから考えるしか手が無かったんだが、いざ状況を確認してみれば、鉄血人形の連中、なんと規則正しく隊列組んでゴリ押ししてきているだけだった。確かに統率は取れていたから誰かが操ってはいるんだろうが、この手腕は前回のハイエンドモデルよりも更に数段酷い。レミングスの行進が如く順番に突っ込んできているだけなものだから、物量に対処出来るだけの技量を持った人形が集まれば形勢逆転は非常に容易であった。あえてそうしているのか、単純にド下手なのか。あまりに想定外過ぎてちょっと相手の考えが読めない。ただまあ、とりあえず第一目標はクリアだ。S02地区の中枢からは敵を遠ざけることが出来たし、一度持ち直せばうちの部隊ならそう簡単には突破されまい。

 MG5をはじめ第四部隊の救出も成功した。というかあいつらはあいつらで元気に的当てしていたから思ったより大丈夫そうだった。トンプソンはずっと前に出て盾の役割をこなしていたのか、2体居たはずのダミーも穴ボコ状態で地面に横たわっており、オリジナルである本体も相当な傷を負っている。が、致命傷には至っていないようで活動に問題はなさそうだ。トンプソンの活躍もあってか、他の部隊員に目立った損傷はない。一番錬度に劣るIDWとm45でさえほぼ損傷無しで切り抜けられているのだから、トンプソンには感謝しかない。ほんとあの頑丈さどうなってんだろうな。ロケランでも死なないんじゃないのあいつ。ムチャクチャ堅いわ。

 

『……ッ! ナイン! 避けろォ!!』

 

 突如、通信機越しにM16A1の怒号が響き渡る。何事かとスクリーンに目を見張れば、旧式ドローンが映し出した画面の端、白い波のようなものが超速度で第三部隊に迫っているのが見えた。

 その声を受け取ったナインは、優秀なAIであることを示すように俊敏な反応を見せる。が、オリジナルは思った通りに動けても、ダミーまではそうはいかなかった。コンマ数秒、遅れて動き出したナインのダミーに白い波が襲い掛かる。一瞬の間、突然の脅威が過ぎ去った後には派手に地面に転がったオリジナルのナイン、そして胴体を真っ二つに切り裂かれたダミーが力なく横たわる様が映し出されていた。

 

『っちょ……!? な、なにコレ……!?』

 

 常に自分の調子を崩さないはずのナインの声。そのはずのそれが、確かに揺れていた。

 

 な、なんじゃあれ!? 一瞬でナインのダミーがぶった切られたぞ!?

 旧式ドローンの低い解像度では何が起きたのかサッパリ分からない。ただいきなり白い波が画面に現れて、それに飲み込まれたダミーが死んだ。あまりに速過ぎて、結果しか理解出来なかった。

 

『方位0! 距離70! 数1! 推定ハイエンドモデル! 指揮官!!』

 

 いち早く視覚情報を確認したM16A1の手短かつ要領を得た報告が飛ぶ。こいつのメンタルは元々凄まじかったが、更に磨きがかかっている気すらしてくる。ほんと頼りになるやつだよお前は。おかげで俺も冷静さを取り戻せた。

 十中八九、今の攻撃は鉄血のハイエンドモデルに拠るものだ。こんな馬鹿げた必殺技を放てる人形が何体も居たらこの戦争、とっくの昔に負けている。ドローンの高度を少々調整してM16の報告どおりの距離を映せるようにすれば、そこには鉄血の量産型に比べて二回りは大きい、一体の戦術人形らしき面影。細部までは確認出来ないが、右手に馬鹿でかいブレードを持っていることは分かる。多分あれがさっきの攻撃の正体だろうな。斬撃飛ばすってアニメか何かかよ。前回の浮遊兵器といい、鉄血の技術力ヤバいな。あれがI.O.Pの人形と同じ数居たら勝てる気がしねえぞマジで。

 

 だが、これで目標がはっきりした。アイツが今回の親玉だな。ブレードによる攻撃の威力は斬撃ですらアレだ、直接斬られでもしようものなら例えAR小隊でも一撃でお陀仏だろう。ここはAR小隊のダミーを囮としつつ適度に距離を取り、飽和射撃で一気に決めてしまおう。他の部隊のダミーでは錬度に不安が残り囮にすらならない可能性がある。事実、不意打ちとは言え最適化工程50%を超えるナインのダミーが反応しきれていなかった。第二、第四の錬度では無駄に犠牲が増えるだけだ。あいつらは一気に下がらせて支援射撃に専念させる。ハイエンドモデルの耐久度がどれ程かは分からんが、AR小隊の連中は当然ながらダミーも含めて無傷だ。前回のと相当な性能差が無い限りはこれでほぼ押し勝てるはず。

 

『―――――――――――――――――――』

 

 あれ? おーい聞こえる? ちょっとー?

