ウマ娘プリティーダービー~青き伝説の物語~   作:ディア

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前回の粗筋
二代目、トレセン学園に帰還する。


第10R サクラスターオーというウマ娘

 授業が終わり、ヤマトダマシイのクラス、クラシック級のクラスに向かった二代目が話しかけている相手、それはヤマトダマシイではなくビワハヤヒデだった。

 

「ではヤマトダマシイ先輩はここ一週間授業に出席していないんですか?」

 

「ああ。一応チームギエナのトレーナーにも言ってはいるのだが合宿トレーニングの最中の一点張りでまるで応えようともしない」

 

 ビワハヤヒデが頭を抱え、ため息を吐く。

 

「合宿トレーニング……」

 

「元々チームギエナだった君ならばその場所を知っているのではないのか?」

 

「いえ。でもそれを知っている先輩なら心当たりがあります」

 

「そうか。だが気を付けろ。あのトレーナーは何をしでかすかわからない。もし必要であればこれを持っていけ、君ならこの道具を使いこなせる筈だ」

 

 ビワハヤヒデがICレコーダーを二代目に託した。

 

「では検討を祈っている」

 

 ビワハヤヒデがそう言って話すことはもうないと言わんばかりにドアを閉め、二代目は病院へと向かっていた。

 

 

 

 

 

『サクラスターオーのところにいくのか?』

 

 二代目のアテは只一つ、サクラスターオーだった。サクラスターオーはチームギエナのメンバーの一員でありながら合宿に参加していない唯一無二のメンバー。ヤマトダマシイ達よりも現在会いやすい環境にある。

 

「ええ。サクラスターオー先輩なら何か知っているんじゃないかと思って」

 

『確かに悪くない考えだ。今サクラスターオーは病院で入院している最中だ。病院にさえ迷惑をかけなければ会える』

 

「……そう言えば先代の世界のサクラスターオー先輩ってどんな競走馬だったんですか?」

 

『サクラスターオーの競走成績に関してはお前が知る通り、皐月賞、菊花賞のGⅠ2勝に加え、弥生賞を勝った名馬であると同時に、壮絶な過去の持ち主だ。生まれてすぐ母親を亡くした為、曾祖母*1であり名牝スターロッチの元で育てられた過去がある』

 

「あ……」

 

『厩舎でも全く期待されていなかった訳じゃないがエースでもなかったからか、新人の調教師つまりトレーナーに預けられることになった。しかしエースだった馬は故障しサクラスターオーは二冠達成し立場が逆転。そして有馬記念では主催者に出走依頼されて出走したが……』

 

「そのまま故障して競走中止になったんだね」

 

『ああ。しかしこちらの世界のサクラスターオーは俺の世界とは異なり、死を覚悟するような故障じゃない』

 

「えっ!?」

 

『テンポイントも同じで、とっくに死んでいるはずなんだ。だがこっちのテンポイントは生きていてウマ娘専門の医者として名を上げている』

 

「うん……」

 

 

 

『俺はチームギエナのトレーナーを高く評価している。確かに奴が指導したウマ娘の故障率が高いがそれは仕方ないことだ。シャダイソフィアを初め、俺の世界でも予後不良で死んだ馬、マティリアルのように故障で悩んでいた馬ばかりだからだ。最初にあのトレーナーが管理したウマ娘ハマノパレード*2なんかは悲惨な最期を迎えることになったが、あれでも俺の世界の奴に比べればマシな方だ』

 

 ウマ娘の世界、競走馬の世界共にハマノパレードの死は悲惨なものであることに違いなく忌々しさすら感じさせ、先代が声を荒くする。

 

 

 

「あれよりも悲惨な最期って……」

 

『それをお前が知る必要はない。聞くだけ胸糞悪いだけだ』

 

 先代が更に不機嫌にそう声を出し、二代目はそれを話題にすることを止めた。

 

 

 

「もしかしてあのトレーナーがトレーナーでいられるのって、そういう悲惨な出来事を少しでも抑えているから?」

 

『本人は無自覚なようだがな。キシュウローレル、テンポイント、キングスポイント、サザンフィーバー、そしてサクラスターオー……本来死ぬはずだったウマ娘が皆、あいつに管理されたおかげで生きている。皮肉なことにな』

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ヤマトダマシイ先輩も死ぬことはないんじゃないの?」

 

