筆者は今回あまりモチベーションが高くないため、とりあえずアーキテクトちゃんと遊び終わったところです。ダルい。
感想で頂いた言葉ですが、おじさんの心が低体温ってのに滅茶苦茶笑ってました。
今後もキンッキンに冷やしていこうと思います、よろしくお願いします。
「はっはっはァ! どーしたどーした! その程度じゃ当たってやれねェぞ!?」
「チッ……! ちょこまかと……!」
「あらゆる状況で使える武器、それを私自身が裏切るわけには……!」
「なるほど、こういうパターンもあるのか。I.O.Pの人形も一概に馬鹿には出来んな」
「大体が指揮官の受け売りだけどね~。技術、戦術、戦略! ってうるさいもの」
「ちょっと45。指揮官を見下すような発言は認められないわよ」
「やだなぁ416、アレは45姉風のジョーダンに決まってるじゃん。ね、G11?」
「ぅう……早く終わらせて眠りたい……」
とある日のキルハウス内。今ここにいるのは俺に加えて、ダネル、MG5、第三部隊の4人。そして、何故か俺の指揮下に入ってしまった狩人と処刑人という、本来であれば怨敵であるはずの鉄血工造のハイエンドモデルが2体だ。そいつらが二つのグループに別れてわちゃわちゃと訓練を繰り返している様を俺は無言で眺めていた。
ここ最近の支部周りの様子は至って平穏そのものであった。鉄血の連中が何故AR小隊を狙っているのか、そこは結局分からないままだが、まあ狙われているという情報があったとしてもこうやって今実際には狙われていないんだからすぐに気に病むこともない。狙われてから考えればいいや、なんて暢気なことを言うつもりはないが、実際能動的な情報獲得手段が無いのだから気にしようがなかった。狩人も処刑人も、その理由までは知らないということなので、量産型を鹵獲してAIを弄繰り回してたとしても多分無駄だ。あいつらはハイエンドモデルなだけあって、上層部とまではいかなくともそれなりには作戦の根幹に関わっていたはずである。その2体が知らないということは、鉄血の中でもその情報はトップシークレット扱いなんだろうな。
しかし、そう考えるとスケアクロウや処刑人、狩人を超えるハイエンドモデルも存在するということになってしまう。今のところ主にAR小隊のおかげで優位に立ち回れているが、そのうちトンデモ兵器を携えたやつなんかも出てきそうだな。電子戦に強いやつとか、グレネードぶっぱなすやつが居るってのは狩人から聞いたが、それくらいならまだ俺の常識で推し量れる範疇である。それ以上にぶっ飛んだのが出てこないことを祈るしかない。まあ、大体こういうお祈りって最悪の形で裏切られるんだけどさ。
支部周辺の情勢が平和だからといって、それはイコール暇を持て余しているというわけではない。直接排除すべき障害が今のところ見受けられないだけで、やらなきゃいけないことは何も戦いだけじゃないからな。
幸い、うちの支部は内地にある安全圏の支部と違って都市運営を行っているわけじゃない。今後支配圏が拡大し、この支部が前線という扱いじゃなくなればいずれ一般市民の流入もあるのだろうが、現状この支部の立ち位置は橋頭堡だ。だから、この支部が管轄している地域に一般市民は住んでいないことになっている。というのも、このご時世だ、国やPMCの庇護から零れ落ちて根無し草の生活をしている人間もそれなり以上の数が居る。この周辺にも恐らくは居るんだろうが、生憎そんな奴らの保護にまで回す手も時間も余力も、G&Kは持ち合わせちゃいなかった。まぁG&Kに限らずどこのPMCでも無理だろうけど。
そんなわけでうちの支部に課せられた役目というのは専らに荒事なのだが、その荒事も先日一段落ついて久しい。だが、これで全てが終わったわけじゃあないから、次の荒事に備えて色々と準備していかなきゃならん。そのうちの一つ、戦争屋にとって最も重要なのは兵隊の錬度だ。これを上げていかないことには継続した勝利というのは難しい。無論数も大事だが、いくら数だけを揃えたとて、タダの烏合の衆では意味が無い。皮肉にも、その理屈は戦争屋の相手である鉄血工造が証明してしまっている。最低限の数は大前提だが、やはり決め手は質だ。