 指示を飛ばそうとしたんだが、いきなり通信が聞こえなくなったぞ。ドローンは生きているから映像は届くんだが、あいつらの反応を見る限りこっちからの通信も届いていない。マジかよ。ここに来て故障か? いや、それなら全員の通信機が一斉にイカれるのはいくらなんでもタイミングが良すぎる。となると、ジャミングか。うーん、粋な真似をしてくれる。

 

 バンッ!!

 

「きゃああ!? し、指揮官さま!?」

 

 現場との通信が途切れると同時、そう遠くない距離で爆発音が鳴り響いた。通信が聞こえない以上、この音は直接俺の耳に響いたものだ。それもかなり近い。恐らく支部の外壁か、下手したら入り口辺りまで何かが来てやがる。

 俺とともにスクリーンを眺めていたカリーナが突然の爆音に驚愕の声を上げるが、今はちょっとそのフォローまでしてやる時間的余裕がない。強引にカリーナの手を引き、司令室から飛び出して直ぐ横の倉庫にカリーナを乱暴にぶち込んだ。

 

「し、指揮官さんむうッ!?」

 

 はいちょっと黙っててー。突然の事態に騒ぎ出すカリーナの口を咄嗟に左手で抑える。落ち着かせようと思って空いた右手で頭を撫でてやってみるものの、勝手に懐いてくる人形と違って、果たしてこれでいいのか疑問が残る。けど他にどうしたらいいのか分からんのだ、許せカリーナ。

 よし、落ち着いたかな。いいかー? 俺が、直接、声をかけるまで絶対に音を出すな。動くな。何があってもじっとしてろ。お前は今死ぬには若過ぎるし綺麗過ぎる。こういうオイシイ場面はおじさんに譲って、しばらく舞台裏で引きこもってなさい。オッケー?

 

 彼女の返事を待たずに、倉庫の扉をしっかりと閉める。カリーナは確かに若いが、頭は回る。今の状況で勝手に動いたりはしないだろう。この支部に人間は俺とカリーナしか居ない。他は戦術人形と、業務を行う自律人形だけだ。前者は現状全部引き払っているし、後者は例えぶっ壊されようが替えが利く。つまり、俺としてはカリーナさえ守ることが出来ればこの勝負、勝ちである。

 

「やあ、クソったれな人間。今日はいい天気だな」

 

 司令室に戻ろうとした矢先、聞き覚えの無い声が俺を呼び留める。どちら様ですか? と能天気なフリして振り返れば、そこには見覚えの無い体躯の女性。綺麗に整えられた銀髪が司令部のライトに照らされ、神秘的な輝きを見せる。しかしそこに魅了されるには、両の手に持つ無骨な殺人武器の存在が実に無粋だ。漆黒に染められたジャケットの下から覗くのは、大腿をこれ見よがしに露出させた蠱惑的なコスチューム。うーん、扇情的。いい身体をしているな。これが鉄血製の人形でなく一人の女性であれば、そこそこ心を動かされていたかもしれない。実に惜しい。

 

「どうした、逃げんのか?」

 

 いやあ、逃がしてくれないでしょ君。煽るような口調で余裕綽々に語りかけてくるが、今更この距離でそんな行動を取ったところで無駄である。第一俺の手には武器もない。カリーナを隠すのに必死で、我が愛銃UMP9は未だ司令室のデスクの下である。ただ、鉄血人形の頑強さを考えると9mm弾で勝てるとも思えないが。

 それに、コイツは今すぐ俺を殺すつもりではないはずである。もしそうであれば問答無用で撃ち殺して終わりだ。そうしないってことは俺の身柄か、俺の持つ情報かのどちらかに用事があるのだろう。わざわざ不意打ちを仕掛けず話しかけてきた時点でその目論見は割れている。

 

 ということで、バンジャーイ。どうせ抵抗は無駄だし素手で勝てる気もしない。自害するのは相手の情報を少しでも引き出してからで十分間に合う。生憎俺は電脳化していないし、物理的に俺の脳みそから情報を抜き出すのは難しいだろう。ま、そんな訳で好きにしてくださいな。

 

「……ふっ、スケアクロウのやつがしくじったのも頷ける。曲者だな、貴様は」

 

 スケアクロウ。案山子ってか。変なコードネームだが、多分前回AR小隊がぶっ潰したハイエンドモデルのことだろうな。まぁ今更予測するまでもないが、こいつもハイエンドモデルってことだろう。ていうか、うちの支部の場所ばれてたんだな。どうやって知ったんだろうか。抵抗しないから教えてくれない? ダメかな。

 