『あいつはまだマシというだけあって予後不良を防げない訳ではない上に、それとこれとは別だ。俺の世界のヤマトダマシイは他の馬とは違って厳しすぎる調教が原因でレース中に故障し、予後不良となった。今回ばかりはあいつに責任がある』

 

「だから先代はトレセン学園に戻れって言ったんだね」

 

『ああ。あのトレーナーとの相性は最悪だ。放置すればヤマトダマシイは絶対に死ぬ』

 

「絶対にそうはさせない……!」

 

 固く決意した二代目を止める者は、誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから病院に着き、サクラスターオーの部屋に入る二代目。

 

「サクラスターオー先輩、お久しぶりです」

 

「アイグリーンスキー」

 

「体調の方はどうなんですか?」

 

「怪我を除けば何一つ異常はないわ」

 

「そうですか」

 

 

 

 そして無言になる二人。二代目もサクラスターオーもこれが初見という訳ではないのだが、同じチームギエナに所属していたとはいえクラスが異なった為に接点がほぼ無く何を話題にすべきかわからなかった為である。

 

 

 

「サクラスターオー先輩。お伺いしてもいいですか?」

 

「何?」

 

「サクラスターオー先輩は去年合宿トレーニングに行きましたよね。今年は怪我で辞退されているようですけど、どこで行われるか知っていますか?」

 

「千葉県の船橋レース場。そこでトレーナーはウマ娘達をしごいているわ」

 

「船橋レース場……地方のウマ娘が使うレース場じゃないですか?」

 

「アイグリーンスキー、地方のウマ娘を見下しているけど、地方のウマ娘達は侮れないわ。つい最近頭角を表したオグリキャップとイナリワンも地方出身よ」

 

「いえ見下すというより、船橋レース場の使い道がわからないだけですよ。芝のある中山レース場ならともかくダートオンリーのあそこで何のトレーニングを……?」

 

「私の時はリレー方式で地方の若いウマ娘達二人相手にしたわ」

 

「リレー方式?」

 

「そう。例えば私が2000m走るのに対して地方のウマ娘達は1200mと800m、マティリアルが2400m走るのなら地方のウマ娘は1200mと1200m走って競走するの。そうすることで地方のウマ娘達は私達トレセンの実力を知ることが出来るし、私達は効率の良いトレーニングを行えるの」

 

 

 

「肝心の中山レース場でやらない理由はなんなんでしょうか?」

 

「中山レース場を借りられないのはこの時期でレースを行うレース場は中山と阪神で行われるからよ。そんな時期に中山レース場を借りて一日で荒らした芝を戻せるかって言われたら無理……それにダートオンリーの船橋レース場はその点まだマシで一日で元に戻せるだけじゃなく、地方のウマ娘達をアピールすることが出来るからその地方のトレーナーも指標にしやすいって評判だから向こうからオファーがあるくらいでやり易いのよ」

 

「なるほど……考えているんですね、あのトレーナーも」

 

 先代、サクラスターオー共にチームギエナのトレーナーが有能であることを聞かされると頭の中で色々な思惑が廻る。

 

 

 

 

 

 

 

「サクラスターオー先輩、もう一ついいですか?」

 

「何?」

 

「サクラスターオー先輩、有馬記念に出走したのは何故ですか?」

 

「有馬記念に出走したのはトレーナーの強い勧めがあったのと、体調が万全だったからよ」

 

「強い勧め?」

 

「私が名門サクラ家の出身だってのは知っているよね。サクラ家はダービーウマ娘や二冠ウマ娘、天皇賞ウマ娘を輩出しているけど誰一人も有馬記念を制したことがないの。そのことを知っていたトレーナーさんは私の体調が万全なこともあって強く勧めてきたわ」

 

「それはつまりサクラ家で初となる有馬記念ウマ娘になれるチャンスだって言われたんですか?」

 

「ニュアンス的にそんな感じ。私を育ててくれた曾祖母様が有馬記念が終わるまで生きていたなら止めていたかもしれないわ……有馬記念直前に曾祖母様*3が亡くなってから弔いを兼ねて出走した結果がこの様よ」

 

「そうだったんですか……」

 

 そしてサクラスターオーと二代目が話し込んでいると白衣を着た栗毛のウマ娘が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「スターオー、体調の方はどうかしら?」

 

 そのウマ娘は栗毛に流星がかかったウマ娘であり、見る人が見ればその魅力に魅了されており、医者と呼ぶにはあまりにも美し過ぎた。

 

「テンポイント先生!」

 