ということで、今はその質を上げるためにこの平和な期間を使って訓練に勤しんでいるのである。ついでに、狩人と処刑人の暇潰し兼親交を深めるためにあいつらにも参加してもらっている。
見てて思うんだが、あいつら意外と馴染んでるな。特に、過去のしがらみなどをあまり気にせず割り切れるタイプの人形とはよく打ち解けている。404小隊なんかはその最たるものだろう。そこの思考回路だけで言えば、AR小隊よりも切り替えが早い。あいつらのような存在は、コミュニティ全体における潤滑油のような役割も期待出来る。一つの集団にああいうタイプは絶対に必要だ。特に俺たちは学校の仲良しグループなんかとは訳が違うからな。
肝心の訓練内容だが、折角の鉄血のハイエンドモデルなのでその性能を活かし、普通なら出来ない訓練を行うことにした。即ち、ダネルやMG5といった重火器を扱う人形の実戦訓練だ。鉄血人形はトータルの性能はともかくとして、1体1体の耐久度で言えばI.O.P社製のそれを凌駕している。ハイエンドモデルともなれば尚更だ。うちのやつらで言えばトンプソンがかなり堅い部類に入るが、それでも比べ物にならない。以前、AR小隊の連中が狩人を制圧していたが、あれは有り得ないレベルで防御力の無い箇所をピンポイントで撃ち抜けるからこそ出来た芸当だ。普通は無理である。あいつらがぶっちぎっておかしいだけだ。
そんなわけで、処刑人にはダネルとMG5との遭遇戦訓練を行ってもらっている。フラッグ戦のような通常のルールではなく、あいつら向きにちょっとルールをいじくったやつだ。処刑人はダネル、MG5の射撃を躱し、距離を詰め、ブレードの攻撃範囲まで近付けば勝ち。ダネルとMG5はその前に一定以上のダメージを与えられれば勝ちという滅茶苦茶シンプルなやつである。
鉄血の人形はI.O.P社のものと違い、エッチング理論を適用されていないため、いわゆる最適化工程のような実力を可視化出来るシステムが無い。戦闘能力は俺の予測でしかないが、低く見積もって404小隊の連中とトントンというところである。I.O.P社製の人形で言うところの50%は越えている程度の力は最低限有しているはずだ。30%にも満たない人形2体に負ける道理はない。実際俺の予想通り、処刑人は涼しい顔をして超速で距離を詰めている。いくら数の有利があったとはいえ、AR小隊の奴らはよくアレをボコボコに出来たな。怖すぎる。
処刑人だけ引っ張り出すのも何か悪い気がしたので、狩人にも手伝ってもらうことにした。あいつは処刑人と違って対複数が強いから、それに見合った訓練メニューをとりあえず考えた。片方が盛大に弾薬をばら撒いているので、こっちには戦略的要素の強いゲームをしてもらっている。
内容としては1vs4のハンデ戦だ。キルハウス内で行うというのは変わらないが、発砲はお互いに禁止。それぞれの組が対極の位置からスタートし、狩人は定められたラインまで侵入できれば勝ち。404小隊側はそのラインに到達される前に狩人を止める、あるいは敵陣最奥のフラッグ位置まで行けば勝ちだ。だが、ここに特別なルールを幾つか挟み込んでいる。
狩人に限らず、鉄血のハイエンドモデルというのは単純に強い。そんな奴らに正面からぶつかろうというのは愚の骨頂だ。上手く囲い込むか、凌ぐ必要がある。そこで、狩人と404小隊がエンカウントした場合、404小隊が2人以下なら基本狩人が勝ち、正対した2人はそのゲームが終わるまでその場で寝ててもらう。ただし、404小隊側が2人の場合、お互いが90度以上角度を付けて離れ、片方が狩人を強襲出来る形でエンカウントすれば404小隊の勝ちとなる。また、3人以上であれば正面からかちあっても404小隊が無条件で勝ちというルールだ。
これがまた、外野から見ていると面白い。狩人の勝ち筋は各個撃破か侵入ラインへの強襲。404小隊の勝ち筋は人数差をつけて当たってボコす、連携の線を組んで止める、あるいは全員単独行動でのフラッグ強襲のいずれかとなる。お互いの戦術が上手く噛み合えば片方が圧勝するし、そうでなければ一度頓着し、そこから各々の演算装置が弾き出した結論を下に動くことになる。別に銃を撃たなくても訓練ってのは出来るからな、こういうのを考えている時が何気に楽しいかもしれん。