「簡単なことだ。貴様ら、スケアクロウの頭部を持ち帰っただろう?」

 

 わお、教えてくれた。親切かよ。つまり電脳にGPSか何か仕込まれてたってことだよなこれ。えー、16Labの方大丈夫かな。あっちに被害が行ったら流石に俺も困る。

 

「用があるのはAR小隊だけだ。貴様にはあいつらを釣り出す餌になってもらうぞ」

 

 ベラベラとよく喋るなお前。情報管理甘いぞって上司から怒られない? 先だってお持ち帰りさせてもらったスケアクロウさんは自爆という手段できっちり秘密を保守してたんだが、君今AIの風上にも置けない行動してるぞ。何がどう転がったら敵対している人間に作戦の目的やらターゲットやらを喋ることに繋がるんだよ。まあ、とは言っても俺には今その情報を伝える手段も相手も居ないから、俺だけが聞いているなら活かしようのない情報なんだが、生憎今の言葉が聞こえているのは俺だけじゃないんですよねえ。

 

 成る程なあ。今S02地区で暴れているのはうちの支部の戦力を引き出すための囮だったってことか。多分だが、スケアクロウから戦闘データなんかも送信されていたんだろうな。そうじゃなければ、こんなまだるっこしいことをせずに直接襲撃をかければ済む話だ。それをしなかったのは、ウチが保有する戦力を知っていたからに他ならない。同条件下でやりあっては勝算が薄いと踏んだのだろう。俺が言うのもなんだがあいつらの戦闘能力おかしいしな。頭のネジが1つどころか100個くらい飛んでる強さだもん。そりゃ警戒するよね。

 で、そんなジョーカーと真正面からかち合うのはいくらなんでも効率が悪いから、こうやって人質を取って無力化しよう、という腹積もりなわけだ。なるほどなるほど、ちょっとは頭の回るやつが上に居るようだな。俺から見ても悪くない作戦に思える。敵の戦力が高いなら、頭を抑えるのは常套手段だ。

 

 

「さて、ついてきて貰おうか。素直に従うことをお勧めする。間違っても逃げようなどとは思わないことだ。……何を笑っている」

 

 あれ、俺笑ってた? 言われて初めて自分の口角が僅かに浮いていることに気付いた。うーん、いかんいかん。最近あいつらと一緒に居ることが多いからついつい気が緩んでしまっているのかもしれない。というかよくこんな微妙な変化に気付いたな。こいつも中々の観察眼を持っているのかもしれん。

 まあ言われなくてもどっかに連行されるんだろうなーくらいには考えていたから、拘束すらされないってのは予想外ではあるがありがたい。別に逃げられるとも思ってないし、素直について行きますとも。多分、俺を人質に取りたいはずだから今すぐは殺さないと思うんだが、逃がすくらいなら当然殺すだろうな。俺だってそうする。このまま鉄血人形のアジトにでも案内してくれりゃ万々歳だが、流石にそこまで間抜けでもないだろう。どこか辺鄙なところに連れて行かれて、AR小隊たちをおびき出すための餌にするつもりなんだろうな。

 

 しかし、わざわざグリフィンの支部にまで乗り込んできてご苦労様である。

 俺に人質としての価値など無い。グリフィンからすれば、俺一人のために虎の子のAR小隊を差し出すなんて愚策には絶対に天秤が傾かない。あいつら個人個人がどう思うかは置いといて、組織としてそんなアンフェアなトレードに応じる必要性が何一つ無いのだ。そもそも、差し出したとして俺が戻ってくる保証もないからな。現状、AR小隊は替えが利かない。だが、俺という個人はいくらでも替えが利く。少なくともクルーガーがそこを見誤ることはない。

 

 俺とこいつが支部を離れれば、すぐさまカリーナが通信を入れるだろう。それで終わりだ。俺が声をかけるまで動くなと言ったからもしかしたら閉じこもっているかもしれないが、遅かれ早かれウチの支部が連絡不通になれば本部が気付く。それに、AR小隊が目的であればコイツの方からコンタクトは取ってくるだろうし。

 うーん、出来れば痛くない死に方が望ましいんだが、こいつに嗜虐趣味とかあったら困るな。そこらへんお願いしたらサクっとやってくれないかな。まぁ鉄血は謎のエラーで人類を憎んでいるはずだから、殺してくれーって言えば案外やってくれそうではある。最悪自害すればいいだけだし、まああまり気にしても仕方が無いか。

 

 

 

 思えば短い第二の人生だったが、それなりには楽しかったし良しとするかあ。

 じゃあなお前ら、達者でな。




おじさんの明日はどっちだ(投げやり


鉄血勢ではハンターさんとアルケミストさんが割とシコい派。デストロイヤーちゃんは愛でる対象。

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