深夜になり頭をさすりながら、茂は町近くの山中で先ほど出会った青年を思い出していた。
「アイツ、『今晩も赤い雷鳴を見る』とか言ってやがったな…」
改造人間である自分を投げ飛ばすとは相当の武術家なのか或いは、別の何者なのか…。それとも、先輩達の言う財団Xが仕向けた怪人なのだろうか。
そんな事を思いながら、茂はなぜか昔、自分を苦しめたとある怪人の事を思い出していた。
「そう、ジェネラルシャドウは俺自身の手で倒している。だが、もし仮に蘇ったのだとしたら…」
検討もつかぬまま、時間だけが過ぎていく。その時、山中に聞こえていた鳥の声が聞こえなくなっている事に気づいた。
「時間は草木も眠る丑三つ時ってとこだな。さーて、鬼が出るか蛇が出るか!」
周囲を警戒していた茂の目が遠い空からやってくる雷雲を確認した。
「アレが例の雷雲か。中に怪人がいるわけではなさそうだが…」
雷雲の中でひときわ目立つ大きな雲が離れていく。
直感的に何かを感じ取った茂は、カブトローにまたがり雷雲を追いかけた。
雷雲が発生させていた赤い雷の落ちた先に向かうと人影が見えた。
だが、そこにいたのは人の姿ではなくシルバーのプロテクターをまとっているようにも見えた。
『………』
カブトローのエンジン音に反応したプロテクター男だったが茂には目もくれず、自分の用事を済ますべく行動を開始する。
「おい、そこのゴツイの。悪いがそれは渡せねぇな。それにテメェは何者なんだ?
まさか奇っ械人でもねぇだろうし、幽霊とかはやめてくれよ?」
茂の直感はプロテクター男の正体が、昼間遭遇した天道だと想像していた。
『………』
「あぁそうかい。無視を決め込むんならこっちからご挨拶してやるぜ!」
カブトローから飛び降りた茂は、両手の手袋を放り投げ、銀色のコイルが巻き付けられた手を見せつける。
「変んんん身ッ、ストロンガァァァァ!!」
両腕のコイルを擦り合わせていく茂の身体が変化していく。
『トォッ!!』
ストロンガーへと変身した茂はプロテクター男の前にジャンプし、立ちはだかった。
『仮面ライダーストロンガー見参!』
ストロンガーを認識したプロテクター男の歩みが止まる。
『………おまえがストロンガーだったのか』
プロテクター男の反応は淡々としていた。そも、茂がストロンガーだという事を把握してると言わんばかりの雰囲気で…。
『俺を知っている? それに、貴様のその声は…』
プロテクター男の声に反応したストロンガーだったが、プロテクター男は腰のベルトに手を伸ばす。ベルトに備え付けられていたカブトムシの触角を操作し、一言告げた。
『キャストオフ』
『一体、何を…』
ストロンガーが声をかける間もなく、プロテクター男の外装が展開し始めた。
続いてプロテクター男のベルトから電子的な音声が聞こえてくる。
【CAST OFF】
音声と同時に男を覆っていたプロテクターが文字通りはじけ飛んだ。
『ぐあっ!!』
ストロンガーは飛んできたプロテクターを避けられずに食らってしまった。
男の姿が精練されたスタイリッシュな姿へ変わっていく。変化が完了すると、再び電子音が木霊した。
【CHANGE BEETLE】
『その姿は…!!!』
先ほどとは違い、スラリとした赤い上半身に雄々しくそびえる顔の触覚はまさしくカブトムシだった。
『さて、ストロンガーとやら、おまえの力を見せてもらうぞ…』
男の姿は仮面ライダーカブトへと変身を遂げた。