この訓練、勿論404小隊に連携や戦術といった知識や経験を更に蓄えて欲しいという狙いもあるが、他方、狩人にそのあたりの大切さを分かって欲しいという打算もある。処刑人にもいずれはそういうところも教え込んでやりたいところだが、恐らく戦場を見たり、策を考えたりする能力は狩人の方が向いている。だが、今までは上からの作戦指示に愚直に従うだけだったものだから、自前でそういうのを考える機会が無かったのだろう。それでもあの戦闘能力があれば勝ち続けられてきただろうから、無理も無いことだが。
本当はこっちも銃撃アリでやりたいんだが、狩人や処刑人の使う口径の弾丸って今のところ補充が利かないんだよな。狩人の銃は前回押収したやつをペルシカリアに回しているから、いずれ製造は出来るかもしれんが、現段階では補充の目処が立っていない。一応うちの戦力だから無駄遣いは出来んのである。
処刑人の方もダネルやMG5の攻撃がマトモに当たりさえすれば無事では済まないだろうが、一発で再起不能にまで陥ることは無いだろう。ある程度の修復はうちの支部でも出来るし、表現こそ悪いが処刑人の犠牲であの2体の教練が進むのならメリットの方が大きい。無論、使い潰すつもりはないけどな。
「しかし、指揮官は凄いのだな。このようなことを常に考えているのか」
一体何度目のゲームか、もはや数えるのも億劫になるくらい遭遇戦を続けていた狩人と404小隊だが、今回の勝敗が決したところで狩人が感嘆の声をあげる。相変わらずこいつらに指揮官って呼ばれるの、ちょっと慣れない。慣れていかないとダメなんだが、違和感がすごい。
うーん、別にいつも考えてるってわけじゃないんだけどなあ。そんなバトルジャンキーじゃない。ただ、君たち人形と違って俺たち人間が戦争に勝ち続けるにはそれなりに頭を回していかんとダメなんですよ。俺らは替えが利かないしな。それに、お前らは確かに優秀なスペックを持っているが、優秀であることが即ち勝利には繋がらないところも知っておいて欲しかったしな。
実際、今の狩人と404小隊の連中が真正面から単騎でやりあえばほぼ確実に狩人が勝つ。その程度のスペックは有している。だが、このゲームでの勝敗は大体7対3くらいで404小隊側が優勢だ。勿論、実際に撃ち合ってるわけじゃないから必ずしもそれが現実の勝敗に繋がるとは限らないが、そういう可能性への思考を伸ばしてもらうことに意義がある。スーパーマン一人で全てに勝利できるなら、そもそも戦争など起こっていないのだ。
「ふむ。ここに来てから新鮮な毎日の連続だな、実に面白い」
口元は笑ってこそいないが、いくらか柔らかい表情を見せる狩人。お、いいですねその顔。素敵なボディと相俟って実に打点が高い。ウーン、高得点。
「おおい人、指揮官! こっちも規定回数終わったぞォ!」
目の保養をしていれば、横から今度は処刑人の機嫌のよさそうな声。直接ブレードを振るう機会こそ与えていないが、訓練とはいえ戦場の空気に近く仕上がった内容に本人もご満悦のようだ。その後ろには、痛恨の表情を隠そうともしていないダネルとMG5の2人。前半見てて直ぐに予測はついたけど、やっぱ処刑人の圧勝だったか。まあ、今の錬度で処刑人を封殺出来るとは考えていない。いい目標が出来たということで、訓練結果としては及第点を与えてもいいだろうな。
ていうかあいつまだ人間呼び直ってないのかよ。別にいいけど。本人としても頑張って直そうとしているところは見受けられるので、俺はとやかく言わないことにしている。しかし同じ電脳のはずなのにそんな癖が抜けないみたいなことあるんだろうか。もしかして他とはまた違う角度でポンコツだったりするのだろうか。
まぁいいや。とりあえず今日はこれくらいにしておこう。今のところ根詰めてまでやる程でもないし、こいつらにばかり時間をかけるわけにもいかないからな。周辺への警戒度は下がっているとはいえ、いつまでも無防備にしておくわけにはいかないので、警備のスケジュールも改めて立てておかなきゃいけないし、数は減ったが書類仕事もやっぱり出てくる。訓練だけ出来てりゃ俺も楽なんだけどなあ、現実はそこまで甘くない。
「指揮官は忙しいのだな……いつ休んでいるのだ? 私たちと違い、人間にはまとまった休息が必要なのだろう」