「えっ、このウマ娘がテンポイント先輩なんですか?」

 

 サクラスターオーがそのウマ娘、テンポイントの名前を呼ぶと二代目が驚愕の声を上げ、顔を見つめる。

 

「そちらのウマ娘は?」

 

「初めまして、チームギエナに所属していたアイグリーンスキーです。テンポイント先輩の後輩にあたります」

 

「よろしく、テンポイントよ」

 

 差し出したテンポイントの手を握り、二代目が口を開いた。

 

 

 

「流石、グリーングラス先輩のライバルなだけあって雰囲気が違いますね」

 

「グリーングラスに会ったの?」

 

「はい、青森県で地方アイドルをしていましたよ。私もそのお手伝いをさせて頂きました」

 

「青森県の地方アイドル……なるほど里帰りしたのね。通りで地方のトレーニングセンターにいない訳ね」

 

「ところでテンポイント先輩、もしかしてサクラスターオー先輩の担当医なんですか?」

 

「まあよくわかったわね」

 

「それはそこに書いてありますし」

 

 二代目がサクラスターオーの名前が刻まれたプレートの下に書かれてある担当医のプレートを指差すとそこにはテンポイントの名前が刻まれていた。

 

「それね。結構見ているのねアイグリーンスキー」

 

「どうも。ところでサクラスターオー先輩の容態はどうなんですか?」

 

「そのことだけどね、少しこっちに来てもらえる?」

 

 サクラスターオーの部屋からテンポイントと二代目が出て別の部屋に入ると診断書を渡された。

 

 

 

 

 

 

 

「テンポイント先輩、これは?」

 

「見ての通りサクラスターオーの診断書よ」

 

「それはわかりますが、この筋膜断裂というのはなんですか?」

 

「アイグリーンスキー、肉離れはしたことがある?」

 

「いいえありません。もしかしてその肉離れが何か関係しているんですか?」

 

「そう。一般的な肉離れは筋膜断裂に属している……要するにスターオーは常に酷い肉離れをしていて回復出来ていないのよ」

 

「回復出来ていない?」

 

「この病状が起きたと思われるのは12月半ば──つまり有馬記念直前でそれ以降無茶なトレーニングをしたせいか悪化して治っていない。このままだと最悪、筋膜断裂から筋断裂に悪化して競走生命を断つ大怪我につながりかねない……そんな状況よ」

 

 

 

 先ほど二代目は、サクラスターオーが有馬記念直前に曾祖母を亡くした影響を受けたことを聞いており、間違いなくサクラスターオーは動揺するあまりトレーニングを過剰にしてしまったと推測し困惑する。しかしそれも僅かなものですぐに口を開いた。

 

 

 

「サクラスターオー先輩がそんな大変なことに……テンポイント先生、一つお願いがあります」

 

「何かしら?」

 

 二代目がテンポイントに耳打ちするとテンポイントが納得の言った顔つきになり、二代目にある約束をした。

 

 

 

「ありがとうございますテンポイント先生」

 

「いいわよ。これくらいなら何でもないわ」

 

「テンポイント先生、サクラスターオー先輩のことをよろしくお願いいたします」

 

 二代目が頭を下げ、その場から去るとテンポイントは一人呟く。

 

「……アイグリーンスキー。あの娘は間違いなく、私達TTGを越える大物になるわね。グリーングラスが気に入る訳ね」

 

 

 

 テンポイントが見つめる二代目の背中は現役時代の自分達よりも遥かに雄大なものであり、グリーングラスが師事されるのを認めたのも頷けた。

*1
父父あるいは母父を祖父と呼ぶ場合があり二頭を指すことがあるが祖母、曾祖母となる場合は母母、母母母と母系のみの一頭限り

*2
宝塚記念馬。史実では高松宮杯で予後不良となったが薬物投与による安楽死の処置を執られることが原則となっているが、ハマノパレードにそうした対応は行われず、屠殺されてしまっただけでなく、その肉はさくら肉として販売され物議を醸した。この事件がきっかけで予後不良となった馬は薬物を投与し安楽死の処置を執ることが原則となった。

*3
史実のスターロッチは有馬記念直前ではなくサクラスターオーの調教生活がはじまった時に亡くなった




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尚、次回更新は西暦2019年4/8です。

青き稲妻に出てくる競走馬が主人公以外で登場して欲しい?

  • ぜひとも登場して欲しい
  • 出さなくて良い。つーかイラネ
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