ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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サンタクロースに変わってディア推参!

ということでまたしても新作投稿です。この小説を書いたきっかけは単純にウマ娘の二次小説を愛する読者の皆さんにクリスマスプレゼントとしてお贈りしたかったからです。作者のクリスマスプレゼント? そんなものはこの小説を思い浮かんだ天啓だよ。

尚、クリスマスプレゼントついでにウイポ7の裏技というか小ネタ。トキノミノルやオーモンドと名付けることは出来るのにカスケードと名付けることは出来ない。


ジュニア級編
第1R 追放からの覚醒


 ウマ娘。異世界の競走馬達の名前と魂を受け継いで生まれてきた少女達のことで彼女達は超人的な走力を持ち、その力を発揮すべくトレセン学園に在籍し、国民的スポーツ・エンターテイメント「トゥインクル・シリーズ」への参加に向けて特訓に励んでいる。

 

 

 

 神秘性すらも感じさせる青髪のウマ娘もその例に洩れず特訓に励んでいたが突如倒れ、病院で入院することになった。

 

「お前はもうチームから追放だ。デビュー前に倒れるような軟弱な奴はこのチームに向かん」

 

 病院のベッドで横たわる青髪のウマ娘にトレーナーは冷酷にそう告げた。

 ウマ娘はチームに所属し、そこのトレーナーに指導及びレース登録する。つまりチームやトレーナーあってこそのウマ娘であり、それらから見放されれば死刑宣告を告げれたも当然だった。

 

「……わかりました」

 

 顔をうつむかせながら答える青髪のウマ娘の名前はアイグリーンスキー。彼女は過剰なトレーニング、寝不足による貧血、その他諸々の理由で倒れてしまった。アイグリーンスキーも体調管理はなってなかったと自覚しているし、チームにも負担をかけてしまったとも自覚している。

 

 しかし体調管理云々以前にハードトレーニング過ぎた。彼の所属するチームは一流のウマ娘も集まり多数のGⅠレースも獲得しているのだが、ほとんどが故障による引退。中には命すらも落としたケースもある。アイグリーンスキーをはじめとしたウマ娘達はそれでも強くなれるのであれば彼のチームに所属し、彼を信頼してトレーニングを積んで強くなろうとした。その代償がチーム追放であり、アイグリーンスキーはその理不尽さに拳を握りしめる他なかった。

 

「じゃあ一応伝えておいたからな。これ以上お前に付き合う義理はない」

「……ありがとうございました」

 

 感謝の言葉を口にしながらも声が震えており、怒りを隠しきれず彼の背中を憎悪を込め、睨みつける。今の彼女に出来ることはこれ以外になかった。

 

 

 

「……何がいけなかったんだろう。何とかしないと」

 あのトレーナーの指導か、あるいは勉強のしすぎによる寝不足か、それ以外によるものか。アイグリーンスキーは天井を見つめながらそれを考えるといつの間にか目を閉ざしていた。

 

『そう焦るなよ』

 

 声が響き、アイグリーンスキーが目を見開き辺りを見渡すが誰もいない。いるのは自分一人だけだった。

 

「気のせい……?」

『気のせいじゃねえ。お前に話しかけているんだよアイグリーンスキー!』

 どこからともなく声が響く。しかしやはりと言うべきか辺りを見渡しても誰もいない。そこへ再び声がかかった。

『俺はお前自身だから辺りを見渡したところで俺はいねえよ』

「私自身?」

『おうよ。俺はお前の前世の魂だ』

 その声の主はアイグリーンスキー自身を騙る者であった。

 

「ぜ、前世?」

 そんなことがあるのだろうかとアイグリーンスキー(ウマ娘)が思考した。

『そもそもウマ娘ってのは異世界にいる競走馬が生まれ変わった姿なんだ。そして競走馬だった俺が転生したのがお前だ』

「はぁ」

 生返事でアイグリーンスキー(ウマ娘)がそう答える。もしこの話しを彼女だけではなく別のウマ娘達に話しても理解出来るかどうか怪しいものであり、まだ年若いアイグリーンスキー(ウマ娘)も理解していなかった。

『何が何だかわからねえって感じだな? 歴史の授業で習っただろ。ウマ娘の遠い先祖は四足歩行の動物だって。人間と触れ合ううちに二足歩行に進化したのがウマ娘になった訳だ』

 

「うん……」

『ところがだ、二足歩行に進化しなかった世界がある。それが俺達の世界だ。四足歩行のまま長距離を走ることに特化したのが馬、つまり俺達の遠いご先祖様。そこから更により速く走ることに特化したのが俺達競走馬だ。その競走馬の生まれ変わりがウマ娘なんだよ。実際俺が知る競走馬もウマ娘になっているしな』

