― 1 ―
深夜、作務衣を着た青年が山頂に佇んでいる。彼は夜空を見上げていた。普通なら防寒しなければならないはずの気温なのに、厚着もせず、山登り用の装備すら一切していなかった。
「そろそろか…」
彼が告げた一言で満点の星空が一変し、雷雲が発生した。そして、鼓膜が破れんばかりの音を轟かせながら、雷雲から赤い雷が放たれた。
その様子を見続ける彼の瞳はまっすぐで、己が道をただひたすらに突き進むという意志がはっきりとこめられていた。
「………」
彼が落雷の終了を確認する頃には、空が明るくなっていた。
「今日はこれで終わりか。こう毎日雷を見るのは良い気分ではないな…」
彼の瞳に映ったものはなんなのか。それは彼自身しかわからない。
― 2 ―
仮面ライダーアマゾンこと山本大介から連絡を受けた城茂は愛車カブトローを走らせ、国道を進んでいた。
現在、茂は都内近郊で立花藤兵衛が営んでいた立花レーシングの代理店長として働く傍ら、怪事件の報があれば店を抜け出して解決するという日々を過ごしていた。
「しっかし、俺の所には先輩達が言ってたような【影】とやらの情報は入ってこないからなぁ…。怪しそうな事っていえば、店に来た馴染みの客から聞いた赤い雷が東北のあちこちで頻繁に発生してるって話ぐらいか…」
世界各地で戦う本郷や一文字などの先輩
ライダーとも連絡を取っていたが、自分の身の回りにはあまり被害などは出ていなかった。
「どこぞの刑事じゃないがこういう時は、勘に頼るのも方法の一つってな。ま、とりあえずここいらだと一番近いのは山間部の町だな。ひとまず行ってみるか」
まだ確信とは言えなかったが、茂はカブトローのギアを上げ町へ向かうのだった。
カブトローから降り、町で聞き込みをするとこんな事がわかった。
赤い雷はここのところ毎日発生しており、空から落ちてきた雷がなぜか町内の山や森、畑に落ちることもあった。そして、隕石でもないのにその場所へ行くとクレーターがあり何かが落ちていた穴が見つかるという話だった。
「なんだかきなくさい臭いがぷんぷんするな。明らかに雷に紛れて落ちてきた何かを誰かが回収してるって証拠じゃねぇのか?」
考え事をしながら歩いていた茂の反対側の方向から別の青年がやってくる。彼は茂に目もくれず、そのまま突き進んでいく。
茂はすんでのところで青年を避けるように回避した。
「危ねぇな! ぶつかるところだったじゃねぇか!!」
茂は青年に怒号をあげるも、当の青年は不思議がるそぶりも見せず一瞥をするだけだった。
「おい、人の話聞いてるのかよ!」
思わず青年の肩を掴もうと手を出した茂だったが、その攻撃を把握していたかのように青年はうまく回避したのだった。
「!?」
その行動に驚く茂だったが、青年はそんな茂を見て右手の人差し指を天高く掲げてから、一言告げるのだった。
「俺は俺の道を往く。それが天の道を往き、全てを司る男、天道総司だ」
「はぁ? 天の道ぃ? なにワケのわからんことを…。なめられたままじゃ、男がすたるってもんだ。キツイお灸でもそえなきゃダメそうだな、オイ!」
おちょくられていると判断した茂の心に火がついた。
「オラっ!」
鉄拳制裁とばかり拳を振り上げ、殴りかかる茂だったが天道は目を閉じた状態でひらり、ひらりとかわして結局一発も当てられない。
「クソッ! どういう技使いやがる!!」
悔しそうな茂に天道は哀れみの目を向けていた。
「……無駄だ。俺を止める事は出来ない。それに俺は今、忙しい。今晩も赤い雷鳴を見ないといけないのでな」
「!? オマエ、それ………」
殴りかかっていた茂の動きが止まると、間髪入れずに天道が動き出した。
「……ハッ!」
その動きは流麗で、まるで舞踏の演目のようにも見えた。
「グアッ!!」
呆然と立っていた茂を柔術のような技であっさりと投げ飛ばし、天道は歩き出す。
「……ま、待て!」
「待て、と言われて待つ男がどこにいる? 俺を捕まえたければ出直す事だな」
そう告げると天道は去っていった。