お、なんだ心配してくれてるのか? 安心しろ、俺に休みなど無い。最近は割と落ち着いているが、それでも丸一日オフに出来る程暇ではない。というか、他にやることがないからこそこうやって訓練に精を出すことが出来ているんだ。これはこれで貴重なタイミングだし、無駄に浪費はしたくないからな。
「おいおい、それ大丈夫なのかよ?」
今度は処刑人が会話に加わってくる。狩人と違ってこいつは表情が分かりやすくていいな。動的感情メーンルーチンのおかげか、狩人も出会った当初よりは感情の機微がいくらか読みやすくなっている。元々単純な性格の処刑人は輪にかけて分かりやすくなっているし、俺に対してもそれなりに悪くない印象を持ってくれているらしいので、非常に扱いやすくて助かる。ただ、AR小隊みたいな過保護にはなって欲しくないので、あまり気にかけてくれるのも考え物だが。
まとまった休みが取れないのは事実だが、身体を壊すほどじゃあない。今は目立った作戦もないし、こいつらの教練に付き合うのも半分趣味の一環みたいなものだ。こいつらが成長することで、結果俺の負担も減るわけだから一石二鳥ってやつだな。趣味と実益を兼ねる。結構なことだ。
しかしまあ、たまには贅沢に休んでみるのもいいかもしれないな。例えば風呂なんかも、いつも足早にシャワーを浴びるだけだったが、久々にゆっくり湯船にでも浸かってみるか。気分転換にもなるだろうし、そこでのんびり次のメニューを考えるのも悪くない気がする。水場では義足を外すために、風呂場でのんびりするという感覚自体忘れかけていたから、疲労の自覚症状が無いうちに身体を労わってやるのも大事だ。よし、そうと決まれば今日は風呂に時間を使おう。
「湯浴みか、そういえば人間は全身から老廃物が出るのだったな。その足で大丈夫なのか?」
ポロっとこぼしただけなのだが、予想外に狩人が食い付いてきた。あー、そういえばこいつら人間の生活様式に対しても無知だからなあ、興味を惹かれるのは分からんでもない。足に関しても確かに不便ではあるが、左足の膝下程度だからな、片足で動けないこともないし。そもそも手伝ってもらう訳にもいかんからなこればっかりは。
「……? 何故だ? 不便なら人形に補助してもらえばよかろう?」
ウーン、なるほど。そうくるかあ。いやまぁ確かに、人形という立場でだけ考えればそうなるだろう。その思考回路自体は間違っちゃいない。だが人間様には色々と考えるところがあるのだ。それはもう色々と。
「他のやつらに頼めねえってんなら俺が手伝ってやるぞ?」
いや違うから。他の人形たちに頼めないというのはその通りなんだが、そういう問題じゃないから。どうしようこれ、滅茶苦茶説明しづらい。俺は人間の男性で、こいつらは人形とは言え女性型だ。ここまでの疑問の持ち方から察するに、それで理解しろってのは難しい話なのかもしれない。
「あー、待って待って狩人、処刑人」
俺とのやり取りを小耳に挟みつつ様子を伺っていたUMP45が声を発する。ふー、あぶねえ。俺から懇切丁寧に説明するには非常にデリケートな問題だからな、ここで助け舟を出してくれるのは助かる。しっかりそういうところも説明した方が勿論今後のためにもいいんだろうが、どうにも俺からってのは言いにくい。ここは同じ人形であるUMP45に任せた方が鉄板だろう。こいつはそういう人間の機微にも聡いやつだ。
「指揮官は見ての通りの性格だから、人形相手でも迷惑は掛けられないって一歩引いちゃうタイプなのよ。嫌がってるわけじゃないから、口でどうこう言うより、行動で示してあげれば大丈夫よ。きっと指揮官も喜ぶと思うわ」
お、お前ーッ!!!!!
UMP45「ニッコリ」
(お風呂回は)ないです。
よく考えてみたら本作品はそもそもシリアスでもギャグでもなく、基本ほのぼの思いついたところからぶん投げるフィーリングスタイルなので、細かいところは気にしないようにしました。
S02地区や鉄血鹵獲など、それなりにストーリー立ったものは今後思い浮かんだらやっていきます。ネタを頂けたら参考にするかもしれません。
ちなみに、おじさんはDTではないです。タラシという程じゃありませんが、まあそれなりの経験は持っています。キレ芸から察するに、若い頃はもっとヤンチャだったと思いますしね。