「ほへー。本当にそんな世界があるんだ」

 感心した声でアイグリーンスキー(ウマ娘)が頷く。

 

『話しを戻すぞ。お前が焦る必要がないのは俺だってクラシック級に相当する年齢でデビューしたんだから、現時点で学年末とはいえジュニア予備組のお前が焦る理由はない』

「でも!」

『宝塚記念、凱旋門賞、JC(ジャパンカップ)、有馬記念、これらのレースをデビューした年で制したんだ。同期の三冠──つまり皐月賞、東京優駿、菊花賞を制した奴を差し置いて年度代表馬、この世界だと年度代表ウマ娘に相当する賞を貰ったんだ。そんな俺の言うことを聞けないのか?』

 

 ここでアイグリーンスキー(ウマ娘)は考える。このアイグリーンスキー(競走馬)の言うことが本当であれば、現役ウマ娘最強のシンボリルドルフを凌ぐことになる。

 シンボリルドルフは歴史上初めて無敗で三冠を制した日本史上最強とまで言われるウマ娘である。しかしその彼女ですら凱旋門賞どころかクラシック級でのJCを制覇することが出来なかった。そんな彼女がデビューしたのはジュニアの後期に差し掛かったあたりであり、それを少し遅らせるだけでそんなビッグタイトルを獲得出来るのであれば、名誉欲の強いアイグリーンスキー(ウマ娘)なら首を縦に動かす。ましてやその年の三冠ウマ娘を差し置いて年度代表ウマ娘になるのであれば尚更だ。

 

「………………聞く」

 アイグリーンスキー(ウマ娘)がその誘惑に負け、縦に頷くと機嫌を良くしたアイグリーンスキー(競走馬)が声を響かせた。

『それで良い。そもそも俺がこうやって話せるだけでも有難いと思えよ? レース展開やペース、トレーニングを教えられるんだからな。特にトレーニング指導はトレーナーのいない今のお前にとって一番必要なものだろ?』

「それは確かに……」

『流石にウマ娘特有の走り方の指導は無理だが、大体のことは教えられる。何せ俺は生涯負けたのは3戦だけだしな』

「無敗じゃないんだ……」

 

『まあそういうことだ。一緒に歩もうぜ、アイグリーンスキー』

「でも貴方のことはなんと呼べばいいのかわからないのだけど」

『む。それもそうか……長男には雷親父、末っ子にはクソ爺だの散々な言われようだったからな……』

「私ってそんな競走馬の生まれ変わりなの!?」

 

 アイグリーンスキー(ウマ娘)が「ウソでしょ……地震雷火事親父のうち二つ付くなんてあり得ないし……何が一体どうしたらそんなアダ名になるの?」などとぶつぶつ言いながら影を落とし落ち込む。もちろんそれをアイグリーンスキー(競走馬)はスルーした。

 

『よし決めた。先代でどうだ。前世だと語呂悪いし、先代なら呼びやすいだろ? 二代目』

「それじゃ宜しく先代アイグリーンスキー」

 こうしてウマ娘アイグリーンスキーは競走馬アイグリーンスキーの力を借り、デビュー戦までの調整をすることになった。

 

 

 

「まあ、もっとも私が倒れたのは過労によるものだから、一週間も経たずに退院出来るんだけどね」

『それはごもっともだ』




クリスマスプレゼントということでこの小説を書きましたがお楽しみ頂けたでしょうか? お楽しみ頂けたならお気に入り登録や高評価、感想の方を宜しくお願いいたします。
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後書きというか蛇足。

私は浮気症で他の小説を書いたりしますが新規投稿する前に4話くらい書いてから予約投稿することにしてします。そうでもしないとモチベーション維持出来ませんから……
この小説も然りで次回は28日に予約しています。次回もお楽しみにして下さい。

尚、これよりウマ娘の方は二代目、魂の方は先代と表記していきます。

ちなみにこの小説は青き稲妻の物語という私がハーメルンとなろうの方で投稿させて頂いている小説とウマ娘のクロスオーバーものであり、この小説の主人公はその小説の主人公の父親です。
このアイグリーンスキーの血統が知りたい方は青き稲妻の物語で知ることが出来ますが、次回の前書きに父と母、母父の三頭の馬を記載しますので次回もぜひ見てください。

青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?

  • ぜひとも登場して欲しい
  • 出さなくて良い。つーかイラネ

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